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本記事と関連してくるかもしれませんが、ロシアによる、世界中でウランを買い占めようという組織的な動きが最近明らかになったそうです(4月30日 ロイター)。

コラム:原発外交でロシアが広げる「核の傘」
http://jp.reuters.com/article/jpRussia/idJPKBN0NM34R20150501?sp=true


【◆◆以下の記事は有料メルマガ3月26日号の一部です】


【目次】
【1】 ロシア各地の『突然の軍事演習』
【2】 ブレジンスキー:ロシアの「最大の目的」と経済危機

   (以下目次省略)


  【1】 ロシア各地の『突然の軍事演習』

ロシアでは、3月16日から21日の日程でロシアの広範囲に及ぶ各地で「突然の軍事演習」を行うことが発表され、そのさなかの18日にはクリミア半島に核兵器の搭載が可能な戦略爆撃機TU22M3(ツポレフ)10機が配備されると報じられました。核搭載の有無や配備の時期は不明です。

この「突然の軍事演習」は、北方艦隊を中心としたものでしたが、ロシアの国土のほとんどをカバーするもので、バルト地域、黒海とクリミア半島、極東地方、中央ロシアに及びました。

Putin Mobilizes Forces Preparing to Fight With NATO and US (3/19-2015 ジェームズタウン財団)
http://www.jamestown.org/regions/russia/single/?tx_ttnews%5Btt_news%5D=43670&tx_ttnews%5BbackPid%5D=48&cHash=334a8f347daae94f44a249570251b860#.VQuRL46sUxM

この広範囲に及ぶ「突然の軍事演習」は、海外の多くの軍事系サイトが驚きをもって伝えています。これは対ロシア制裁を協議する、19日のブリュッセルでのEU首脳会議を強く牽制したもので、その前日に、核兵器が搭載可能なツポレフをクリミアに配備とロシア通信に報道させ、広範囲に及ぶ「突然の軍事演習」をEU首脳会議の直前に行うというやり方は、何とも露骨で派手なものだと思います。

前出のジェームズタウン財団の記事によれば、ロシアのメディアはロシア国防省筋の話として、次のように伝えたと言います。

『これらの『突然の軍事演習』は、ロシアは戦争の準備ができており、バルト地域、ルーマニア、ポーランド、ブルガリアへの米国やほかのNATOの戦力の配備に、ロシアが武力で対抗できるというメッセージをNATOに送ることを目的にしている』

ロシアの各メディアは西側を牽制するために、頻繁にこのような情報戦をおこないますが、一体、プーチンはますますロシア経済が危機へと悪化するなかで、何を最大の戦略目標として考え、行動しているのでしょうか。


 【2】 ブレジンスキー:ロシアの「最大の目的」と経済危機


国家安全保障会議のパトルシェフ書記(書記局トップ)は、ブレジンスキー(カーター米大統領の国家安全保障担当補佐官)を、ロシアを弱体化させ、破壊する戦略を開始した人物として非難していますが(2014年10月のメルマガ-※注-1)、そのブレジンスキーが、プーチンの最大の戦略目標などについてスピーチをしています。

America’s Strategic Dilemma: A Revisionist Russia in a Complex World (3/18-2015 戦略国際問題研究所)
http://csis.org/publication/transcript-americas-strategic-dilemma-revisionist-russia-complex-world

私はブレジンスキーのスピーチの記録を読んで、プーチンという指導者は、ソビエト生き残りとして、いまも世界での権力闘争、とくに欧州全域での権力闘争に復讐心を燃やして、勝利に向かって行動しようとしていることを、改めて感じます。

ブレジンスキーによれば、ロシアの(プーチンの)勝利とは「体制としての決定的な勝利」(triumph for a regime)が不可欠なものとして含まれると言います。

『「その体制」は、西側諸国、とくに大西洋同盟を敵として考えることを明確に示している。もし、ロシアの激しく愛国主義的なものの<最大の目的>が達成されるならば、敵は弱体化させられ、同盟は分裂させられる。』

This is a regime which proclaims in effect that it views the Western world – and particularly the Atlantic Alliance – as an enemy. An enemy that is to be undermined, an alliance that is to be split, if the maximum objectives of that intensely chauvinistic definition of Russia are to be achieved.

