イスラエルはイラン攻撃で国家崩壊する ―アロー・ミサイル防衛システムでは国は守れない―

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                      上図はイランの核施設

■ 2013年6月イラン大統領選挙の前後

アメリカの軍事専門家の一致した見方は、オバマ政権とイスラエルのネタニエフ政権がイランに対して何ら有効な措置を取らなかった場合、イランは2011年から2014年の間に核兵器を保有すると予測するものだ。(『米中軍事同盟が始まった』 日高義樹著 2009年12月刊))

オバマ政権の任期は2013年1月まで。とするとイランが核兵器保有を達成するのは、オバマ政権後半か、次期アメリカ政権の前半。

私は、オバマ政権後半には米国債の暴落が起きる可能性が高いと考え、その時にはオバマは次の時代の世界の新通貨体制を構築するために世界に協力を訴えていると考えるので、国際協調を求められるオバマ政権は、イスラエルのイラン攻撃には軍事協力ができないと考える(この世界経済についての予測は、朝倉慶著『すでに世界は恐慌に突入した』[注1] を参考にしている)。

世界中の中東専門家が昨年6月のイラン大統領選挙では、アフマディネジャドと改革派ムサビについて「実際のところ、どちらが勝ったのか、はっきりしない」と疑っている。12月27日には大規模な反政府デモがおき、イラン当局はムサビ改革派を警戒している。「中東TODAY」サイトでは、ハメネイ師の権威が落ちたイランでは「反体制運動の活発化が、今年はもっと激しいものに、なっていくことが予測される」と見ている。

http://www.tkfd.or.jp/blog/sasaki/2010/01/no_710.html

これまで、イスラエルはイランの保守派を特に警戒してきたが、その中でもアフマディネジャドは、「核兵器でイスラエルを抹殺する」と繰り返し公言してきた狂信的な指導者だ。「中東のヒットラー」の異名も持つ。1979年のホメイニによるイラン革命以来、イスラエルにとって最も危険な指導者だといえる。

イラン大統領の任期は4年、再選は可能だが連続三選は禁止されている。2009年6月に再選されたアフマディネジャドは、2013年6月で大統領職を退く。イラン保守派の次の大統領候補として有力なのはアリ・ラリジャニ国会議長で、改革派の元首相ムサビと対抗している。

昨年12月15日に、米下院ではイランにガソリンなど石油精製品を輸出した外国企業を経済制裁の対象とする法案が可決され、年明けの米上院へと送られた。また1月から国連は、ガソリンの禁輸などが提案されている追加制裁の協議に入る。

「イランによる「ペルシャ湾封鎖」とアメリカのガソリン制裁」(12月28日)

http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/30794307.html

東京財団「中東TODAY」サイトの佐々木良昭氏は、今後のイランの政治シナリオとして以下の3つを挙げている。

① アハマド・ネジャド大統領が全権を掌握し、ヒトラーのような絶対権力を握る存在に変貌していく。この場合、宗教的最高権力者は存在しなくなる。

② ハメネイ師を支える保守派が、アハマド・ネジャド大統領を追放する。その結果、ラリジャニ氏が後任の大統領となり、今後も神権体制が維持される。

③ ハメネイ師もアハマド・ネジャド大統領も、権力の座から追放され、民主体制が萌芽し始める。

アメリカ・オバマ政権の協力が不可能である事を想定しているイスラエルは、すべての諜報機関による核開発への諜報活動を続けながら、2013年6月のイラン大統領選挙での結果を考慮して、イラン攻撃の決行の是非を考えていると思う。

狂信的アフマディネジャドに大統領三選はありえないが、アメリカと国連によるガソリン制裁でイラン国民の経済生活を困窮させた場合、シナリオ①の想定は有りえる。

また、③のシナリオになり、イランがムサビ改革派政権へ政権交代してイスラエルがイラン攻撃を中止すれば、イスラエルにとって膨大な国防予算と人的犠牲を出すことから免れる。

■ イスラエルはイラン攻撃で国家崩壊する

イスラエル・イラン間で戦争がおきれば、両国間においてミサイル攻撃の応酬が予想されている。

2009年9月にイスラエルの戦略学者、アンソニーとコーズマンの二人が出した「イスラエルによるイラン核施設攻撃についての研究」というレポートでは、イスラエルによる「ジェリコ3型」弾道ミサイル50発の一斉攻撃についても論及しているそうだ。イスラエル軍当局によれば、それらのミサイル攻撃に対して、イランは無差別ミサイル攻撃を計画しているが、イスラエルのアロー・ミサイル防衛システムでほとんど迎撃すると言っているそうだ(前出日高書)。

ただ、たとえアロー・ミサイル防衛システムが万全でも、イスラエルの攻撃により、イラン革命防衛隊が指揮するテロ部隊を基軸とした、イスラエル・イラン間での全面戦争になる。

「イスラエルの核施設局所空爆は、イラン過激派を第二のアルカイダ以上にする」(2008年6月)

http://otd9.jbbs.livedoor.jp/911044/bbs_plain?base=341&range=1

こうした全面戦争には、アメリカ軍の協力が不可欠だ。最終的にイラン革命防衛隊によるテロ戦争に持ち込まれた場合、イラク、アフガニスタン戦争において既に証明ずみなように、イスラエル軍は敗北し、テロの戦場と化すイスラエルは国家崩壊するだろう。勿論、世界中のアルカイダがイスラエルに結集する。

仮にムサビ政権が誕生しても、1970年代以来のイランの国策である核兵器保有の意思は変わらない。 現在のイランの若い人にも、核兵器を持つことに積極的な人が多い。また、ムサビ政権がいずれ保守派政権へ政権交代することも、イスラエルにとっては分かりきった事だ。

しかし、イラン攻撃を断行すればイスラエルは国家崩壊する。

イラク戦争以来、国家の軍事力ではイスラム・テロ組織には勝てない時代に入っている。

自爆テロ攻撃に見られるように、イスラム民族は、ユダヤ人や世界の常識では考えられないような行動をとる。イスラエル政府がロシアとの交渉でイランへの「S-300」防空システムの譲渡を差し止めても、イランが核兵器開発を止めることはない。中東では西洋の常識が通用しないと言われるが、イスラエル・イラン間で予想されている「核戦争」でさえも、アラーの神はイランを勝利に導くと、イラン国民は考えていると見た方がよい。

注1: 『すでに世界は恐慌に突入した』 (朝倉慶著 ビジネス社 2009年12月刊)

DOMOTO

http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735

http://www.d5.dion.ne.jp/~y9260/hunsou.index.html