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 ("Rouhani writes Obama as Iran talks enter endgame", Al-Monitor, March 26, 2015)


4月2日にイラン核問題で枠組み合意がされて、イランの最高指導者ハメネイ師は9日、「米国が核協議で欺かなければ、ほかの問題でも話し合えるかもしれない」と述べました。
 
イラン最高指導者、米と対話に含み 「核協議で欺かなければ」 4/09-2015 日経)
 
今回紹介するマーティン・インダイク氏の戦略で、中東地域で米国とイランが「何を考えて」話し合いを進めているのか、今後、米国とイランはどのような方向でこの地域で行動していくのかが、大筋で見えてくると思います。
 
 
【◆◆以下の記事は、有料メルマガ3月12日号の一部で、それに加筆したものです】
 
 
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   米国の新しい中東包括戦略とサウジの核武装
 
  ―「イランと米国との共同統治」をふくむ包括戦略―
 
 
【目次】
1 インダイク氏の中東戦略とオバマ政権
2】「イランと米国との共同統治」をふくむ包括戦略

(以下目次省略)
 

    【1 インダイク氏の中東戦略とオバマ政権
 

いま「中東崩壊」という言葉も出ているこの地域は、中東専門家からは“chaos”(混沌状態)と表現されています。
今まで私には、米国のオバマ政権がほとんど場当たり的に、注目するほどの基本戦略もなく、この中東の混沌状態を扱っているように見えていましたが、そうでもないようです。
 
今回の記事でははじめに、この収拾不可能かに見える中東で、米国がどのような戦略を立てて中東を再建設しようとしているのかを見てみたいと思います。
 
中東全体を見渡した包括的な戦略論はいくつもあると思いますが、この記事ではブルッキングス研究所の副社長であるマーティン・インダイク氏のものを取り上げます。
インダイク氏は米国の元駐イスラエル大使で、クリントン政権では国務次官補、大統領特別補佐官、国家安全保障会議(NSC)の上級スタッフを務めた経歴をもつ中東の専門家です。
 
現在、民主党オバマ政権を支えるブルッキングス研究所で副社長でもあり、その意見の影響力も大きいと思い、取り上げてみました。意見の影響力が大きいというのは私の判断ですが、実際にその戦略論を読んでみてオバマ政権の動きと照らし合わせてみると、場当たり的としか見えなかったオバマ政権の動きが、インダイク氏の戦略論と重なるのです。
 
そこで私はインダイク氏の戦略論を、民主党オバマ政権の中東戦略に近いものとして捉えました。
 
A return to the Middle Eastern great game(Part One) 2/17-2015 ブルッキングス研究所)
 
A return to the Middle Eastern great game(Part Two) 2/18-2015 ブルッキングス研究所)
 
ウェブページで2ページにわたりパート1と2の、2部から書かれています。題名は「中東のグレートゲームへの復帰」とありますが、これは中央アジアのそれを指すのではなく、米国が新たに「大いなるゲーム」を中東で始めるという意味です。
 
 
  【2】「イランと米国との共同統治」をふくむ包括戦略
 

米国自身の力には制約があるので、中東に再び秩序を回復させるには、中東地域での勢力のある国家との連合が必要です。
ブルッキングス研究所の副社長のインダイク氏は、いまの中東に対するそのような連合の形には、「2つしか」選択肢がないと言います。
 
そのうちの一つである今までとは全く違った新しい選択肢は、中東における「イランと米国との共同統治」であると言います。この戦略の核心は、<イランにペルシャ湾岸地域での(“in the Gulf”)優位性を与えようとするもの>で、その見返りのためにイランは次のようなことに同意しなければなりません。
 
それは、まず核開発の抑制。次に、レバノンでのヒズボラ、ガザでのハマスとパレスチナ・イスラム聖戦、イエメンでのフーシ派、シリアのアサド、これらへの支援をイランが減らすこと。そして<新しい米国とイランによる地域的秩序>の構築にイランが貢献することです。
 
1. Joint Condominium with Iran: The essenceof this approach is for the United States to concede Iran's dominance in theGulf in return for its agreement to curb its nuclear program, reduce itssupport for Hezbollah in Lebanon, Hamas and Palestine Islamic Jihad in Gaza,the Houthis in Yemen, and Basher al-Assad in Syria and contribute instead to theconstruction of a new regional American-Iranian order.
 
