経済戦略と国際情勢

救国済民。来るべきこの国の大量経済難民を、どう救うか

2009年09月

中国失業者の暴動増加と米中経済闘争

最初に、起きそうでなかなか起きないでいる「中国バブルの崩壊」の可能性は、考慮の内から外したうえで、以下の予測をしてみようと思う。
勿論、「中国バブルの崩壊」が起こるのは時間の問題と考えるので、以下の予測の確度は高いものになると思う。

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1990年代初期の東欧における民主化運動という大衆運動が、東欧諸国の経済政策を一変させたのと同様のことが、中国でもまた起きるだろう。

中国での失業者の暴動増加は、中国政府の経済政策を転覆する。

中国傾倒の民主党オバマ政権はさておき、「アメリカ経済指導者層」は、中国の分裂・混乱をじっと待っているという情勢ではないか。基軸通貨制度をめぐって米中の争いは、今年4月に発表された中国による「SDR構想」を皮切りに、第1ステップに入っている。今はまだ、米国債などのドル保有や輸出入の問題をめぐり、相手の弱みを握りながらの駆け引きを続けている状態ではあるが、両者の激突はこれから始まるはずだ。

>>米国が中国製タイヤにセーフガード(緊急輸入制限)の発動を決めたことに対して中国が9月14日、WTOに提訴したことで、中国メディアは米国の対応に一斉に反発しており、「対米貿易戦争も辞さない」とする強硬論も噴出。
中国共産党の機関紙人民日報系の環球時報は14日、「絶対多数の専門家が『中国は米国との貿易戦争に入る実力を持つ』と考えている」と分析。ネット調査で98%が「対米報復措置を取るべきだ」と答えた、とした。
さらに、医療保険改革で支持率が落ちたオバマ政権が労働組合の支持を取り付けることが今回の措置の背景とし、「中国はオバマの新政策の犠牲にはならない」と論評した。
ネット上では「米製品をボイコットし米国債を売ってしまえ」との過激論も出ている。
(抜粋文)

「『対米貿易戦争辞せず』 WTO提訴 中国メディア強硬論」(9月15日 東京新聞)
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2009091502000066.html

9月14日、アメリカの保護主義に対して中国が反発し、WTOに提訴したのはこれからの衝突の始まりの一端だ。
アメリカ金融が、商業用不動産のリスクで再び恐慌状態に陥っても、またそれを免れても、中国経済の悪化は、米国・欧州への輸出伸び率「減」の状態では、中国国内の深刻な失業問題の暴発を回避できないのではないか。

「中国:8月の輸出は前年比23.4%減、輸入の減少率もこの3カ月で最大−予想上回る落ち込み [ ブルームバーグ ]」(9月11日)
 http://www.asyura2.com/09/hasan64/msg/496.html

中国政府が2008年11月に発表した57兆円の大型の景気浮揚対策は、来年2010年には効力を失う。中国のみならず、米欧日をはじめとする、世界各国政府による膨大な公的資金を注入するする経済対策は、L字型長期不況下では施行期限をもって破綻するしかない。施行期限を過ぎてもさらに「無制限に」紙幣増刷をして、もし景気浮揚が実現されるのなら、経済学は「魔術」になってしまう。

統計においてデタラメを指摘される中国共産党も、GDP成長率「8%」という数字には、臨界点を設定しているらしい。

米国マクラッチー紙(9月11日付)は、GDP成長率が「8%」を割ることは中国共産党にとって、中国国内の分裂と混乱が進む「危険水域」に入ることを意味すると述べている。中国共産党が「8%」にこだわるのはこのためだ。
http://news.yahoo.com/s/mcclatchy/20090911/wl_mcclatchy/3310171_1

同紙では、中国共産党は、10年間で2桁の増加をした低賃金労働者人口の大衆の不満が、13億人に広がり国内問題の元凶となる事態を恐れていると述べている。

Communist officials in Beijing worry that the same 1.3 billion people who provided an army of low-wage workers during a decade of double-digit expansion will be a source of trouble if the government-led economy can't employ enough of them.

