(阿修羅「戦争」BBS.8月24日の投稿へ加筆したもの)

 http://www.asyura2.com/08/wara3/msg/734.html





「グルジア紛争 石油輸送マヒ続く アゼルバイジャンに圧力」(8月22日 日経)

 http://www.nikkei.co.jp/kaigai/eu/20080822D2M2203C22.html



「ロシアは紛争を利用し、親欧米志向を強めてエネルギー輸出をグルジア経由に切り替えてきたアゼルバイジャンを勢力圏に取り戻す狙いだ。」



日経のこの指摘はもっともだ。



◆CIS関係諸国の話は地図を睨まないと理解しづらいので、下記地図のアドレスをクリックして開いてみてほしい。

 http://www.lib.utexas.edu/maps/commonwealth/caspian_pipelines_2002.pdf



「アゼルバイジャンはカスピ海周辺の石油・天然ガスパイプライン争奪戦でカギを握っている。アゼルバイジャンの石油に関しては、バクーからチェチェン、ロシア経由で黒海のノボロシスク港に出す北ルート、グルジア経由で黒海のスプサ港に出す西ルート、グルジアのトビリシ経由でトルコの地中海ジェイハン港に出す南ルート(BTCパイプライン)がある。」(袴田茂樹氏)



ロシアのグルジア侵攻の一つは石油目的なのだから、グルジア侵攻直後から言われているウクライナ侵攻よりも、バクー油田、カスピ海の油田を有するアゼルバイジャン攻略の方が効率がいい。



現在、黒海への輸送ルートは、ロシア軍の一部が24日時点もグルジア領内の港湾都市ポチなどに留まっていて遮断されている。



最新の詳しいニュースが入手しづらいが、8月14日には米英石油メジャーBP社がトリビシからトルコへ経由するBTCパイプラインの輸送を再開させたとの発表をした。しかし、グルジア領内の黒海沿岸まで伸びるバクー・スプサ・パイプラインの原油輸送は停止したままだ。



ロイター 8月14日

http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-33263420080814



これに先立って、ロシアのトランスネフチ社は、アゼルバイジャン国営石油公社の求めにより、同社はバクー-ノボロシースク間のアゼルバイジャン産石油輸送量を月量16万6000トンまで増加させるとの情報が8月12日付けである。現在の月間輸送量は8万3000トンであり、これで輸送量は倍増する。



IBTimes 8月12日

http://jp.ibtimes.com/article/biznews/080812/22126.html



この記事を額面どおりに受け取れば、グルジア軍が南オセチア自治州に侵攻したのが8月7日だから、米国重視と言われるアゼルバイジャンの判断は速い。



ロシアのアゼルバイジャンに対する働きかけは当然のところ以前からあり、ロシアの国営石油企業「ガスプロム」のミレルCEOが率いる代表団は6月、アゼルバイジャンを訪問、同氏は親米で知られるアリエフ大統領と会談を行い、石油・ガス産業における同社とアゼルバイジャン企業の協力関係についてセールス活動を行っている。



IBTimes 2008年6月3日

http://jp.ibtimes.com/article/biznews/080603/20197.html





◆結論



ロシア軍はグルジア侵攻を経て、グルジアに長期駐留する事により、石油産出国アゼルバイジャンをもその勢力下に置く事になる。

現時点での政府コメントは控えているが、メドベージェフ政権は、ロシア軍のグルジア領駐留の長期化を非難される初期の段階で、アメリカ軍のイラク長期駐留派兵を引き合いに出し、自らの正当性を主張するだろう。



レベルを落とした話になるが、共産党一党独裁の中国、独裁ロシアを5大常任理事国とする国連は、この2カ国の「拒否権」が20世紀後半の間悪用され続け、21世紀に引き継がれた、国際政治最大のジョークになっている。





関連リンク:



ロシアのグルジア侵攻は、なぜこの8月に行われたのか―12月のNATO外相会議―

http://www.asyura2.com/08/wara3/msg/691.html