経済戦略と国際情勢

救国済民。来るべきこの国の大量経済難民を、どう救うか

2014年09月

【後編】 中国のSDR戦略はドル・システムを衰退させるかーゴールドを含むポスト・ドル支配体制ー

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ゴールドと人民元を含むSDR通貨の案(第2節で詳述)
 黄色-ゴールド, ピンク-人民元, 黄緑-米ドル, 青-ユーロ
(●グラフ画像右下端にポインターを当てると拡大表示できます)


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【前編】中国のSDR戦略はドル・システムを衰退させるか
     ーゴールドを含むポスト・ドル支配体制ー
 http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/38975115.html

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 中国のSDR戦略はドル・システムを衰退させるか

  ーゴールドを含むポスト・ドル支配体制ー


【目次】
【1】 中国の金保有量の推定
【2】 中国のSDR戦略
【3】 BRICS主導下のSDR構想


   【2】 中国のSDR構想 

次に中国のSDR構想です。人民銀行の周小川総裁は2009年4月に、現在のSDRに中国の人民元を加えたSDR構想を発表しています。

SDRとはIMF加盟国のなかでの融資を受ける「権利」です(「特別引き出し権」:Special Drawing Rights (SDR))。このSDRは、現在は「通貨」ではなく「権利」ですが、段階的な移行を経て、最終的に「通貨」として流通させ、ドルに代わる基軸通貨にしようという動きが中国・ロシア・ブラジルなどを中心にしてあります。
現在は米ドル、ユーロ、ポンド、日本円の通貨バスケットによる算出を行い、SDRの米ドルでの価値が毎日IMFのウェブサイトから提示されています。

SDRを解説した記事を以下に3つ挙げましたが、最後の記事はわかりやすく書かれていると思います。


IMF:特別引出権(SDR)の配分
http://www.imf.org/external/np/exr/facts/jpn/sdrallj.htm

ドルに代わる通貨システムは?〜2.SDRは現代の“金預り証”か?
http://www.kanekashi.com/blog/2009/10/1061.html

SDRの値は現在4通貨での通貨バスケットによる算出を行います。その際のSDRを構成する各通貨の比率は、現在、米ドル43%、ユーロ37%、英国ポンド12%、日本円8%です。

6月11日のロイターによれば、「IMFは、SDRの構成通貨に人民元を加えるかどうか、来年2015年1月までに決定する」そうです。米国のオバマ大統領は2011年1月の米中首脳会談の共同声明において、「中期的には人民元がSDRの構成通貨になることを支持する」としています。

ゴールドの動向と国際通貨システムが専門であるダン・ポペスク氏によると、「新しい国際通貨システムの準備をするために、IMFとBIS(国際決済銀行)が後ろだてとなった、公表されていない交渉が現在も続けられているらしい」ということです(4月の方の記事)。

実際に、新しい国際通貨システムのあり方には多くのシナリオがあるそうです。そのなかには、SDRの構成通貨にゴールドを組み入れたものもあり、2つのSDRの案をポペスク氏は紹介しています。

1つは1999年にノーベル経済学賞を受賞したロバート・マンデル氏(※注-1)が2009年に提案したSDRで、現行の米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円の構成比率を少なくして、ゴールドを50%の比率で組み入れてあります(※ 冒頭円グラフ参照)。

その後マンデル氏は、2011年11月に中国で開催された「中国ゴールド・サミット・フォーラム」で次のように提唱しています。

「SDRの構成通貨である米ドルとユーロへ中国人民元を加え、この3つの通貨にゴールドを組み入れた国際金本位制を創設する」(Forex News 2011年11月14日)

(※ このマンデル教授の提唱については2011年に私のブログで扱い、レポートしてあります−下記記事参照−)

中国の金本位制へむけた準備−ノーベル経済学賞のマンデル教授が人民元を加えた金本位制を提唱 (2011/12/14 拙稿 )
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/36148686.html?type=folderlist

そしてもう一つのSDRの案は、ドバイのDIFC(ドバイ・インターナショナル・ファイナンシャル・センター)のエコノミスト達が2010年に提案したもので、現行の4通貨の比率を下げ、ゴールドを20%、中国人民元を15%、それにインドルピー、スイスフランを組み入れています(※ 冒頭円グラフ参照)。

上の2つの円グラフは、ダン・ポペスク氏による前出の“Gold and the Special Drawing Rights (SDR)”の記事のページにあるものです。

ジェームズ・リカーズ氏もダン・ポペスク氏も、将来的に中国が、このようなゴールドを組み入れたSDR通貨を、ドル基軸通貨に代わる通貨にする戦略で動いていると見ています。

また、ノーベル経済学賞を受賞したマンデル氏は、「SDRの構成通貨である米ドルとユーロへ中国人民元を加え、この3つの通貨にゴールドを組み入れた国際金本位制を創設する」と提唱したことは今述べたばかりです。

