「玉砕ノミクス」:ゴールドマン・サックスと年金積立金

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11月5日の田中宇さんの、ゴールドマンがアベノミクスを批判しているという記事に「バンザイノミクス」という言葉が出ていました。それを日刊ゲンダイが、「ゴールドマンも『バンザイノミクス』と評している」とカン違いしていますが、ゴールドマンは『バンザイノミクス』という言葉は使っていません。
 
アベノミクスのことを、『ゼロヘッジ』など海外のネットが侮蔑をこめて「バンザイノミクス」(Banzainomics)と呼んでいるのを、より彼らの受け取り方に即して訳せば、『玉砕ノミクス』です。とくに『ゼロヘッジ』は黒田日銀の発足当初から、毎週アベノミクスを攻撃・批判しています。
 
【◆◆以下の記事は、有料メルマガ11月13日号の一部です】
 
    【4】 ゴールドマン・サックスと年金積立金
 
日銀は10月31日、ついに追加金融緩和を決定しました。
その日の米国金融ニュース・サイト『ゼロヘッジ』では、この決定を受けたゴールドマン・サックスの馬場直彦氏のニュースレターの全文を公開しています。
 
馬場氏は、「日本銀行の金融機構局で金融システムの調査・分析を統括して」いましたが、2011年1月にゴールドマンに日本担当のチーフ・エコノミストとして移籍しました。
 
ゴールドマン:日銀から馬場氏をチーフ・エコノミストに起用 (2011/01/05 ブルームバーグ)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LEJ85M07SXKX01.html
 
『ゼロヘッジ』によると、最初、日銀の量的緩和の熱心な支援者であったゴールドマン・サックスが、アベノミクスとJカーブ効果に幻滅を感じるようになり、その立場を否定的へと変えたのは数か月前であったと言います。(Jカーブ効果:円高から円安進行への切り換わり時の短期間において、輸出が減少し(または伸び悩み)、その後上昇し始めること。)
 
そしてゴールドマンは、「アベノミクスにとって不幸な結末が、ほぼ間違いなく起こり得る」と言っているそうです。
 
ここまではゴールドマンの馬場氏のニュースレターからではなく、『ゼロヘッジ』サイトの調査ですが、『ゼロヘッジ』は海外ヘッジファンドや著名投資家などのレポートやニュースレターをよく読み込んでいるサイトです。
 
It was about several months ago when Goldman, which initially was an enthusiastic supporter of BOJ’s QE, turned sour on both Abenomics and the J-Curve (perhaps after relentless mocking on these pages), changed its tune, saying an unhappy ending for Abenomics is almost certainly in the cards.
 
Goldman On BOJ’s Banzainomics: “We Highlight The Potential For Harsh Criticism Of Further Cost-Push Inflation” (10/31-2014 ゼロヘッジ)
http://www.zerohedge.com/news/2014-10-31/goldman-bojs-banzainomics-we-highlight-potential-harsh-criticism-further-cost-push-i
 
アベノミクスについては、2013年4月に行われた日銀の大規模緩和の半月後、モルガン・スタンレー・リサーチが、「成長戦略がうまく実行されなければ、日本はスタグフレーションに襲われる」とレポートしていました。
 
この時期ゴールドマンは、日経株価は19000円を狙えるなどと煽っていましたが、市場誘導が巧みで露骨なゴールドマンに翻弄された投資家も多かったのではないでしょうか。
 
またゴールドマンの馬場氏は、大幅な円安が続くことによって<来年の統一地方選挙>で、非製造業者や、中小企業の人たち、一般家庭のあいだから、さらに値上げが続くコスト・プッシュ・インフレへの厳しい非難が起こる可能性を強調しています。
 
そして最後に、「今回10月31日の追加緩和の動きに関わりなく、我々ゴールドマンは、日銀は非常に狭い道を歩んでいると確信している」と警告しています。
 
これは、「黒田も安倍も、追加緩和など、この先いくらやっても無駄だ、我々外資を喜ばせるだけだ」という意味でしょう。
 
Irrespective of the latest easing moves, we believe the BOJ is treading a very narrow path.
 
現に、ソロスは10月31日の日銀の追加緩和発表から、円を売って何億ドルもの荒稼ぎをしています(ウォールストリート・ジャーナルのグレッグ・ザッカーマンのレポートによる)。
 
Soros Fund Profits Yet Again From Yen Short (11/04-2014 バリューウォーク)
http://www.valuewalk.com/2014/11/soros-short-yen/
 
以下は今年4月2日の日経の報道ですが、「アベノミクスは不幸な結末となる」と数か月前に変節したゴールドマンは、私たちの年金積立金をどのように運用し、GPIFとの取引を通じ、私たちの年金積立金を、どのように料理していくのでしょうか。
 




年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、高収益の日本株を組み込んだファンドへの投資を始める。ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントなど数社に運用を委託する。委託規模は1社あたり、2千億~4千億円規模とみられる。
 
公的年金、高利回り投資へ ゴールドマンなどに委託 (4/02-2014 日経)
http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS01045_R00C14A4PP8000/