「尖閣問題」と激増する中国の石油消費量 ―今後のアメリカの対応について―

27日午後配信の日経によれば、

「中国農業省は、尖閣諸島沖の中国漁船と海上保安庁巡視船の衝突事件を受け、尖閣海域での漁業監視船による巡視活動を常態化する方針を明らかにした。中国メディアが伝えた。操業する中国漁船の保護が目的だが、同海域での日本との摩擦が高まる可能性もある。

農業省の漁政局は漁業監視船「漁政」を持ち、1990年代から活動を開始。大型の監視船を建造する計画で、海洋権益の保護を目的に活動を活発にしている。」

9月20日の日経は「(中国が)南シナ海で実践したように『漁船→調査船→軍艦』の順で既成事実を積み重ね、影響力を浸透させる戦術が浮かぶ」と指摘していたが、とにかく中国政府は打つ手が速い。

政府関係者によると、菅首相と前原外相の訪米の留守を預かっていた仙石長官は、「(状況は)ますます悪化する」と言って狼狽したそうだが、野党や石原都知事に代表される「毅然とした対応を取るべきだ」という発言は観客席からの意見であり、野党が政権を取れば果たして尖閣問題は解決可能か。

中国による経済的対抗措置はレアアースの輸出停止だけではなく、中国政府内にあると報道される円高誘導論、日本国債売買の操作による高金利への誘導など、誰にでも思いつく対抗措置がいくらでも予想される。

日経25日付のニューヨーク支局長による記事では、船長釈放はアメリカ側の意向が働いた結果ではないかと推測している。真相は明らかでないが、漁船船長は釈放された。

27日の日本の朝刊各紙では、「日本政府、打つ手なし」「日本政府、手詰まり」などの活字が一面に並んだが、全くもってその通りだろう。

南シナ海と東シナ海での中国海軍増強の最大の目的は石油資源の獲得であり、尖閣問題は長期化する。「石油紛争」を仕掛けられていると考えた方がいい。当然日本政府は、中国に対する外交政策を根本的かつ迅速に転換する必要がある。

「中国の新車販売台数は2009年、前年比46%増の1360万台で米国を抜き去った。今年も前年比約3割増のペースで、市場規模は「リーマン」直後の2倍以上に膨れ上がっている。もちろん、急速なモータリゼーションは石油消費の急増を伴う。

今年の中国の原油輸入は前年比で3割前後も増えている。中国の全石油消費量は、10年間で倍増している。今後、この伸びが続くと15年には現在の日本の石油消費分に匹敵する需要が上乗せされ、20年には現在の米国の消費量をしのぐ世界最大の石油消費国になる公算が大きい。」

「尖閣諸島漁船衝突は長期紛争の序奏」 (9月26日 田村秀男)

http://tamurah.iza.ne.jp/blog/entry/1815331/

■ 今後のアメリカの対応と日本

さて、これに対してアメリカは今後どう対応するだろうか。

アメリカは昨年11月、中国封じ込めを目指す米ASEAN首脳会議の第1回会合を開催し「中国包囲網」の構築を始めた。

また、韓国哨戒艦撃沈事件を受けて、2度目の韓米合同海上軍事演習が今度は黄海で今日27日から10月1日までの日程で始まっている。10月末に黄海で実施される空母演習には原子力空母「ジョージ・ワシントン」が参加すると伝えられている(9月27日 聯合)。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100927-00000002-yonh-kr

7月26日には、クリントン国務長官の南シナ海域への関与の声明が行われ、ゲーツ米国防長官は10月12日にハノイで開催されるASEAN初の拡大国防相会議に出席する。「南シナ海での船舶の自由航行権をどうするかなどの中国対策づくりが本格化する」(9月25日 日経)。

アメリカがASEAN諸国の南シナ海への関与を深めるのは、アジア32億人市場の中核へ発展する経済成長センターであるからであり、あと数年で長期金利が急騰し、国家破綻へ向かっている日本の尖閣問題に対しては、「米国の利益」から考えれば当面不介入の立場を取り続けるだろう。

9月23日に行われた日米外相会談で、「尖閣諸島は日米安保第5条の適用対象である」というクリントン長官の発言があったという前原大臣の報告はあった。しかし、2009年発足からのオバマ政権の外交を振り返って見ると、経済制裁または対話協調主義で貫かれており、尖閣問題で最終的に日米安保の規定による軍事力の発動があるとは思えない。日本海と黄海でのアメリカの合同軍事演習は威嚇でしかなく、大量破壊兵器を多量に保有する中国との間には米中間に巨大な軍事的抑止力が働いている。尖閣諸島へ中国が侵攻しても、最終的に日米安保による軍事力の発動は何らかの手段で阻止されるのではないか。

8月16日、米国防総省が中国の軍事力に関する年次報告書を公表した。もともとは今年3月が公表予定だったのが半年ほど遅れたのは、オバマ政権の弱腰外交にあるようだ。ワシントン・タイムズ紙のビル・ガーツ記者によれば、3月に公表を予定していた国防総省に待ったをかけたのは国家安全保障会議(NSC)で、中国を「挑発」することを恐れたためだという。

この報告書には、米中の軍事交流と軍事協力という異例の記述が盛り込まれ、かなり中国へ配慮した内容に書き換えられたという。

「オバマ政権のなんとも気弱な中国軍事力レポート」(8月24日 JBpress)

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/4249

先ほど私は「日本政府は、中国に対する外交政策を根本的かつ迅速に転換する必要がある」と述べたが、中国との尖閣問題では十中八九、日本は負けると私は見ている。民主党内の強硬論を主張する政治家も含めて、日本はこの60年間、このような事態に対する何の準備もしてこなかった。

対外的な経済戦略しかり、本当の意味での包括的な国家戦略というものもない。憲法9条はいまだに改正されておらず、自民党も民主党も日米安保のもとでの甘い国防・外交戦略に浸り切っていた。しかも安倍政権以来、日米安保と日米外交の空洞化が進んでおり、オバマ政権の東アジア外交政策に強い影響力をもつシンクタンク「新アメリカ安全保障センター(CNAS)」のHPでは、現在も中国の問題に対する日米間の適切な協議体自体がないことを指摘されている。

A Defense Agenda for Mr. Kan (9月14日)

http://www.cnas.org/node/4977

私は今回の問題が、鎖国時代に来航したペリーの軍艦の砲撃のような強いショックを日本の国民へ与えて、今後の日本人の国防意識や日本の政治を変える契機となればいいと願っている。それでも、日本が変わることができず、憲法9条さえ改正することが出来ないのであれば、東シナ海ガス田、沖縄、北方領土も中国やロシアに取られてしまうまで待ってみるしかない。

中露両国は対日戦をめぐる歴史認識で連携し、今日27日、メドベージェフ大統領は北京で胡錦濤国家主席と会談して、対日戦勝65周年に関する共同声明の中へ、北方領土要求を正当化する趣旨を盛り込んだ(産経)。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100927-00000101-san-int

DOMOTO

http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735

http://www.d5.dion.ne.jp/~y9260/hunsou.index.html