②ベトナム戦争化が回避されるアフガニスタンは、「タリバン政権復活」へと向かう

(写真は、マクリスタルISAF司令官 :Born August 14, 1954)

ベトナム戦争が回避されるアフガニスタンは、「タリバン政権復活」へと向かう

― 不可解なマクリスタル報告書 ―

http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/29460153.html

<上記からの続き>

◆ 総 括 ◆

タリバン武装勢力の掃討から、アフガン政府の治安機関の能力向上へ戦略をシフトさせれば、増派規模は継戦のそれより少なくて済むと思われるが、アフガン政府の治安機関の能力を高めれば、タリバンに勝てると本気でアメリカ軍首脳は考えているのか。このことは、戦争音痴なオバマ大統領でもわかると思う。

しかし、「アフガニスタンの国民感情がアメリカ軍を支持しなければ、決してこの戦争には勝てないという定理」に即して考え、ベトナム戦争化を避けようとするならば、マクリスタルの報告書が一つの結論にはなる。しかし、それは余りにも難度の高い方法であり、成功率2%といったところではないか。マクリスタルの報告書は、そのような机上の空論の実現に挑戦するしかほかに選択肢がないことを示しているのだろう。

「アフガニスタンの民兵は人数だけは50万人もいるが、タリバンやアルカイダとの戦争には役に立たない事は誰の目にも明らか」(日高氏)で、彼らを訓練しても武装勢力・テロリストには勝てない。

結局、「9.11」以前のタリバン政権(1996-2001)が復活する。

アフガニスタンには石油資源がないが、中央アジアからアラビア海へ石油と天然ガスを運び出すための要衝、更にイラン、パキスタン、インドという核兵器のベルト地帯の中間、その3国の天然ガスの供給で結ばれた経済圏の中間というように、アメリカにとって地政学的に重要な地域である。

オバマ大統領は、今年3月に包括的な対アフガニスタン戦略を発表し、このアフガン戦争の目標を、「パキスタンとアフガニスタンにいるアルカイダを崩壊させ、組織を解体させ、打倒すること、そして将来にわたりいずれの国にもアルカイダが戻ることを防ぐことだ」と述べた。

アメリカの外交・軍事戦略は、ダブル・スタンダードの色彩が濃厚なのが特徴だが、クリントン・ブッシュ政権時代から米石油資本によって要請されている、中央アジアからアラビア海へ石油と天然ガスを運び出すための要衝であるアフガニスタン確保という戦略を、オバマ政権は実は完全に放棄している。オバマ政権がアフガニスタンで戦争をしているのは、単にアルカイダ打倒という理由からだけだ。

オバマ政権のプレゼンスは、ブッシュ政権時と比較し中東、東欧において急激に低下しているが、中央アジア諸国における軍事的・経済的プレゼンスの低下は、特に著しい。

この事から言えるのは、オバマ政権はアフガニスタンでの戦争を、アルカイダの壊滅という単一的な目的で考えているという事だ。

また、イラン、パキスタン、インドという核兵器のベルト地帯で、ベトナム戦争を再現させるような戦争が本格的に始まる今年2,3月の時点でアメリカ軍首脳は、軍事問題に弱いオバマ政権に対して、この戦争開始の断固反対をするべきであった。アメリカ軍首脳にはそれだけのインテリジェンスがあったのだから。

先に、「近年驚くほどサラリーマン化してしまっているアメリカ軍首脳は、辞表覚悟でオバマ大統領に反対意見を進言する気概がなくなってしまっている始末だ」というワシントンでの日高氏の見方をとりあげたが、長年ワシントンで要人達との取材を重ねてきた日高氏は、ゲーツ国防長官や国防総省の文官たちにもこの責任放棄の傾向は見られるという。

マレン、マクリスタルなどアメリカ軍首脳は、実はタリバン政権復活になるのは仕方がないと考えているのではないか。またパキスタンとアフガニスタンは2国一体の包括戦略で考えるのが基本線であるから、タリバン政権の復活によってアフガニスタン国家の安定を図るのは、隣国パキスタンの混乱を避ける現時点で考えられる最良の方策だ。

アフガニスタンがベトナム戦争化すれば、タリバンはパキスタン内のタリバンやアルカイダと連携し、非対称戦の戦場をパキスタンへ拡大するだろう。現在のアフガニスタン戦争でさえ40万人の米軍兵力でも不足だと言われているのに、多くの核兵器施設のあるパキスタンへ戦場を拡大されたら、オバマ政権の外交・軍事政策は崩壊する。「小」が「大」を食うのが非対称戦だ。

このままタリバン武装勢力との戦争で、米兵を大幅に増派して戦争を継続しても、アフガニスタン戦争がベトナム戦争化すれば、アメリカは敗退してタリバン政権が復活する。

マクリスタル報告書の真意は、米兵の最低限の犠牲でアメリカ軍をアフガニスタンから撤退させ、タリバン政権を復活させることによって隣国パキスタンへの戦場の拡大を避けることではないか。

ゲーツ国防長官とマレン米統合参謀本部議長は9月3日の記者会見で、米国内の世論調査でアフガン軍事作戦への支持率が低下していることを踏まえ、「今後12―18カ月の間に形勢を逆転する必要がある」、「成果を見せるための時間は限られている」と、しらばくれたと思われる発言をしている。

関連リンク:

「パキスタンの核兵器施設へタリバンが3回の攻撃 - 8月12日 UPI通信、FOX NEWS -」

http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/29338246.html

参考文献:

『オバマ外交で沈没する日本』 (2009年6月刊 日高義樹著 徳間書店)

DOMOTO

http://www.d5.dion.ne.jp/~y9260/hunsou.index.html