( ※ 前回 「ドル下落と米国の二番底 ―南・東シナ海での中国の国家戦略①―」 の続き )

  http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/32970893.html





「中国政府は(2009年)7月、上海、広州、深センなど中国本土の一部都市と、東南アジア諸国連合(ASEAN)、香港、マカオとの貿易取引について、元建てでの決済を試験的に解禁した。中国の輸出企業は元で代金を受け取り、輸入企業は元を国外の企業に支払う仕組みがすでに動き出している。」

http://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/210912.htm



これから1年後の今年6月17日、中国政府は、これらの限定的対象の国との貿易にしか認めなかった人民元建て貿易決済の試験プログラムを大幅に拡大する決定を、国営ラジオで報じた。



「具体的には、これまで香港やマカオ、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国との貿易のみ認められていた人民元建て決済がすべての取引相手国に適用される。」



これには、「人民元の世界的な信認を高める狙いがあるとみられている。」



(「中国が人民元建て貿易決済拡大へ」 6月18日 asahi.com)

 http://www.asahi.com/business/news/reuters/RTR201006170116.html



この1週間後に、アジア開発銀行は人民元の今後に関するリポートを発表している。



「人民元、いずれ準備通貨となる可能性=ADB」(2010年6月24日)



[香港 24日 ロイター]アジア開発銀行(ADB)は24日発表したリポートの中で、人民元は米ドルの代わりとして、急速に世界で用いられる通貨になる可能性がある、との見通しを示した。

 リポートは「人民元はまだ国際的な通貨とはなっていないが、多くの人々が考えているよりはるかに早くそうなる可能性がある。人民元は国際化により、ユーロと同様、米ドルの代わりの通貨となり、世界の準備システムを複数通貨構造に導く可能性がある」と指摘した。

 リポートはコロンビア大学アース・インスティチュートとの共同研究として、ノーベル賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ氏ら、11人のエコノミストがまとめた。

 リポートは、人民元が準備通貨となる時期については触れていないが、多くのアナリストは、中国政府が上海を国際的な金融センターにすることを目指す2020年までに、完全な交換通貨になると予想している。





中国人民銀行は8月17日、国内資本市場に他国が貿易決済で得た人民元資金の流入を促すため、海外の金融機関に、中国の銀行間債券市場での人民元資金の運用を認める試験プログラムを実施するとの声明を出した。



「人民銀が7月30日発表したところによると、中央政府や銀行、企業が発行した債券などを売買する銀行間債券市場の規模は6月現在、計14兆3000億元(約180兆円)。債券発行残高の総額に占める割合は97%に上る。」



(「中国、外銀による国内債券市場での元運用を解禁へ-試験プログラム」 8月17日 ブルームバーグ)

 http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=avQbadJmgCxw



経済・金融史が専門である著名なハーバード大学のニーアル・ファーガソン教授は、2009年以前からアメリカの財政赤字の限界による米国債の金利急騰とドル崩壊を予測し、2009年には、今後、中国とアメリカの間で利害対立が拡大していくと言っていたそうだ(朝倉慶著 『すでに世界は恐慌に突入した』 2009年12月刊)。彼は、ポール・クルーグマン、ケネス・ロゴフなどの著名な学者らとともに、アメリカ経済の論壇で活発な活動を行っており、特に米中関係での発言が注目される。ブルームバーグ(日本版)で検索すると8月2日付の記事で、ファーガソンが、



「米ドルがいずれ世界的な準備通貨としての地位を人民元に譲ることになり、それは恐らく5年以内だろう。投資家は事実上の金本位制に向かっている。」



と、オーストラリアで行われた会議の講演で指摘していた。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aQ58iSiSBgBY



ファーガソンは、スティグリッツらがまとめたADBのリポートよりも、大幅に中国と人民元の今後を高く評価している。



下記アドレスでリンクされる数表は、IMFの資料をもとに作成された、1995年~2009年までの「世界の外貨準備における主要通貨の比率の推移」を表したものだ。



http://wkp.fresheye.com/wikipedia/%E6%BA%96%E5%82%99%E9%80%9A%E8%B2%A8



ユーロが決済通貨として導入された1999年から2009年の10年で見ると、ユーロが全体の17.9%から28.1%へ上昇したために、米ドルは全体の70.9%から61.5%へダウンしている。

ここへ2009年7月から国際通貨化へ向けて活動を始めた中国人民元が食い込んだら、この先、米ドルの比率とシェアは更に落ちることになる。





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DOMOTO

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