経済恐慌期での中央アジアの民族独立運動

― ロシアの衰退とCISの解体 ―

(阿修羅「戦争」BBS.11月23日投稿から)

http://www.asyura2.com/08/wara5/msg/106.html

アメリカ国防総省のシンクタンク、国家戦略研究所(INSS)の研究では、2015年ごろ、ロシアは大混乱し、資源の豊かな中央アジアが新しい国を作って独立するだろうと予測している。更に、中央アジアに新しい独立国家が誕生することにより、それに触発された中国が、19世紀まで自国の領土であった極東ロシアへ侵略する可能性があるとしているそうだ。

これは、ワシントンの日高義樹氏の著作、『資源世界大戦が始まった』(2007年12月刊)によるものだ。

http://www.amazon.co.jp/%E8%B3%87%E6%BA%90%E4%B8%96%E7%95%8C%E5%A4%A7%E6%88%A6%E3%81%8C%E5%A7%8B%E3%81%BE%E3%81%A3%E3%81%9F%E2%80%952015%E5%B9%B4%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E5%9B%BD%E5%AE%B6%E6%88%A6%E7%95%A5-%E6%97%A5%E9%AB%98-%E7%BE%A9%E6%A8%B9/dp/447800319X/ref=sr_1_9?ie=UTF8&s=books&qid=1227356438&sr=1-9

ここでいう中央アジアの地域とは、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンのことだ。

地図参照:http://www.lib.utexas.edu/maps/world_maps/world_physical_2007.pdf

この4カ国は、11カ国から成る独立国家共同体(CIS)の加盟国であり、上海協力機構(SCO)の加盟国でもある。上海協力機構の創設の背景には、CISの影響力不足からくる中央アジア各国の政情の不安定があり、国家統制の及ばない中央アジアの武装・テロ勢力から、国境を中央アジア諸国と共同で管理したい中国の思惑があった。2002年に「SCO地域対テロ機構」の創設に関する協定が署名され、本部はキルギスに置かれている。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E6%B5%B7%E5%8D%94%E5%8A%9B%E6%A9%9F%E6%A7%8B

CIS加盟のこれら中央アジア4カ国とロシアとの関係は緊密であり、ロシアとの軍事同盟とユーラシア経済共同体 (EurAsEC)で結ばれている(ウズベキスタンは EurAsEC には非加盟)。カザフスタンには1955年に建設したロシアのバイコヌール宇宙基地がある。

日高氏は、INSSの詳細な予測にまでは触れていないが、この新しい独立国家というのは中国辺境の民族グループを中心に作られるというから、ウイグル人、カザフ人、キルギス人を中心とした、テュルク系民族の東トルキスタン独立運動を母体とした運動によって作られるものと思われる。

「東トルキスタン独立運動」(Wikipedia)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%AD%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E7%8B%AC%E7%AB%8B%E9%81%8B%E5%8B%95

さて、ロシアでは年間70万人人口が減少しているといわれるが、2005年の人口は1億4400万人。国連の予測では、2015年には中位予測で1億3600万人となる。

http://esa.un.org/unpp/

ロシア連邦軍は広大な領土を6個軍管区に分けて警備しているが、ロシアの軍事力は人口の減少とともに縮小し、CISの統制はおろか、自国の領土さえ守れなくなっている。このことは、日高氏が2年ぐらい前から著作で指摘し始めている。

11月21日付けニューヨーク・タイムズに、「Putin Vows to Fight Economic Collapse in Russia」(プーチンはロシアの経済崩壊と戦うことを誓う)というタイトルの記事が掲載された。

http://www.nytimes.com/2008/11/21/world/europe/21putin.html?_r=1&em

現在、アメリカ発金融恐慌で、ルーブルとともにロシア株式市場も暴落し、石油バブルに連動した「ロシアバブルの崩壊」が始まっている。

2009年に世界は経済恐慌に突入するが、ロシアが1990年代の通貨・経済危機のような状態に陥った場合、広大な地域を範囲とするCIS諸国へのロシア中央政府の軍事的・経済的影響力は現在以上に低下し、「2015年」頃までには、INSSの予測のように、新国家誕生を目標にした独立運動が中央アジアで起きているかもしれない。

「東トルキスタンにおけるテュルク系住民の運動組織は、初期の抵抗運動を除き、中国国外に運動拠点を置くものが多い。」

ウイグル人、カザフ人などのテュルク系民族は、「カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン等の中央アジア諸国にコミュニティを形成しており、」「特に中央アジア諸国で最大のウイグル人コミュニティを抱えるカザフスタンでは、1991年のソ連邦の解体以降、ウイグル民族主義の機運が高まり、武装闘争も辞さない過激派組織も組織された。」

(前出 Wikipedia)

中国の反政府勢力を中心とした東トルキスタン独立運動が、隣接する中央アジア諸国に波及し、資源の豊かな中央アジアの地域の一部にテュルク系民族の新しい独立国家ができる。それに触発された中国は、19世紀まで自国の領土であった極東ロシアを取り返すために侵略する可能性があるというのが、INSSの専門家の見方だ。

(この予測についてのレポートは、INSSのサイトには掲載されていない。)

http://www.ndu.edu/inss/

中国は、ロシア国境地帯に強力な戦略基地を造っている。すでに大型爆撃機師団の基地、戦闘爆撃部隊の基地を3カ所、そして輸送機師団の基地を造り、新鋭の機械化師団を3個師団をロシアとの国境に展開させている。また、北朝鮮国境からロシア国境にかけての空軍兵力とミサイル部隊の戦力を強化し、陸軍師団や輸送機部隊の戦力も増強している。(前出書)

■関連リンク:

Eugene Rumer,”The U.S. Interests and Role in Central Asia after K2,”THE WASHINGTON QUARTERLY SUMMER 2006.

http://twq.com/06summer/docs/06summer_rumer.pdf

DOMOTO

http://www.d5.dion.ne.jp/~y9260/hunsou.index.html