これに対してもう一つの「連合」の選択肢は、この地域での従来の同盟国であるサウジ、エジプト、イスラエル、トルコなどの連合をもとにして、イランを封じ込めるものです。インダイク氏はこの選択肢の事を「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(Back to the Future)と形容していますが、この選択肢は“chaos”(混沌・混乱)となった中東の未来をつくるために、旧来の「古い秩序」(“old order”)と枠組みにバックすることだ、「古い秩序」を修復することだという意味です。
 
この2つの選択肢(戦略)は共に非常に難点を抱えたもので、とくに前者のイランと米国との共同統治は考えが甘いと言われるかもしれないとインダイク氏自身が言っています。ところが、論文の後半パート2ではこの2つの選択肢の両方を合わせたものを米国の最終的な選択肢(戦略)として主張しているのです。
 
その最終的な選択肢の戦略は、まずイランが核開発の抑制にある程度のレベルで合意することが大前提になります。
 
そしてこの戦略では、中東での地域的安全保障の枠組みにイランとイスラエルも入れてつくるもので、その地域的安全保障の枠組みの基礎的な部分は、米国といまの同盟国との関係、イスラエル・エジプト・ヨルダンの間の良好な安全保障関係、イスラエルと湾岸アラブ諸国との隠れた安全保障関係などを活用してつくります。
 
この地域的安全保障の枠組みでは、各国間の「摩擦を減らしマネージしながら」やっていくのですが、そこでは各国間の「競争と抑制・束縛が組み合わされる必要があるだろう」とも言っています。
 
この構想は、イランをこの地域的安全保障の枠組みに入れ、イランとの協力関係をつくることで中東での多くの紛争問題が改善に向かうという考え方がもとになっています。これにはサウジやイスラエルなどの敵対国が「激怒するだろう」、その構想は実現可能性が欠如しているといった批判が出てくるだろうと、インダイク氏自身が言っています。
 
しかし、いまの中東の混乱と混沌を収拾する選択肢は非常に限られており、前述の2つの選択肢のうち「イランと米国との共同統治」(“a Joint Condominium with Iran”)の考えを盛り込んだ合併案を除外するというのなら、「それ以外の代替案にどれほどの実行可能性があるのか」とインダイク氏は主張しています。
 
そして、中東情勢は、「観客席から批評しているような、贅沢な余裕のある状況ではない」とも述べています。
 
2014年9月以降、米国とイランが接近しているという観測が出ており、核協議ではこの3月末の枠組み合意の期限を前に、イランのウラン濃縮を容認する米国をイスラエルのネタニヤフ首相が激しく非難しています。
 
その一方で、米国は欧州やスンニ派諸国主体の空爆作戦を展開するなど、中東での多国間主義政策を行っていますが、第1節で述べたように、場当たり的としか見えなかった米国の動きを、インダイク氏の将来へわたっての戦略論とビジョンに重ねると、米国の中東政策の方向性として納得がいき、理解がしやすいのです。
 
民主党オバマ政権を支えるブルッキングス研究所の副社長である、このインダイク氏の戦略は、「イランと米国との共同統治」を取り入れたこの戦略で「イスラム国」やアルカイダのほか、多くのイスラム武装組織やシリアのアサド政権などの問題を解決し、中東の混乱と混沌に新しい秩序をつくろうという戦略なのです。

要するに、中東に山積し収拾困難なこれらの問題の解決のために、イランの力を多く借りようという訳です。
 
そして、そこで大いに疑問になってくる「実現可能性」については、ほかに「実現可能性」をもった選択肢がないとインダイク氏が言うほど、中東は混乱と混沌を極めているということなのです。
 

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