かつて毛沢東(1893−1976)は、中国での民衆運動は、「野火」のように広大な中国全土に広がると言った。

今年4月28日に金融アナリスト朝倉慶氏が、経営コンサルタント船井幸雄氏に送ったレポートでは、今は強そうに見える中国がいずれ弱体化するであろう事を、アメリカは確信していると述べている。4割も輸出に依存した、いまや世界で一番のリスクを持っっている中国は、失業者の増加問題とその場しのぎの57兆円の大型景気浮揚政策により、結局は破綻するとアメリカは見ている−と朝倉氏は述べている。

米中2国間の米国債や為替問題において、オバマ政権は中国が弱体化するまでは利用し続けるというのが朝倉氏の観測だ。

http://www.amazon.co.jp/%E8%B3%87%E6%9C%AC%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E5%B4%A9%E5%A3%8A%E6%9C%80%E7%B5%82%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%89%E2%80%952009~2013-%E5%A4%A7%E6%81%90%E6%85%8C%E3%81%AF%E3%81%BE%E3%81%A0%E3%81%BE%E3%81%A0%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%8C%E6%9C%AC%E7%95%AA%E3%81%A0-%E8%88%B9%E4%BA%95-%E5%B9%B8%E9%9B%84/dp/419862724X/ref=sr_1_3?ie=UTF8&s=books&qid=1252771017&sr=1-3

ブッシュ政権時の2006年2月に発行されたハドソン研究所の日高義樹氏の著作レポートでは、アメリカの中国専門家の多くやアメリカ指導者層は、「中国経済の急激な成長による社会のひずみよりも、経済開発全体が頓挫することの方が(中国国内の)分裂につながる」と考えていると述べている。(『米中石油戦争がはじまった』)

中国当局の情報統制のもと、昨年9月のリーマン・ショック以来、中国の失業者数は急増し、今年1月時点での2009年の中国の失業者は2400万人に達すると予想された。
http://www.business-i.jp/news/special-page/oxford/200901170002o.nwc

中国国内は、2006年には、すでに暴動や暴力的な抗議行動が多発しており、「社会の安定に影響する突出した問題」になっていた。
http://otd9.jbbs.livedoor.jp/911044/bbs_plain?base=252&range=1

この事態に対して、アメリカCIAは、中国国内での内部分裂とそれによって生じる混乱を分析するために、反政府地下組織の実態のリサーチを続けている。(『ブッシュのあとの世界』 日高義樹著 2007年2月刊)
中国政府は、各地で暴動が頻発している中、不満を抱く大量の失業者がさらに暴動に加わる可能性を最重視している。つまり失業者の増大が、国家政権の社会体制の動揺と崩壊をまねくことを恐れている。

一般的に漠然として捉えられている「中国国内の分裂」のカロリーは、中国での推計失業者数と推計GDP成長率で判断できる。

9月15日開幕した中国共産党の第17期中央委員会総会では、後を絶たたない党幹部の腐敗、農民・労働者らと当局による衝突の頻発、少数民族と漢族の対立も顕在化していることが大きく取り上げられた。胡錦濤指導部はこうした深刻化する社会矛盾と党の求心力の低下に危機感を強めている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090915-00000070-jij-int

先に述べたように、中国政府によって昨年11月にとられた57兆円(5850億ドル)の景気刺激策の効力は来年で終わるが、来年を待つまでもなく、この9月現在、すでに中国各地で爆弾騒ぎが発生している。

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「<騒乱>ウルムチの余波広がる、中国各地で爆弾騒ぎ=市民は戦々恐々―豪紙」(9月12日 Record China)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090912-00000002-rcdc-cn


2009年9月11日、新疆ウイグル自治区における民族紛争の余波が中国各地に広がっている。オーストラリアの華字紙・澳洲日報によると、広東省と重慶市で爆弾騒ぎが発生。「ウイグル族の襲撃」に戦々恐々としている市民らの姿が浮き彫りとなった。

