「安保屋」アーミテージの主導する集団的自衛権

自民党の磯崎陽輔議員とアーミテージ 磯崎議員は安倍政権の国家安全保障担当内閣総理大臣補佐官 20138月)
Armitage International L.C.
【目次】
【1】 アーミテージと安倍政権
【2】 集団的自衛権の行使は小手先の構想に過ぎない
         【1 アーミテージと安倍政権
 
公益財団法人である日本国際問題研究所の記事によれば、米国のリチャード・アーミテージ(元国務副長官;20013月~20052月)は、超党派の日米関係および外交・安全保障問題の専門家グループとともに「2000年版・アーミテージ報告」を日本政府へ向けて発表し、このなかで「日本側の集団的自衛権に関する制約を同盟関係の阻害要因として指摘し、これらの解決に向けて一層の努力をするよう、強く求めている」。
 
「アーミテージ報告」から読み解く日米同盟の今後 (2007-4/04 日本国際問題研究所)
 
私が目にした情報では(朝日新聞 2013年7月27日朝刊)、アーミテージは安倍首相と親しく、2013年の5,6月に都内で首相と面会している。「6月の首相官邸での会談では,参院選後の政策などについても意見交換したとみられる」。
また2013年7月の朝日新聞のインタビューに対して、「今後,日本では集団的自衛権の行使容認に向けての議論が大きなテーマとなるが,近隣諸国には警戒感も強い。この点について『日本が(戦争責任などの)歴史問題で修正主義をとらず,未来志向であるのとセットであれば大丈夫だろう』」との見方を示した。
 
アーミテージ元米国務副長官インタビュー (2013-7/28)
 
また政治評論家の板垣英憲氏は、「アーミテージ元国務副長官は、日本の保守政界のなかでも、とくに自民党派閥「清和会」(安倍晋三首相の祖父・岸信介元首相から派閥を受け継いだ福田赳夫元首相が設立、父の安倍晋太郎元外相も会長を務めた)との関係が深く、日本の政治に大きな影響力を及ぼしてきた一人である」と述べている。
 
板垣 英憲「マスコミに出ない政治経済の裏話」(2014-3/01 板垣英憲)
 
また、先月422日の毎日新聞によれば、「自民党の石破茂幹事長は22日、米国のアーミテージ元国務副長官と東京都内で会談し、安倍晋三首相の目指す集団的自衛権の行使容認などについて協議し」ている。
 
アーミテージ氏:「安倍政権は経済優先で」…石破氏と会談 (2014-4/22 毎日新聞) 
 
 
      【2 集団的自衛権の行使は小手先の構想に過ぎない
 
集団的自衛権の行使容認という持論を持つアーミテージ元国務副長官について、米ハドソン研究所の日高義樹氏は、日米安保条約をビジネスにしている「安保屋」が小手先の構想でビジネスの延命を図ろうとしていると非難している。そして、小手先の構想に過ぎない集団的自衛権の行使では、中国や北朝鮮を抱えるアジアの軍事情勢にはとても対応できないと述べている。
これは米国の保守系シンクタンク、ハドソン研究所で長年、日米同盟を研究してきた実績と経験からの分析だ。
 
アーミテージは国務副長官を退任した2005年に、「アーミテージ・インターナショナル」という会社を設立している。冒頭の写真は20138月に自民党の磯崎陽輔議員とアーミテージが面会した時の写真で、「アーミテージ・インターナショナル」の写真ページに掲載されている。磯崎議員は国家安全保障担当内閣総理大臣補佐官で、粗雑な議論で集団的自衛権の行使容認を進める中心的人物の一人だ。
 
アーミテージ・インターナショナルのホームページには、ビジネス企業としての事業内容はほとんど掲載されていが、顧客についての次のような説明がある。

 







Armitage International serves clients that focus on international business development in industries such as aerospace, communications, consumer products, construction, defense, finance and financial services, high-technology electronics, information technology, and transportation. Our Clients include Fortune 100 companies, as well as mid-market firms.

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これによればアーミテージの会社は、次のような業界で国際的に事業展開する企業を顧客とする。それらは、航空宇宙、通信、消費者向け製品、建設、防衛、市場調査及び金融サービス、ハイテク電子機器、情報技術、および輸送などの業界に及ぶ。アーミテージ・インターナショナルの顧客には、「フォーチュン」誌が発表する企業売上高ランキング100社に入る企業も含まれる。
 
今年2月に出版された日高氏の著作レポートのなかで、『アメリカの大変化を知らない日本人』の第3章「集団的自衛権は幻である」のなかから、一部を以下に要約して記した。
 






(要約開始)
アーミテージ元国務副長官は、安保条約をビジネスにしている、いわゆる「安保屋」と言われる人物だ。アメリカで、日本の安全保障問題をビジネスとして扱っている、いわゆる安保屋グループは、安保条約によって日本が米国に守られている状態を一日も長く続けたいと考えている。
 
米国議会の指導者たちはいまや、米軍の海外駐留にまで強く反対するようになっている。したがって、日米安保条約についても反対している。ハドソン研究所の研究会で、海兵隊出身の、米軍やペンタゴンからするとゴットファーザーとでも言うべき有力な上院軍事委員会の議員もこう言った。
「日米安保条約は、無駄な海外駐留の象徴だ」
 
米国の政治家たちがいっせいに日米安保条約に反対し始めたため、驚いた米国の安保屋たちが慌ててつくりだしたのが集団的自衛権構想である。
 
日本と米国という二つの大国が安全保障を共有するには、相互安全保障協定を結ぶ以外にない。
日本が独自の軍事力を持ち、国際社会の常識に従って米国と相互安全保障条約を結べば、日米安保条約は不必要になる。そうすれば米国における安保屋の仕事はなくなる。
 
アジアにおける情勢は大きく変わった。安全保障の体制も変えなくてはならなくなっている。集団的自衛権などという米国の安保屋が考え出した構想をもとに、小手先だけで変えようとしても、とても対応できるものではない。
 
日本と米国という二つの大国が安全保障を共有するには、相互安全保障協定を結ぶ以外にない。日本と米国が組んで、共同の安全保障体制をつくりあげるべきだ。安保屋などを介在させず、日本政府の首脳が米国政府の首脳と対等につき合って、国の安全を図るべきである。
(要約終了)






 
【後記】 日高氏の、米国と相互安全保障条約を結ぶという構想には大きな問題点がいくつかあると思いますが、それらの問題は、日本の置かれている状況も見ながら考えていき、記事にしたいと思います。

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