目次



  ■ 序:米新議会 連邦債務の債務上限引き上げでの対立

  ■ ① 中国の核先制使用理論

  ■ ② 米国の現実的孤立主義のトレンド

  ■ ③ 暫定的な日米同盟の深化

  ■ ④ 日本国債暴落と中国による植民地化





    ■ 米新議会 連邦債務の債務上限引き上げでの対立



昨年11月の米中間選挙の結果を受け、下院で共和党が多数派の「ねじれ議会」が1月5日から始まった。オバマ大統領の公的資金バラマキ政策で、アメリカの財政赤字は膨大な数字に膨れ上がった。各委員会での重要ポストを獲得した共和党が本格的な攻勢を開始している。



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米ウォールストリートのエコノミストは、米政府による最近の歳出入の傾向を基に、連邦債務が3月末あるいは4月にも、現在の上限である14兆3000億ドルに達すると予想している。

上限に達した場合、連邦政府機関が閉鎖を強いられる可能性や社会保障などの支払いが脅かされる恐れが出てくるほか、米国債のデフォルト(債務不履行)リスクも生じる。



 HSBCセキュリティーズ(ニューヨーク)の首席金利ストラテジスト、ローレンス・ダイヤー氏は、事実上のデフォルトという最悪のシナリオに陥った場合、米国は債券市場へのアクセスで長期的な打撃を受け、トリプルA格付けを失うほか、大幅な借り入れコスト上昇に直面し、財政問題が悪化するとの見方を示した。

そこまで深刻な事態は今のところ予想されていないが、下院予算委員会の新委員長に就任したライアン議員は5日、「歳出面での譲歩」なしに債務上限を引き上げることには関心がないと発言した。(以下略)[1月5日 ロイター]

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnJS883108920110106



ガイトナー米財務長官は6日、連邦債務が早ければ3月末に法定上限に達する可能性があるとし、議会が上限引き上げを承認しない場合、深刻な結果を招く恐れがあるとの見解を示した。

財務省が公表したリード上院民主党院内総務宛て書簡で、長官は「たとえ短期的もしくは限定的なデフォルト(債務不履行)であっても、向こう数十年にわたって続くような甚大な経済的結果を招くことになる」と述べた。(中略)

「財務省の推定では、早ければ2011年3月31日に債務が上限に達する見通しで、可能性として3月31日─5月16日の間が最も高い」と述べた。(中略)

議会が債務上限を引き上げない場合、米国は事実上の債務不履行に陥り、2008─09年の金融危機をはるかにしのぐ損害を被る恐れがあるとした。[1月6日 ロイター]

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-18910020110106



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連邦債務の債務上限引き上げの問題については、ライアン予算委員長の言うように「歳出面での譲歩」を条件として話し合いが進められるだろう。共和党が債務上限引き上げを拒否することはありえない。なぜなら、米経済諮問委員会のグールズビー委員長が発言しているように、国内経済に甚大な影響が及び、世論全体の猛烈な反対が予想されるからだ。しかし、ライアン委員長は6日、カリフォルニア州を引き合いに、「共和党は、州政府をデフォルト(債務不履行)から救うことはしない方針だ」と州財政切り捨ての発言をしているので(ブルームバーグ)、2011年のアメリカ経済はドラスティックな展開が予想される。もちろん上昇を始めている米国債金利は更に上昇していくだろう。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920008&sid=ajgPojKm3FjE





    ■ ① 中国の核先制使用理論



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中国人民解放軍の戦略核ミサイル部隊「第2砲兵部隊」が内部文書で、核兵器保有国との戦争によって危機的状況に置かれ、有効な防衛策がない場合、核先制使用も検討するとの軍事理論を部隊内に周知していることが5日、分かった。

(中略)中国軍の核政策は不透明さが指摘されており、その一端が明らかになるのは珍しい。(1月5日 共同通信)

http://www.47news.jp/CN/201101/CN2011010501000695.html

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詳細を伝えた毎日系新聞によると、中国の関係者の話として「核先制使用を視野に入れた核威嚇政策調整は、中国軍内で2000年ごろから議論されるようになり、現在は『公式理論』として定着」しているという。



どのような経緯でこのような内部文書が明るみとなったは分からないが、尖閣問題ではクリントン国務長官と前原外相が尖閣諸島を日米安保の適用対象として確認し、ゲーツ国防相やスタインバーグ国務副長官なども同じ「適用」発言をしている。中国の核先制使用の公式軍事理論は、尖閣問題における日米安保の適用に対して強力に対抗する脅威だ。