広東省深セン市では、市内のスーパーから「ハミウリ(哈密瓜)に爆弾が仕掛けられたようだ」との通報があった。すぐに大勢の警察官が駆けつけ現場を捜索したが、爆弾は発見されなかった。ハミウリといえば新疆ウイグル自治区の名産。市民らが、ウイグル族がハミウリに爆弾を忍ばせたのではないかと過剰に反応したようだ。また、重慶市でも高速道路内のトンネルに爆弾を仕掛けたとの通報が。付近は9時間にわたって閉鎖され、警察官100人が調査にあたったが、こちらも結局爆弾は見つからなかった。

同区ウルムチ市では7月、広東省の玩具工場で起きた漢族従業員との乱闘事件がきっかけとなり、ウイグル族による抗議デモが発生。8月からは注射針による刺傷事件が多発し、治安悪化に不満を抱いた数万人規模の漢族住民が今月3日、抗議デモを起こしている。


(阿修羅「国家破産」9月15日の投稿から)
 http://www.asyura2.com/09/hasan64/msg/551.html


関連リンク:
住宅ローン担保証券(1兆2500億ドル)が時限爆発するとき [ “超プロ”K氏の金融講座 8月 ] (8月29日)
http://www.asyura2.com/09/hasan64/msg/349.html

新疆ウイグル政策とアフガニスタン戦争の激化 [ 付記 ウイグル政策とナチスの類似性 ] (7月26日)
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/28919113.html



DOMOTO
http://www.d5.dion.ne.jp/~y9260/hunsou.index.html
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735

▲戰肇淵狎鐐莢修回避されるアフガニスタンは、「タリバン政権復活」へと向かう

イメージ 1

(写真は、マクリスタルISAF司令官 :Born August 14, 1954)


    ベトナム戦争が回避されるアフガニスタンは、「タリバン政権復活」へと向かう

          ― 不可解なマクリスタル報告書 ―

http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/29460153.html
<上記からの続き>


    ◆ 総 括 ◆

タリバン武装勢力の掃討から、アフガン政府の治安機関の能力向上へ戦略をシフトさせれば、増派規模は継戦のそれより少なくて済むと思われるが、アフガン政府の治安機関の能力を高めれば、タリバンに勝てると本気でアメリカ軍首脳は考えているのか。このことは、戦争音痴なオバマ大統領でもわかると思う。

しかし、「アフガニスタンの国民感情がアメリカ軍を支持しなければ、決してこの戦争には勝てないという定理」に即して考え、ベトナム戦争化を避けようとするならば、マクリスタルの報告書が一つの結論にはなる。しかし、それは余りにも難度の高い方法であり、成功率2%といったところではないか。マクリスタルの報告書は、そのような机上の空論の実現に挑戦するしかほかに選択肢がないことを示しているのだろう。
「アフガニスタンの民兵は人数だけは50万人もいるが、タリバンやアルカイダとの戦争には役に立たない事は誰の目にも明らか」(日高氏)で、彼らを訓練しても武装勢力・テロリストには勝てない。

結局、「9.11」以前のタリバン政権(1996-2001)が復活する。
アフガニスタンには石油資源がないが、中央アジアからアラビア海へ石油と天然ガスを運び出すための要衝、更にイラン、パキスタン、インドという核兵器のベルト地帯の中間、その3国の天然ガスの供給で結ばれた経済圏の中間というように、アメリカにとって地政学的に重要な地域である。

オバマ大統領は、今年3月に包括的な対アフガニスタン戦略を発表し、このアフガン戦争の目標を、「パキスタンとアフガニスタンにいるアルカイダを崩壊させ、組織を解体させ、打倒すること、そして将来にわたりいずれの国にもアルカイダが戻ることを防ぐことだ」と述べた。

アメリカの外交・軍事戦略は、ダブル・スタンダードの色彩が濃厚なのが特徴だが、クリントン・ブッシュ政権時代から米石油資本によって要請されている、中央アジアからアラビア海へ石油と天然ガスを運び出すための要衝であるアフガニスタン確保という戦略を、オバマ政権は実は完全に放棄している。オバマ政権がアフガニスタンで戦争をしているのは、単にアルカイダ打倒という理由からだけだ。