各国の中央銀行は外貨準備の一部としてゴールドを保有しています。
リカーズ氏が、「中国は新しい金本位制を創るためにゴールドを大量に買っているのではなく、人民元を魅力的にするためにゴールドを買っているのだ」と述べているのは、将来的にSDRが基軸通貨となった時に、そのSDRを構成する<準備通貨としての人民元>の価値を高め、魅力的にし、国際金融市場で優位に立とうとしていることを言っているのだと思います。


   【3】 BRICS主導下のSDR構想

さて、ここで果たしてこの3人が言ったように、中国は<IMFが>創設した現行のSDRへ人民元を組み入れることを、今現在でも本当に考えているのでしょうか。

7月15日、中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカの5カ国BRICSの首脳会議が開催され、「米国の金融覇権に挑む」(共同通信)新しい開発銀行の設立を決めました。
この新開発銀行は米国が主導する世界銀行やIMFに対抗し、それらから離れる試みとも見られています。

前述したように、2015年1月にIMFがSDRの構成通貨に人民元を加えるかどうかの決定を出すのを目前にしながら、米国主導のIMFや世界銀行に挑戦的、対抗的、そして揺さぶりともとれる行動を中国がロシアなどとともにとったのです。

これは中国が、IMFの下でのSDR構想からBRICS主導下のSDR構想へと、通貨戦略を変更させたのではないかと私は見ています。もちろん、BRICS主導下のSDR構想でも<ゴールド>が組み込まれます。

現在、財政難と資金不足から途上国の資金需要に対応できていない世銀グループに対して、BRICSの新開発銀行は加盟国を今後拡大させていくという見方もあります。

長い間、中国はIMFのSDRをドルに代わる基軸通貨にしようと主張し、交渉もしてきたようです。しかし、そもそも米国主導のIMFで、米国がドルの地位を放棄してSDRへ地位を譲り渡すというようなことを、ドル体制で法外な既得権益を手にしている米国がするでしょうか。

そのようなことはありえないと中国政府は判断し、BRICS主導下の<ゴールドを含む>SDR構想へと、通貨戦略を大きく変更させたのではないかと私は考えています。

※【ロシアとインドの金保有量】 2014年9月のワールド・ゴールド・カウンシルの統計ではロシアが世界6位で1105トン、インドが同11位で558トンです。この統計では、この数年で特にロシアの保有量が急増しています。ロシアはこれまでにSDRへ自国通貨ルーブルを入れるように主張していて、2008年のリーマン・ショック以降、大規模な金の購入も行っています。またインドは中国と同様、ゴールドの公的保有量を未発表にしていると市場から見られたことがあります。−2014.9.27記



Robert Mundell(Wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Mundell


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【前編】 中国のSDR戦略はドル・システムを衰退させるかーゴールドを含むポスト・ドル支配体制ー

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中国国内の金の産出量と香港からの純輸入量の推移
(●グラフ画像右下端にポインターを当てると拡大表示できます)


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【目次】
【1】 中国の金保有量の推定
【2】 中国のSDR戦略
【3】 BRICS主導下のSDR構想


8月14日の前号では、中国のゴールドの購入について、経済学者のジェームズ・リカーズ氏が、「中国は新しい金本位制を作るためにゴールドを買っているのではない」と主張していたところまでをお伝えしました。

■前号:
中国はなぜゴールドの保有量を増やしているのか
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/38950338.html

ベストセラー『通貨戦争』の著者でもあるリカーズ氏は、過去に「国防総省やアメリカの謀報コミュニティ、大手ヘッジファンドなどにグローバル金融について助言しており、国防総省が実施した初の金融戦争ゲームの推進役を務めた」ことがあります(邦訳著書『通貨戦争』著者略歴から)。

前号の2013年8月のフォーブスの記事と、ゴールドとSDRについて書かれた『ゴールド・ブローカー・コム』の記事を読むと次のようなことが言えます。

『中国が大量のゴールドを買っているのは、中国は将来的にSDRが基軸通貨となった時に(現在はまだ特別引き出し権という権利)、そのSDRを構成する準備通貨としての人民元の価値を高め、世界的に魅力的にすることを目標としているからである。』

Rumors Of A Chinese Gold Standard Are Overblown: CPM's Christian And Author Jim Rickards (2013-8/12 Forbs)
http://www.forbes.com/sites/kitconews/2013/08/12/rumors-of-a-chinese-gold-standard-are-overblown-cpms-christian-and-author-jim-rickards/

Gold and the Special Drawing Rights (SDR) (4/02-2014 GoldBroker.com)
https://www.goldbroker.com/en/news/gold-special-drawing-rights-sdr-458

