ロイタ

自信を見せる李克強首相 (ロイター)


◆【この記事は4月10日にメルマガで配信された以下の記事を、分割して掲載するものです】
http://www.mag2.com/m/0001627731.html


    中国経済は危機突破の方向へ進んでいる
      ─ 改革の断面図と最終解決策 ─

【目次】
【1】 輸出偏重からのリバランス
【2】 3つのマクロ経済目標
【3】 中央銀行の4つの政策目標
【4】 製造業からサービス業への雇用シフト
【5】 中国経済の改革の見方
【6】 最終解決策と米国債


現在の中国経済については、4月初めのロイターで「中国経済の崩壊はいよいよ今年か」などといった海外アナリストによる記事が載っていたように、中国の抱える金融爆弾が経済成長の減速の進行によって破裂し、金融危機が起こるという懸念が、一般的にマスコミで高まっているようです。

抱えている金融爆弾が爆発する前に構造改革を推し進め、安定成長によって国家経済の危機を回避したいという大筋の点においては、隣国の中国と日本は同じです。ただし、日本の安倍政権が日銀による金融政策に依存し過ぎていて、構造改革がなかなか進んでいないのに対して、中国は総じて「荒療治」で構造改革が進んでいるようです。

この号では、総じて日本のネットやマスコミで崩壊、崩壊といわれている中国経済のなかで、中国の政府・指導部が、構造改革をどのようなコンセプトで進めているのかを主にまとめてみました。尖閣問題など、軍事的に最悪のシナリオは、構造改革が進まない日本経済とその国債市場が悪化に陥り、中国経済が構造改革を実現し、安定成長するシナリオです。最悪のシナリオも想定するという意味も含めて、中国経済に対する強気派の立場からまとめてあります。


    【1】 輸出偏重からのリバランス

「中国税関当局が10日発表した3月の貿易統計は、輸出が前年同月比6.6%減、輸入は同11.3%減となった。(中略)3月の貿易収支は77億ドルの黒字。予想は9億ドルの黒字だった。」(4月10日 ロイター)

中国の輸出は今年の2月に大幅に落ち込みました。原因はいくつか指摘されていますが、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は229億9千万ドルの赤字でした。

中国の対外貿易統計:概要(表)(ブルームバーグ)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N3SMB36NKMZZ01.html

中国の構造改革(またはリバランス)とは、輸出偏重と投資主導の成長モデルから国内個人消費に主導された経済成長モデルへの転換です。それなので中国経済の先行きについての強気派からすれば、中国の輸出の伸びの減少は構造改革の途中過程で当然起こってくる現象になります。
中国経済の専門家のスティーブン・S・ローチ氏によれば、この輸出・投資主導から消費主導への経済成長モデルの転換は、中国政府が長年待ち望んでいたものであると言います。


    【2】 3つのマクロ経済目標

3月13日、李克強首相は全国人民代表大会の閉幕で記者会見し、「経済成長よりも雇用創出に重点を置くと強調」しています。また、「楼継偉財政相も先週、成長率が7.5%をやや上回るか、下回るかは雇用創出ほど重要ではないとの見解を示している」そうです(下記記事参照)。

中国全人代閉幕、李首相が成長目標下振れ容認姿勢(2014/03/13 ロイター)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYEA2C03S20140313?sp=true

中国経済の専門家であるスティーブン・S・ローチ氏によれば、今の中国経済を考える際に、欧米の大部分の観測筋は(日本も含め)、経済成長率という数字にこだわり過ぎていると言います。ローチ氏は元モルガン・スタンレー・アジア会長で、現在、米エール大学ジャクソン国際情勢研究所の上級フェローです。

《【注】 米国の米中経済安保調査委員会の2013年6月の報告書によれば、投資銀行モルガン・スタンレーと中国の政系ファンドである中国投資有限責任公司(China Investment Corporation)とは資金面で深いつながりを持っていました。中国の保有する米国債のすべてはこの中国投資(CIC)が売買し、保有しています(※ 2010年末時点)。》
China Investment Corporation: Recent Developments in Performance, Strategy, and Governance
(米中経済安保調査委員会 2013/06/13 PDFファイル)
http://www.uscc.gov/Research/china-investment-corporation-recent-developments-performance-strategy-and-governance

3月下旬に開催された年次の第15回中国発展フォーラムでは、ローチ氏と楼継偉財務相の間で質疑が交わされました。この楼継偉は、米国債を牛耳る中国投資(CIC)の前会長兼CEOでした。その中で楼財政相は次のように述べたそうです。

中国は成長目標で、かつての1つの目標だけ(GDP)を重要視することから事実上脱皮している。中国政府は今、3つのマクロ経済目標を重要視しており、それは雇用創出、物価の安定、そしてGDP成長である。李克強首相が最近、中国国家人民会議へ提出した年次作業報告書でも3つの重点目標はその順番に記載されており、GDP成長は最後(尾)に記載されている。(下記記事より)

The End of Chinese Central Planning (2014/03/27 スティーブン・S・ローチ)
http://www.project-syndicate.org/commentary/stephen-s--roach-reports-that-the-country-s-top-economic-officials-have-all-but-abandoned-traditional-growth-targets

ローチ氏は上記の記事で、この楼財務相や李克強首相の、経済成長率よりも雇用創出を最重要とする考え方にこう付け加えています。

「中国の当局者は実際には(欧米の観測筋よりも)はるかに頭が柔軟で、GDP成長それ自体よりも生産活動での利益といった労働の中身の方を、より重要な関心事と考えている。」

2013年6月下旬の短期市場での金利混乱の時には米国の投資サイトに、中国の経済成長率が何%になったら社会騒乱や暴動が今以上へ増加するのかといった記事がありました。経済成長率よりもより直接的に社会的騒乱・暴動を引き起こす重要な要因となるのは失業・賃金と高インフレです。李首相が中国国家人民会議へ提出した年次作業報告書で、3つの重点目標が雇用創出、物価の安定、GDP成長の順番で記載されているのは、中国指導部による大衆・社会秩序支配のウエイトの優先度を表したものでしょう。

焦点:中国経済の構造改革、成敗の鍵は失業増大の阻止(2013/07/19 ロイタ─)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE96I02Q20130719?sp=true

中国の経済改革を見てきますと、サービス産業の規模を拡大し、<サービス産業での雇用創出>を大きな目標として、そのサービス産業へ製造業・建設業からの余剰労働者を吸収させ、雇用・失業問題に対処するといった政策が進んでいることが見てとれます。このことも含めてローチ氏は、2013年の6月位以降、プロジェクト・シンディケートのサイトで、中国の<構造改革が>いかに進みつつあるかを解説し、大筋で中国専門家のローチ氏のいう通りに進んできていると思います。

Misreading Chinese Rebalancing (2013/07/29 プロジェクト・シンディケイト)
http://www.project-syndicate.org/commentary/the-mismeasure-of-china-s-rebalancing-by-stephen-s--roach

中国の3月サービス部門PMIは景況改善示す、景気鈍化懸念は残る(2014/04/03 ロイター)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYEA3207I20140403?sp=true


◆【第3節へ続きます】:次ページへ
【2】 中国経済は危機突破の方向へ進んでいるー人民銀行の金融政策ほかー


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