オバマ政権のプレゼンスは、ブッシュ政権時と比較し中東、東欧において急激に低下しているが、中央アジア諸国における軍事的・経済的プレゼンスの低下は、特に著しい。
この事から言えるのは、オバマ政権はアフガニスタンでの戦争を、アルカイダの壊滅という単一的な目的で考えているという事だ。

また、イラン、パキスタン、インドという核兵器のベルト地帯で、ベトナム戦争を再現させるような戦争が本格的に始まる今年2,3月の時点でアメリカ軍首脳は、軍事問題に弱いオバマ政権に対して、この戦争開始の断固反対をするべきであった。アメリカ軍首脳にはそれだけのインテリジェンスがあったのだから。

先に、「近年驚くほどサラリーマン化してしまっているアメリカ軍首脳は、辞表覚悟でオバマ大統領に反対意見を進言する気概がなくなってしまっている始末だ」というワシントンでの日高氏の見方をとりあげたが、長年ワシントンで要人達との取材を重ねてきた日高氏は、ゲーツ国防長官や国防総省の文官たちにもこの責任放棄の傾向は見られるという。

マレン、マクリスタルなどアメリカ軍首脳は、実はタリバン政権復活になるのは仕方がないと考えているのではないか。またパキスタンとアフガニスタンは2国一体の包括戦略で考えるのが基本線であるから、タリバン政権の復活によってアフガニスタン国家の安定を図るのは、隣国パキスタンの混乱を避ける現時点で考えられる最良の方策だ。

アフガニスタンがベトナム戦争化すれば、タリバンはパキスタン内のタリバンやアルカイダと連携し、非対称戦の戦場をパキスタンへ拡大するだろう。現在のアフガニスタン戦争でさえ40万人の米軍兵力でも不足だと言われているのに、多くの核兵器施設のあるパキスタンへ戦場を拡大されたら、オバマ政権の外交・軍事政策は崩壊する。「小」が「大」を食うのが非対称戦だ。

このままタリバン武装勢力との戦争で、米兵を大幅に増派して戦争を継続しても、アフガニスタン戦争がベトナム戦争化すれば、アメリカは敗退してタリバン政権が復活する。

マクリスタル報告書の真意は、米兵の最低限の犠牲でアメリカ軍をアフガニスタンから撤退させ、タリバン政権を復活させることによって隣国パキスタンへの戦場の拡大を避けることではないか。

ゲーツ国防長官とマレン米統合参謀本部議長は9月3日の記者会見で、米国内の世論調査でアフガン軍事作戦への支持率が低下していることを踏まえ、「今後12―18カ月の間に形勢を逆転する必要がある」、「成果を見せるための時間は限られている」と、しらばくれたと思われる発言をしている。


関連リンク:
「パキスタンの核兵器施設へタリバンが3回の攻撃 − 8月12日 UPI通信、FOX NEWS −」    
 http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/29338246.html

参考文献:
 『オバマ外交で沈没する日本』 (2009年6月刊 日高義樹著 徳間書店)


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.戰肇淵狎鐐莢修回避されるアフガニスタンは、「タリバン政権復活」へと向かう

  ベトナム戦争が回避されるアフガニスタンは、「タリバン政権復活」へと向かう

         ― 不可解なマクリスタル報告書 ―


>>アフガニスタン駐留のマクリスタル国際治安支援部隊(ISAF)司令官(米陸軍大将)は(8月)31日オバマ政権が対テロ戦の主戦場とするアフガンについて、状況評価を盛り込んだ報告書を北大西洋条約機構(NATO)と米中央軍司令部に提出した。報告書は、「状況は深刻だが成功は可能」として、戦略の主軸を地元の部隊による治安維持に移すことを提言した。(9月1日 産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090901-00000580-san-int

>>マクリスタル司令官はガイドラインの中で、米軍や多国籍軍は「ゲスト」にすぎないとし、「駐留軍の任務は地域住民を守ることだ。戦闘の勝者を決めるのはアフガニスタン国民であり、われわれ(アフガニスタン政府と多国籍軍)は地域住民の支援に最善を尽くす。従来の考え方は捨てて、武装勢力の掃討ではなく住民の保護を重視すべきだ」と述べている。(8月28日 AFP通信)
http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2635184/4502105

