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【◆◆以下の記事は有料メルマガ4月23日号の一部です】


   【1】 イエメン情勢はどうなるのか
       ―イランの5つの戦術―

サウジアラビアは終了すると言ったイエメンでの空爆を、翌日また続行しています。
サウジ軍主導の連合軍は4月22日、隣国イエメンのシーア派武装組織フーシ派に対する空爆を<続行>しました(4月23日 ロイター)。

サウジの報道官は4月21日、記者会見し、フーシ派とサレハ前大統領支持派への空爆作戦を終了すると発表していました。

イエメン:空爆「終了」…連合軍、軍事行動継続も (4/22-2015 毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20150422k0000e030169000c.html

この空爆の終了は<一応の終了>で、フーシ派の軍事行動のいかんによっては、「必要に応じて軍事行動を再開する」とサウジの報道官は言っていました。

3月26日にサウジが連合を組んでフーシ派を空爆したのを受けて、マスコミなどが、サウジとイランの代理戦争かなどと伝えました。サウジ主導の連合軍は空爆を一応終了しましたが、「地上戦準備の構えも崩していない」(前出記事)ようです。

22日のAFP通信によれば、「連合軍はこれまでに2000回以上空爆を実施し、イエメンの制空権を確保するとともの、フーシ派のインフラを壊滅させた」と発表したそうです。

しかし、サウジが支援するハディ暫定大統領はリヤドに逃れたままで、イエメン国内は依然としてシーア派のフーシが優勢です。このような状態でサウジは自らの空爆作戦を(苦し紛れに)自画自賛して、いったんは終了すると言ったのです。

ところがこの約4週間の間、イラン軍がなかなか一向に表立って出てきませんでした。また、いまも表立って出てきません。イランによる武器の供給などの情報はありますが、ウクライナでの親ロ派武装勢力に対するロシアの非常に強い支援のようなものは、イランの行動として特段報道されませんでした。

イランにとってのイエメンは、とくに優先順位の高いものではないのでしょうか。それとも、イランはイエメンに対する戦略を持っており、すでにその戦略を実行している過程にあるのでしょうか。

米共和党系シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所に、J・マシュー・マキニスというイランの軍事問題の専門家がいます。
マキニス氏は中東の軍事問題の専門家で(イラン、イラクなど)、とくにイランの軍事問題を専門にしています。米国防総省の上席分析官(1998–2013)として、米中央軍の上席イラン分析官(2010–13)を務めた経歴をもつ人です。

マキニス氏はイエメンにおけるイランの戦略として<5つの重要な項目>を挙げています。

What does Iran really want in Yemen? (4/13-2015 アメリカン・エンタープライズ研究所)
http://www.aei.org/publication/what-does-iran-really-want-in-yemen/

その5つの重要な戦略とは次のようです。

スンニ派の連合を解体(分解)させる。
直接的な軍事的激化を避ける。
サウジの失敗を誘う(促進する)。
イランをより信頼できる大国のように演じる(表現する)。
交渉での解決を要求する。

スンニ派の連合を解体(分解)させる。

サウジを除くスンニ派連合11カ国の内、最もサウジが当てにし期待していたパキスタン、そしてトルコの2つの強軍は言葉だけの支援に終わりました。サウジは地上戦の準備もしているようですが、イランのザリフ外相は4月8日、パキスタンのアジズ首相顧問(国家安全保障・外交担当)と会談し、政治解決への賛同を求めています(4月9日 毎日)。また、イランのロウハニ大統領は4月7日、トルコのエルドアン大統領とテヘランで会談し、IS打倒で双方意見の一致をし、「中東安定のため、協力関係を深めることを確認しています(4月8日 朝日)。

とくに、パキスタンはイランから自国へ天然ガスを送るパイプラインの建設計画があります。

中国、イラン・パキスタン間のガスパイプライン建設へ (4/09-2015 ウォールストリート・ジャーナル日本語版)
http://jp.wsj.com/articles/SB11340384235203263823104580569641940772972

いわば、イランによる、パキスタンとトルコの二強への外交によって、スンニ派連合は完全に切り崩された格好になっています。

直接的な軍事的激化を避ける。
 
マキニス氏によれば、イランにはサウジと武力戦争を始める意思(欲望)はないと言います。そして、「戦争の激化は(今は後方支援をしている)米国の直接の関与をもたらし、この地域をイランに対して対立させる」だろうと言います。

サウジの失敗を誘う(促進する)。

4月21日の記者会見で報道官は、「適切な計画と正確な攻撃で目標は達成された」と述べましたが、アメリカン・エンタープライズ研究所の毎月のイラン情勢のレポート(“IranTracker”)に掲載されたマキニス氏のこの記事では、「軍事標的を支援し、民間人の犠牲者を防ぐ正確なインテリジェンスがサウジにはない」としています。
冒頭の毎日新聞(4/22)では、「空爆による被害拡大や人道支援の遅延を巡っては、国際社会からサウジへの風当たりも強まっていた」と、空爆による被害拡大に対する国際的な非難も伝えています。

マキニス氏は、「イエメンでのイランの関与の全範囲はまだ不明である」としながらも、「サウジ主導の地上作戦がなければ、イランは隠れた活動を目立たなく続け、サウジが墓穴を掘るのを望むだろう」と述べています。

イランをより信頼できる大国のように演じる(表現する)。
この説明は省略します。

交渉での解決を要求する。
5番目の戦略的観点については以下に翻訳します。


イラクとシリアですでに忙しいイランは、イエメンの崩壊はイランの優先順位からすると優位ではない。それによるサウジへのダメージがどうであろうとも。
1月の反乱軍のクーデターを受けたフーシ派への直接の賞賛がイラン政府からなかったことは注目に値する。

交渉での解決はイランの望ましい選択肢のままである。
この地域での(イエメンとは)ほかのシリアやリビアで機先を制する行動をとることの方が(訳注:ISなど)、イエメンでのフーシ派の支配よりも、イランにとってより重要かもしれない。



この点に関して言うと、中東の軍事と政治が専門のブルッキングス研究所のケニス・ポラック氏が、「イエメンの内戦が何よりもまず何であるのかを説明する時に、イエメンでのイランの役割は非常に誇張されてきた」と3月の記事で指摘しています。

Moreover, the Iranian role has been greatly exaggerated in what is first and foremost a Yemeni civil war.

The dangers of the Arab intervention in Yemen (3/26-2015 ブルッキングス研究所)
http://www.brookings.edu/blogs/markaz/posts/2015/03/26-pollack-saudi-air-strikes-yemen

前出の4月13日のマキニス氏の記事の9日後、サウジの空爆終了宣言を受けてイランのザリフ外相はこれを歓迎、「問題解決には、人道支援と政治対話が緊急に必要だとの見解を示し」、サウジの今後は政治解決を重視する姿勢を評価しました。

対イエメン軍事作戦終了を歓迎、政治解決が必要=イラン外相 (4/22-2015 ロイター)
http://jp.reuters.com/article/jp_mideast/idJPKBN0ND12420150422



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