『ゴールド・ブローカー・コム』のゴールドに関する動向の記事は、米国の金融投資サイト『ValueWalk』でも時々転載されています。


    【1】中国の金保有量の推定

この知見について、まず、中国の公的な金準備は2009年の1054トン以来数字が変わっていないではないかという疑問が出てくると思いますが、これについては前号でも触れました。中国政府は金保有量についてIMFへの届け出を未発表にしているようです。この指摘は、中国の公的金保有量を論じる専門家の英文記事に散見されます。

リカーズ氏は中国の公的金保有量の発表の更新は6年ごとに行われていると言い(2009年の前が2003年)、現在の推定量を4000トンから5000トンとしています。

先に紹介した“Gold and the Special Drawing Rights (SDR)”の記事の執筆者であるダン・ポペスク氏も推計で約4000トンと見込んでいます。ダン・ポペスク氏はゴールド市場と国際通貨システムの専門家で、約4000トンの算定根拠として中国国内の金の産出量と香港からの純輸入量の推移などから推計しています(冒頭グラフ参照)。

この保有量は2009年のおおよそ4倍に当たるもので、中国政府が、いま行われている経済構造改革の裏で、ゴールドの積み増しを急加速させてきたことを示唆しています。

ダン・ポペスク氏:China’s Role in the Gold Market (6/10-2014 GoldBroker.com)
https://www.goldbroker.com/en/news/china-role-gold-market-514

参考値としてワールド・ゴールド・カウンシルの7月の統計で見ると、中国は世界第7位で1054トンですが、推定量の4000トンから5000トンで見ると第2位になります。ワールド・ゴールド・カウンシルの統計がどこまで信頼できるかわかりませんが、これは米国の8133トンに次ぐ量になります。

世界各国の公的金保有量の比較については、ワールド・ゴールド・カウンシルが毎月データを更新しています。本稿ではとくに中国以外では、米国、ロシア、ユーロ圏などの保有量に注目しています。
http://www.gold.org/research/latest-world-official-gold-reserves



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【後編】 中国はなぜゴールドの保有量を増やしているのか

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            ジェームズ・リカーズ


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【前編】中国はなぜゴールドの保有量を増やしているのか
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/38950338.html

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   中国はなぜゴールドの保有量を増やしているのか


【目次】
【1】 金本位制と米国のメディア
【2】 中国:世界最大の民間ゴールド市場と公的金保有量
【3】 中国人民元の通貨戦略とは


    【3】 中国人民元の通貨戦略とは

さて、中国は、人民元をどのようにして国際的な準備通貨にしようとしているのでしょうか。
ネットでよく見かける現在のドル体制の衰退に乗じて人民元が覇権を狙うなどという意見は、現状の中国の金融改革の困難さや為替政策の現状を無視した単純な見方だと思います。

中国について、ニューヨークタイムズでは共和党議員のクウォーテング氏が中国の金本位制の採用を警戒し、ハートランド研究所のフェラーラ氏は、中国かロシアが金本位制を復活させる前に、米国が復活させよと主張します。

昨年の「フォーブス」によれば、2013年の7月から8月にかけて、いくつかのブログやニュースで、―中国政府と人民銀行が「新しいブレトン・ウッズ金本位制」を創る計画へ向けて、ゴールドを静かに買っている―という風説が強調されていたそうです。

このフォーブスの記事では、クウォーテング氏やフェラーラ氏の中国への警戒論に対して、『通貨戦争』のベストセラーで知られる経済学者のジェームズ・リカーズ氏が、「中国は新しい金本位制を作るためにゴールドを買っているのではない」と主張していることを述べています。

リカーズ氏は、中国は人民元をSDRの構成通貨となることを目指して、人民元をより魅力的にする政策をとっていると言っているそうです。2014年3月、人民元改革で、人民銀行が人民元の対ドル相場の変動幅を上下2%に拡大すると発表しましたが、大局的に見ると中国は人民元をSDRの構成通貨にすることを目標にしているというわけです。

(※ SDR:IMFの特別引き出し権。現在は米ドル、ユーロ、ポンド、日本円の通貨バスケットによる算出を行い、SDRの米ドルでの価値が毎日IMFから提示されています。中国・ロシア・ブラジルなどがドルに代わる基軸通貨の候補に挙げています。※注-2)


… rather it is aiming to make the Yuan more attractive, with the end result of being included in a basket of currencies, referred to as the Special Drawing Rate (SDR).

Rumors Of A Chinese Gold Standard Are Overblown: CPM's Christian And Author Jim Rickards (2013-8/12 フォーブス)
http://www.forbes.com/sites/kitconews/2013/08/12/rumors-of-a-chinese-gold-standard-are-overblown-cpms-christian-and-author-jim-rickards/



■注-2:特別引出権 (SDR) 
 http://www.imf.org/external/np/exr/facts/jpn/sdrj.htm ( IMF )

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執筆予定 2019.8.20 記
『国際情勢の英文サイトを 本業の片手間に読むテクニック』

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