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マクリスタルISAF司令官(大将)によるこの報告書は、オバマ政権に入りこの半年間で悪化の一途をたどっているアフガニスタン戦争において、アメリカ軍の方法論を180度転換したものだ。内容は非公表となっている。

8月10日付の「ウォールストリート・ジャーナル」紙の特集では、「タリバンは今や勝利しつつある」という見出しの記事で、マクリスタル司令官とのインタビューを掲載し、「アフガニスタンの現状はタリバンが優勢だ」とのコメントをセンセーショナルに引用したそうだ。

「オバマのアフガニスタン戦争はケネディのはじめたベトナム戦争に似てきた」
(8月30日 「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」)
http://www.melma.com/backnumber_45206_4593304/

アフガニスタン戦争のベトナム戦争化は、最近よく指摘されるようになっていた。ニューヨーク・タイムズ紙も「アフガンはオバマのベトナムになり得るか」(8月23日付)の記事を掲載した(ニューヨーク・タイムズのこの記事は、世論、政治レベルでの考察に終始し、アフガニスタン戦線での戦況分析とはなっていない)。
http://www.nytimes.com/2009/08/23/weekinreview/23baker.html

「アジア・タイムズ」では昨年9月の時点で、この戦争がベトナム戦争化するまでもなく、2009年1月には米軍が敗北し、タリバン政権が復活すると予測していた。
http://www.atimes.com/atimes/South_Asia/JI06Df02.html

ゲーツ長官は従来、駐留米軍の存在がアフガン国民に『占領軍』・『侵入者』と受け止められる恐れがあるとして、追加増派には慎重であった。

>>ゲーツ長官は一方で、アフガン国民の対米感情が悪化しつつあることに懸念を表明。「マクリスタル司令官がアフガン国民の保護と民間人被害の防止を重要視していることは注目に値する」と述べ、今後の改善に期待を示した。(CNN 9月4日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090904-00000000-cnn-int

武装勢力の掃討を重視するのではなく、アフガン政府の治安機関の能力を高めてアフガニスタン国内を安定させるという今回の戦略転換―。
ゲーツ長官の、アフガン市民の市民感情に非常に配慮した多くの発言と、マクリスタル司令官の報告書、そしてマレン米統合参謀本部議長らアメリカ軍首脳の、今回のアフガニスタンでの米軍の戦略の転換には、ベトナム戦争(1965−1975)での教訓が強く働いている(「戦略の転換」というには余りにも成功率が低いと思われるが)。

今年6月に出されたハドソン研究所の日高義樹氏の著書によると、アフガニスタンでの戦争がベトナム戦争化すると考えられる最大の要因は、人口の42%を占めるパシュトゥン民族が、やがて米軍やNATO軍に対してゲリラ兵となって武装蜂起することが予測されるからだと言う。旧ソビエト軍のアフガニスタン侵攻(1979−1989)では、10年間に及ぶ戦争の末、ソビエト軍は敗退を余儀なくされアフガニスタンから撤退した。日高氏によるとパシュトゥン民族は外国の軍隊の占領下に置かれることを「極端に嫌う」歴史があるそうだ。

紀元前4世紀にはアレクサンダー大王に、第1次アングロ・アフガニスタン戦争(1839−1841)でも、アフガニスタンは一度は占領されるが、国内全土でゲリラ兵と化したパシュトゥン族が中心となった大反撃がおきて、アレクサンダー大王は現地で死亡し、イギリス軍は現地から撤退する中でほとんど全滅してしまった。