クリントン国務長官の日米安保適用発言の数日前、ニューヨークタイムズの論説記者が、アメリカは日米安保があっても実際には尖閣諸島を中国から守らないという見方を掲載していた。



More on the Senkaku/Diaoyu Islands (9月20日)

http://kristof.blogs.nytimes.com/2010/09/20/more-on-the-senkakudiaoyu-islands/





    ■ ② 米国の現実的孤立主義のトレンド



リベラル派の代表紙ニューヨークタイムズは、「タダ乗り」同盟と呼ばれる日米安保に批判的であると言われるが、この考え方は今まではアメリカの民主党の政治家に多かった。



昨年11月2日の米中間選挙では「ティーパーティー」が勢いを現わし共和党の大躍進に影響を与えた。ティーパーティーが支持した候補者は、11月3日の時点で下院52人、上院11人が当選している(「FOXニューズ」)。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E9%81%8B%E5%8B%95



税金の無駄遣いを批判して「小さな政府」を推進しようというスローガンのティーパーティーは、小さな町や田舎の町長、牧師、小さな店の店主、地主たちから成っており、外交安全保障政策においては極端な孤立主義である。



オバマ政権に入り、「当面アメリカの国益に直接損失を与えない国際問題には強く関与しない」というアメリカの孤立主義的外交政策が定着したが、アメリカの孤立主義的外交・軍事政策は米民主党的な考え方であるリベラリズム・国際協調主義と相まって、今後のアメリカの外交・軍事政策の長期的トレンドとなると思われる。



その最大の理由は、アメリカ国民の人種的な人口構成比の変化だ。1970年代までは白人社会であったアメリカの白人が占める全体の割合は、2004年の大統領選挙で77%、2008年の大統領選挙で74%に落ち込んでいる。アメリカの選挙民の黒人とヒスパニック系人口の占める割合は、今後も増加し続け、アメリカ政府の調査では2042年には白人は少数民族になってしまう。ワシントン在住の外交・軍事アナリストである日高義樹氏は、このアメリカの人口構成比の変化を踏まえ、今後は「アメリカがアメリカでなくなっていく」と述べている(『米中軍事同盟が始まる』 日高義樹著 2010年1月刊)。



「アメリカの孤立主義的外交・軍事政策がリベラリズム・国際協調主義と相まって、今後のアメリカの政策の長期的トレンドになる」ということは、具体的に言えば、日本への中国の脅威に対してアメリカは、アメリカの利益になる間しか日米同盟を機能させないということだ。米中外交は根本的にお互いの巨大な「核兵器を背景にした外交」(日高氏)であり、東アジアに位置する経済衰退国日本の取り扱いは、核を持つ大国同士の経済・政治情勢に応じた話し合いで決まっていく。





    ■ ③ 暫定的な日米同盟の深化



10月23日のブログでは中国と北朝鮮との戦争を想定した米軍の新しいアジア・太平洋戦略を紹介したが、これを一言で言うなら、中国や北朝鮮を遠く離れた基地から攻撃する戦略と攻撃体制と言える。

http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/33607093.html



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 昨年、米外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」に「中国パワーの地政学」という論文が載った。「コスト抑制のため米軍が大洋州諸国まで撤退しても中国に対抗できる」との内容だ。「米国には無理して日米安保を維持しなくていいとの考え方がある。日本がつなぎ留める努力をしなければ」と前防衛政務官の長島昭久(48)は言う。(日経 1月5日)

http://www.nikkei.com/news/headline/related-article/g=96958A9C93819FE0E0EBE2E29F8DE2E0E2E3E0E2E3E3819A93E2E2E2;df=2;bm=96958A9C93819FE0E2E6E2E2EA8DE2E6E2E3E0E2E3E39793E5E2E2E2

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米軍の新しいアジア・太平洋戦略の中心概念は「エアシーバトル戦略」である。海軍力に偏重している中国軍が、ステルス戦闘機「殲20」の開発を進めていることが1月7日の報道で分かった。これについては、米軍の「エアシーバトル戦略」に対抗した中国の「エアシーバトル戦略」の構築がすでに始まっていると見るべきだ。



<字数制限のため下記リンクへ続く>

「②日米軍事同盟は、日本国債暴落の前までの暫定的同盟となった ― 中国による植民地化へ進む日本 ―」

 http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/34223007.html



 

DOMOTO

http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735

http://www.d5.dion.ne.jp/~y9260/hunsou.index.html