プーチンのアジアへの旋回シフト

アジアパイプライン研究会による『調査研究成果』の『北東アジアの天然ガスパイプラインの長期ビジョン』の中から(2004年)
http://home.hiroshima-u.ac.jp/er/Rene_T.html
<まえがき>
 
ロシアによるウクライナ情勢、6月に入り再び始まったイラク戦争の地政学的リスクについて、日銀の黒田総裁が発言しています。
 




原油高騰は物価上昇加速か需要下振れか、7月日銀会合で分析へ (6月26日 ロイター)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0F10OT20140626?sp=true

 
(6月)23日、黒田総裁は都内での講演で、中国の過剰設備・債務問題などと並び「一部の国の地政学的リスクなどについても目が離せない」と、強めの表現で警戒感を示した。日本経済は「長期金利と原油価格の上昇にぜい弱」との見方が日銀内にはあり、影響を入念に検討しているようだ。
 
もっとも現時点の日銀内では、中国など新興国の景気減速を考慮すれば、原油価格が一方的に上昇すると決めつけるのは時期尚早との見通しが多いようだ。
 




この記事では「(日銀内では)原油価格が一方的に上昇すると決めつけるのは時期尚早との見通しが多い」としてますが、彼らはエコノミストであり、軍事や国際政治のアナリストではありません。彼らは何を情報源にしているのでしょう。

 
今後の中東とアフリカ諸国においての原油価格情勢と、それに対する米国の中東エネルギーへのスタンス、つまり米国が中東へ関与する態度についての記事を有料メルマガで6月26日に配信しています。よろしかったら是非読んでみてください。
 
原油価格情勢と米国の中東石油へのスタンス―第3次イラク戦争をめぐって―
http://www.mag2.com/m/0001627731.html
 
今日の記事は、その原油価格情勢とも深く関わっているロシアの、それとは別の動きです。
ロシアと中国というのは、中東で米国が手こずっている間にアジアや世界での戦略を着々と進め、米国のプレゼンスを後退させるのが今や常套手段として、誰の目にも明らかになっています。
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    プーチンのアジアへの旋回シフト
 
     ー中ロ同盟はアジア-太平洋の覇権を目指すー
2014年6月12日
 
【目次】
【1】 プーチンのアジアへの旋回シフト
【2】 中国とロシアの軍事同盟的な協力体制
   【1】 プーチンのアジアへの旋回シフト
 
「ロシアは太平洋へも旋回できる」
2012年9月のウラジオストックで開催されたAPECで、カーネギー・モスクワ・センターの所長はこう言ったそうです。
 
Tales of Different “Pivots” (2013-1/14 戦略国際問題研究所 )
http://csis.org/publication/comparative-connections-v14-n3-china-russia
 
米国のシンクタンクである戦略国際問題研究所(CSIS)のユー・ビン氏による上記のレポートによれば、ロシアの東方への旋回(シフト)は、プーチン政権2期目(2004年~2008年)の投資政策に見られるといいます。これは前ヒラリー・クリントン国務長官が彼女の論文「米国の(アジア)太平洋の世紀」で“pivot”(旋回・方向転換)を使った2011年よりもずっと前にあたります。
 
ユー・ビン氏によれば、プーチンのアジア-太平洋への「旋回」はロシアの壮大な戦略の一環であり、その大戦略は、ロシアをユーラシア大陸(アジア+ヨーロッパ)での強大なパワー(支配力)にするための、経済と(軍事)戦略の領域から構成されるといいます。
 
ロシアと中国は東シベリア油田の共同開発で協定を結んでおり、先月の5月21日にはロシアと中国はガスプロムによる中国への天然ガスの供給で合意し契約を済ませました。
 
現在、ウクライナ問題での制裁により欧米資本がロシアから撤退するのを、中国の投資資本がその穴を埋める格好となり、中国がロシアに対して優位に見えますが、戦略国際問題研究所(CSIS)のアンドリュー・クチンス氏によれば、将来的にロシアがエネルギー供給という点から中国に対して優位に立つことになりそうです。プーチンだけでなく中国共産党も当然これを承知してでの合意でしょう(クチンス氏はロシアとユーラシアが専門、シニア・フェロー)。クチンス氏はこう述べます。
 
「ロシアの欧州と西側諸国に対する相対的に経済的な優位が、石油・天然ガスの供給を第一の理由としてきたのと全く同じように、アジアにおける戦略的統合はエネルギーによって左右されている。」
 
Russia and the CIS in 2013: Russia’s Pivot to Asia(「ロシアのアジアへの旋回」)
(2014-1月 戦略国際問題研究所 )
http://csis.org/publication/russia-and-cis-2013?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+CSIS-Russia-And-Eurasia-Related-Publication+%28Russia+and+Eurasia+-+Related+Publication%29
 
つまりプーチンのアジア-太平洋への大戦略の経済的領域として、石油と天然ガスの大量供給で、中国と南シナ海までを含めた東アジアの国々を、欧州と全く同じようにかなりの部分ロシアに依存する仕組みを作ろうということです。
 
2013年のロシアのアジア・シフトをレポートした上記の記事では、ロシアが南シナ海での中国の覇権を妨げる(阻止する)ために、ベトナムに対して武器セールスと防衛協力だけでなく、エネルギー探査の支援を強めていることにもクチンス氏は触れています。現在、中国とベトナムは南シナ海でトラブルを起こしていますが、2013年3月から急接近を表明した中国とロシアが、南シナ海をめぐりどのような話し合いをしていくのか注目です。
 
極東も含めた2013年でのプーチンのアジアへの旋回の詳細は、クチンス氏の上記記事のリンク先にPDFファイルとして掲載されています。
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