IMFが日本のスタグフレーションに言及

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【◆◆下記の記事は有料メルマガ5月28日号「北東アジアでの中露の戦略的協力と日本の経済」の第4節です】
 
  【4】 IMFが日本のスタグフレーションに言及
 
国際通貨基金(IMF)は5月22日に対日経済審査の報告書を発表しました。
この中でIMFは今後日本が、スタグフレーションと国債の金利上昇に陥る危険性を指摘しています。
 
いまは大手を中心に企業業績も好調なところが多く、人手不足で賃金上昇の話もだいぶ聞かれるようになっていますが、IMFはこの時期、この報告書で、スタグフレーション(不況と物価の持続的な上昇の併存)という語句を二度使っています。
 
このIMFのスタグフレーションの指摘は、米金融専門チャンネルのCNBCサイトやウォール・ストリート・ジャーナルでも取り上げられました。
 
IMF urges Japan to take ‘bold action’ on reforms, debt mess (5/22-2015 CNBC)
http://www.cnbc.com/id/102702469
 
IMF Says Bank of Japan Should Stand Ready for More Easing (5/22-2015 ウォール・ストリート・ジャーナル)
http://www.wsj.com/articles/imf-says-bank-of-japan-should-stand-ready-for-more-easing-1432297116
 
IMFのこの報告書は、IMFのHPで日本語訳が掲載されているので以下に記します。
 
2015年対日4条協議終了にあたってのIMF代表団声明 (5/22-2015 IMF)
http://www.imf.org/external/japanese/np/ms/2015/052215j.pdf
 
報告書は長文になりますが、「スタグフレーション」の語句が使われている前後の部分を抜粋して以下に記します。原文を参照したい方はこちらです。
 
JAPAN: Concluding Statement of the 2015 Article IV Mission (5/22-2015 IMF)
http://www.imf.org/external/np/ms/2015/052215.htm
 




(引用開始)

 
【抜粋】 2015年対日4条協議終了にあたってのIMF代表団声明
 
2015年5月22日
 
経済見通しにかかるリスクは下振れ方向に傾いている。中国と米国の成長が予想を下回る場合、逃避先通貨としての増価などによって、内需の好転を待たずして輸出主導の回復が腰折れする可能性がある。しかし、もっとも重要なリスクは、弱い内需と不十分な政策に起因したものである。特に、第二と第三の矢が不十分な場合、スタグネーションあるいはスタグフレーションに陥る可能性もある。どちらの場合も、長期的な財政の 持続可能性をめぐる疑念が国債のリスク・プレミアムの上昇を引き起こし、金融システムと実体経済に負の影響を及ぼす更なる財政調整を急激に行わなければならなくなる可能性もある。その場合、銀行システムの収益性が一層悪化するとともに、日本国債市場や為替市場において過度の変動が生じる可能性がある。
 
(中略)
 
下振れリスクに備える
 
脆弱性や金融リスクが顕在化した場合には、政策調整が必要となろう。財政政策には 動員の余地がほぼ残っておらず、また金融政策には既に大きな負担がかかっているため、 顕在化したリスクの性質に合わせて慎重に政策を調整する必要があろう。国債の信用リスクの上昇を伴わずに成長が鈍化しインフレ率が下落する場合には、財政健全化を経済状況と調和的なものとし、追加金融緩和を行い、さらには、追加的な目に見える構造改革を行うことで対処することができよう。スタグフレーションが生じれば更なる構造改革が必要となる一方、国債の信用リスクの上昇により追加的な財政健全化の必要性が生じるかもしれない。これらすべてのケースにおいて、政策対応が信頼のおける中期的枠組みと明確なコミュニケーションに立脚していることが重要となろう。
 
(中略)
 
より大胆な構造改革と信頼のおける財政健全化がなければ、内需は低迷を続けるとみられ、追加的な金融緩和は円安に過度に依存する状態につながるだろう。
 

(引用終了)