つまり、そのプーチンにとっての<最大の目的>は、現存の西側諸国、大西洋同盟(米国と欧州)、NATO(軍事)体制を弱体化させ、分裂させ、これに勝利することであるとブレジンスキーは言っています。これについてはパトルシェフ書記も「欧州を米国の支配から切り離すために、大西洋を挟んだ米欧の協力関係を弱体化させる」と言っています(2014年10月のメルマガ-※注-1)。

※注-1:ロシアの戦略概観―パトルシェフ書記の見解― (2014/10/23 拙稿 )
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39089075.html

ただ、ブレジンスキーはスピーチ後半で、ウクライナ問題の解決策として、欧米諸国はロシアに向かって、ウクライナはEUに加盟しても、NATOには加盟しないということを表明し伝えるべきであると言っています。ウクライナの世論も考慮した、ロシアへのこの申し入れは試す価値があると。

私は、この方法によってウクライナはともかく、プーチンの中東欧における拡張主義的な動きが止まるとは思いません。なぜなら、「現存の西側諸国、大西洋同盟(米国と欧州)、NATO(軍事)体制を弱体化させ、分裂させ、これに勝利する」ことが、ロシアの<最大の目的>であるとブレジンスキー自身がスピーチの前半で言っているからです。

スピーチ前半では、現に「ウクライナでその目標を達成したら、次はバルト三国だろう」とも言っているのです。さらに、

『プーチンのソビエト連邦と帝政ロシアの再現という論理では、いずれはアゼルバイジャンやグルジアといったほかの国々(旧ソ連構成国)にも、その手は伸びるだろう、そうなれば当然、大西洋同盟は崩壊を引き起こす。』

And that could lead to other countries – whether Azerbaijan or Georgia – and of course it would involve the collapse of the Atlantic Alliance.

しかしそれらとは反対に、ブレジンスキーのスピーチのなかで、ロシアの経済的側面について触れた点を挙げると、ロシアが進めている経済共同体の構想では、ユーラシア連合もユーラシア経済連合も、まるでうまくいっていないという事を指摘しています。

それらの中核となるカザフスタンやベラルーシはこの構想と計画に対して消極的であり、それらの国々は強引なロシアによって半ば強要されているということです。とくに中央アジアの旧ソ連共和国の国々は、中国との関係の方がますます密接になってきているとも、ブレジンスキーは指摘しています。

ロシア主導の経済連合、原油安で困難に直面=カザフスタン大統領 (3/20-2015 ロイター)
http://jp.reuters.com/article/jpRussia/idJPKBN0MG0X020150320

ブレジンスキーは、ロシアはこれから<数年間の経済危機>になることが確実だと言っていますが、私は、経済構造改革を放棄して今のようなことを続けていれば、遠からぬうちに経済危機に陥ると思っています。

プーチンは経済成長を捨てて侵略する選択を (12/11-2014 拙稿 )
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39183999.html

株のセールスをしている朝倉慶氏が次のような指摘をしています。


『外貨準備の減少は著しく昨年の4900億ドルから今年は3600億ドルとなり3割弱減少しています。恐ろしいほどの速度での減少です。(中略)国家の破たん確率を示すCDSは480ポイントと破たん確率はおよそ25%の水準です。ロシアの先行きは暗澹としているとしかいいようがありません。』

ロシア 消費者は可処分所得の半分が食費に (3/23-2015)
http://www.asakurakei.com/newsDetail.cfm?newsID=1661



プーチンには軍略の才はあっても経済構造改革はまるで苦手なようで、経済改革をサポートする優秀なパートナーや部下がいなければ、西側諸国が解決のための時間を引き延ばしていくうちに、ロシアが自滅する可能性は高いと思います。

コラム:危険水域のロシア経済、プーチン政権の「無策」露呈 (3/20-2015 ロイター)
http://jp.reuters.com/article/jpUkraine/idJPKBN0MG0SQ20150320

ただし、プーチンにとって神風が吹く可能性があります。それは多くの専門家やブロガーが指摘するように、原油価格が上昇する時です。
原油価格を左右する中東情勢はいま混乱を極めていますが、内戦に向かって進んでいるかに見えるイエメン情勢に対して、サウジの動揺が高まっています。

そして2014年11月には、「イスラム国」の指導者アブ・バクル・アル・バグダディが、サウジアラビアへ戦線を拡大することを音声で流し表明していました。

◆◆第3節「バグダディの呼びかけとサウジアラビア」へ続く
 http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39359046.html


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