オバマ政権は2009年3月27日にアフガニスタンでの米国主導の新たな包括戦略を発表したが、翌月4月にパシュトゥン族との協力を試み、あえなく失敗に終わっている。

>>パシュトゥン族の人々は、余りにも厳しい宗教の戒律を求めるタリバンとあまり仲がよくない。この点に目をつけたオバマ政権は、2009年4月に現地でパシュトゥン族の指導者・長老二十数人を集め、莫大な量の贈り物をしたうえ、兵器の提供を約束してアルカイダと戦うことを求めたが、この会議は失敗に終わっている。
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%AA%E3%83%90%E3%83%9E%E5%A4%96%E4%BA%A4%E3%81%A7%E6%B2%88%E6%B2%A1%E3%81%99%E3%82%8B%E6%97%A5%E6%9C%AC-%E6%97%A5%E9%AB%98-%E7%BE%A9%E6%A8%B9/dp/4198627525/ref=sr_1_3?ie=UTF8&s=books&qid=1251734965&sr=1-3

今回の戦略転換は、アフガニスタンの国民感情がアメリカ軍を支持しなければ、決してこの戦争には勝てないという、歴史から得た定理がもとになっている。

ベトナム戦争を開始したJ.F.ケネディは、「テロリストだけを相手に戦う。国民と戦うことはしない」と大統領就任時のオバマと全くそっくりなことを言ったが、2人の大統領のこの認識は、基本的な戦略論レベルで、敗北を決定的に意味していた。ベトナム戦争を経験した現在の軍人たちは、「テロリストだけとの戦争」など空論に過ぎない事を知っていた。

前出の日高氏の著書レポートによると、アメリカの軍部は、オバマ政権が軍事力を本格投入するアフガニスタン戦争について、当初から批判的立場を取っていた。
2009年2月8日のアフガニスタンについての米国防総省会議では、ミューレン統合参謀本部議長が、「ベトナム戦争と比較する考え方に同調する事をためらう」と述べたうえで、アフガニスタン戦争の問題が非常に難しいものである事を述べた。ペンタゴンの記者団が得ていた情報によると、「アメリカ軍の首脳は、アフガニスタンに侵攻することに『積極的に賛成しかねていた』」。

日高氏によれば、ベトナム戦争を経験しているアメリカ軍の首脳は、当初からこのアフガニスタン戦争でのアメリカ軍の勝利は不可能だと考えていたが、近年驚くほどサラリーマン化してしまっているアメリカ軍首脳は、辞表覚悟でオバマ大統領に反対意見を進言する気概がなくなってしまっている始末だと述べている。
折りしもブッシュのイラク戦争と2008年のリーマン・ショック以来、アメリカ国民は軍事・外交面で「孤立主義」を貫いている。石油資源のないアフガンの軍事作戦についての米国民の不支持率は、8月末のCNNの世論調査では過去最高の57%に達し、別の世論調査では米国民の半数以上が「戦う価値がない」とアフガン戦争を位置付けている。
また、CNNの世論調査では、

>>この作戦で勝利するだろうと考えている割合は約6割に達し、「負け戦」だと考えている米国人は少なかった。しかし、現在の状況を「勝利」と考えている割合は35%にとどまり、これまで費やした代償に見合う勝利が得られるかどうかについては懐疑的な意見が多かった。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090902-00000009-cnn-int

アメリカ陸軍は、イラク戦争開始時にも陸軍の兵力不足を理由に、開戦に反対してきたが、ネオコン勢力に押し切られた。アメリカ陸軍は、今度のアフガニスタン戦争でも開戦に対して批判的であり、イラク戦争よりも更にハードな戦争になると考えていた。

マクリスタル司令官の報告書提出を受け、今週時点で増派規模についての問題が上がってきているが、この問題についてゲーツ長官は、2009年1月の長官就任以来回答を避けてきた。
アフガニスタンでの駐留米軍は2009年末までに総兵力6万8000人規模になるが、タリバン武装勢力掃討の作戦を続けるためには、20万人規模の兵力増派ではカタがつかないといわれている。ベトナム戦争には50万人のアメリカ兵士が投入され、5万8000人が戦死したといわれるが、ゲーツが増派規模について就任以来明らかにしてこなかったのは、ベトナム戦争並みの兵力人数の公表は、世論の猛反対を受ける事を懸念するがためだろう。

<<続く>>
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/29460317.html
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張 良

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