米国 イランとのテロ戦争での協力は危険

イランの革命防衛隊
 
【◆◆以下の記事は有料メルマガ11月27日号の一部で、それに加筆したものです】
 
   【2】 米国 イランとのテロ戦争での協力は危険
 
イランは米国にとって長い間、宿敵でした。ところがいま、米国は、「イスラム国が拠点とするシリアのアサド政権の後ろ盾であるイランから一定の協力を引き出す」ことを模索しています(9月23日 共同通信)。
 
11月24日に再延長された7カ国によるイラン核問題の交渉では、「イラン側がイスラム国対応を絡ませて、譲歩を引き出そうとする」のではという観測がありました。現に9月21日、複数のイラン政府当局者がそのような交換条件を求める発言をしたとロイター通信は伝えています。
 
また共同通信は次のような説明をしています。
 




オバマ政権は、シリア領内への空爆拡大は「アサド政権ではなく、イスラム国との戦いだ」と強調する。しかし、イランの革命防衛隊の支援を受けるシリア政府軍が空爆に乗じて、イスラム国や反体制派の支配地域を取り戻そうとすれば、内戦の激化を招き、制御不能の状態に陥りかねない。

 
 オバマ政権はイランと軍事面で調整を図る可能性は明確に否定しているものの、せめてシリア領内への空爆を黙認し、アサド政権がおかしな動きを見せないようにらみを利かせてもらいたいというのが本音とみられる。
 
オバマ米政権、宿敵イランに秋波 対イスラム国で協調模索 (9/23-2014 共同通信)
http://www.47news.jp/47topics/e/257331.php




イランは上記のような、米国のオバマ政権の思うような、都合のよい方ばかりには動きません。

 
オバマ政権のこの方向での外交姿勢に対しては、米国の保守派から批判が多く出ています。
ヘリテージ財団の中東専門家であるジェームズ・フィリップス氏は、「イランは中東地域でのテロ戦争に対して「放火犯のように行動してきたので、火消しをするのを信用して任せられない」と言っています。
 
Why the US Can’t Trust Iran to Help Defeat ISIS (10/30-2014 ヘリテージ財団)
http://dailysignal.com/2014/10/30/us-cant-trust-iran-help-defeat-isis/
 
フィリップス氏によれば、2001年以降だけを見ても、イランは計画的にスンニ派とシーア派の宗派戦争を煽って、中東情勢を非常に混乱させてきたと言います。そしてそれがイスラム国の台頭に必要な状況を作ったとも言っています。
 
Iran is a major part of the problem in both Iraq and Syria. It has fueled sectarian hostilities between Sunnis and Shiites that created the conditions for the rise of the Islamic State.
 
以下は、ジェームズ・フィリップス氏の記事の、最初の部分の抄訳です。
 




(抄訳開始)

 
イスラム国は、近隣の国家の政府すべてを転覆させようとしている。イランと米国の戦略的協力を支持する者たちは、イスラム国の増大を防ぐなかで、一定の共通の国益をイランと米国は共有していると主張する。
 
しかし、この当然のように聞こえる両国の国益に基づいた考えは、テヘランの政権がしばしば、イランがより広い国益を退けて、偏狭なイデオロギーの利益を追求してきたという事実を無視している。
 
イランのイスラム革命の論理は、再三にわたりイランの国益の論理に優ってきた。
 
イラクに対しても、イランと米国では全く違う目標を持っている。
米国がイラクに安定した民主主義を作ろうとしているのに対して、イランはイラクを自分達の<衛星国にする>ことを目標にしている。
 

(抄訳終了)




イランのイラクに対する企てと同様、フィリップス氏が、イランを米国は信用してはいけないというのは、シリア政府軍をイランの革命防衛隊などが支援しているからです。

 
イランの国家的な目標は、アジアでの中国の野望と同じで、中東地域から米国を追い出し、地域の覇権を獲得することです。