経済戦略と国際情勢

救国済民。来るべきこの国の大量経済難民を、どう救うか

2014年11月

プーチンは停戦を遵守するかー「ノヴォロシア」の復興ー

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■ 薄紅色に着色されている地域がウクライナ国内の「ノヴォロシア」と呼ばれている地域。


※ 10月9日の記事の第2節『プーチンは停戦を遵守するか』の記事の一部に、上の地図を添えてみました。参考になればと思います。

ロシア極東での大軍事演習―米国を想定した軍事演習「ボストーク2014」―
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39065595.html


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ウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力の戦闘は、米国とロシアの代理戦争です。
プーチンはこの先、どのように動くのでしょうか。

戦略国際問題研究所のアンドリュー・クチンス氏ら(ロシアが専門)は、それが不透明であるとした上で、次のように述べています。


(抄訳開始)
ロシア政府はこの紛争で、ドネツク州とルガンスク州の特定地域に付与された「特別の地位」以上のものを目的にしている。ロシアはウクライナがNATOメンバーにならないという保証がほしい。

ロシアのより大きなプロジェクトは、「ノヴォロシア」と呼ばれる帝政時代の領土を再現することだ(※訳注-ノヴォロシア:18世紀末にロシア帝国が征服した黒海北岸部地域を差す地域名)。

「ノヴォロシア」にはドネツク州とルガンスク州ばかりでなく、ロシアが占領したクリミアやウクライナ南部や東部のほかの地域、係争中のモルドバ共和国のドニエストル地域などが含まれる。

プーチンは数多くの場で「ノヴォロシア」の復興をほのめかしてきた。「ノヴォロシア」の復興はまだ中途半端である。

プーチンは、国民に国家主義的な感情をかき立て、ウクライナへの介入の国内支持を集めるために「ノヴォロシア」のビジョン(構想)を使ってきたので、簡単には「ノヴォロシア」プロジェクトを降ろすことはできないだろう。

とくに、もしウクライナが欧州との統合をより深める方向へ進むとしたら、それはより難しくなる。
(抄訳終了)




■ 地図参照(※ 冒頭):「ノヴォロシア」と呼ばれる地域(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%B4%E3%82%A9%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2

9月25日、ウクライナのポロシェンコ大統領は記者会見で、「親ロシア派武装勢力との衝突は『最も危険な』山場を越えたという認識を示し、2020年に欧州連合(EU)へ加盟申請する」意欲を示しました。

ウクライナ大統領、2020年までのEU加盟申請に意欲 (9/26-2014 AFP)
http://www.afpbb.com/articles/-/3027086

クチンス氏が指摘するように、EU加盟もプーチンが最も嫌がることであり、これは「ノヴォロシア」のプロジェクトや扇動に火をつけることになります。  
        (了)


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ロシアの戦略概観―パトルシェフ書記の見解―

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国家安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記(書記局トップ)。国家安全保障会議はロシア大統領の直属機関。



◆◆以下の記事は有料メルマガ10月23日号の一部を修正したものです。

欧米の経済制裁がロシア国民に与えている心理的影響や、世論調査の結果などまで書くことができませんでしたが、それらは他稿で補足していくつもりです。
ルーブルとロシア株価が急落しているから、プーチン政権の求心力が下がっているなどということは、10月下旬時点ではほとんどないようです。




     ロシアの戦略概観

      ―パトルシェフ書記の見解―

      ―ロシアはどこへ向かって進もうとしているのか―


【目次】
【1】 ロシアの戦略概観
    ―安全保障会議書記の見解―
【2】 ロシアのアキレス腱(私見)


    【1】 ロシアの戦略概観
        ―安全保障会議書記の見解―

ウクライナ東部のドネツクでは、ウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力の戦闘によりここ数週間で数十人の民間人が死亡しているそうです。10月21日、負傷者の治療に当たっている医師らは、政府軍がクラスター爆弾を使用していると証言しました(10月22日 AFP)。

ドネツクの医師ら、ウクライナ軍がクラスター爆弾を使用と証言 (10/22-2014 AFP)
http://www.afpbb.com/articles/-/3029542

有料メルマガ9月11日号以降お伝えしているように、ロシアのプーチンとロシア政府は、世界スケールで反米秩序の構築や西側諸国への対抗策を進めています。これらは私たち欧米など西側諸国から見ることのできる概観です。

しかし、ロシア政府(クレムリン)はいったい、いまの情勢をどのように考え、どのような戦略観をもって、どこへ向かって進もうとしているのでしょうか。

これらについて説明してくれている記事が、ジェームズタウン財団のHPにありました。それはパベル・フェルゲンハウアー氏による記事です。この人はロシア極東での大軍事演習「ボストーク2014」についての解説記事を書いた人で、それは有料メルマガの前号で取り上げました。この人はロシアの軍事・外交に詳しい人です。

Preparing for War Against the US on All Fronts—A Net Assessment of Russia’s Defense and Foreign Policy Since the Start of 2014
(10/16-2014 ジェームズタウン財団)
http://www.jamestown.org/regions/russia/single/?tx_ttnews%5Btt_news%5D=42962&tx_ttnews%5BbackPid%5D=653&cHash=f45956f6e83db53aebfcbd29c406b25f#.VENN7PmsUxM

プーチン大統領、メドベージェフ首相、そして国家安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記(書記局トップ)の3人は、いずれも10月15日にマスコミのインタビューで、ウクライナ危機後の、ロシア政府の<世界戦略の構想>の概要を述べています。以下はフェルゲンハウアー氏によるそれらについての解説の一部を抄訳したものです。

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(抄訳開始)
ロシア政府の見解は不快なものである。ロシア政府はいま、西側諸国との新しい冷戦が形成されつつあると見ている。ロシアは現在、西側諸国からの攻撃を受けていると考えており(訳注:経済制裁など)、ロシア政府はその反撃のために核兵器オプションを含む、自在に使えるすべての手段を使うつもりである。

The view from Moscow is uninviting—A new cold war with the West is in the making; Russia is under attack and will use all means at its disposal to resist, including the nuclear option.

プーチンは米国を非難したが、それは米国が首都キエフで過激な国家主義者を支援することによって、意図的にウクライナ危機を引き起こし、内戦へと火をつけたからだ―とプーチンは非難している。

ロシア軍は再武装し、大規模軍事演習を実施し、起こりうる世界規模の戦争にも準備している。

The Russian military is also rearming and conducting massive exercises, preparing for a possible global war.

モスクワの政界、軍、諜報機関の大多数の一致した見解は、米国との関係は修復不可能であり、メドヴェージェフ首相の言葉を引用すれば、「米ロ関係にはどのような新しい『リセット』の可能性もない」というのが一致した考えだ。

クレムリンは、米国との本物のデタント(緊張緩和)の可能性は、早くても2020年まではないと考えるようになっている。
(抄訳終了)
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この記事では、このあと紹介する国家安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記の意見や説明を、ロシア政府の公式な政策意見のように思われると述べています。国家安全保障会議はロシア大統領の直属機関であり、ロシア大統領府の構成下に入るからです。

パトルシェフ書記へのインタビューを載せた公式な政府機関紙の記事には、『第二次冷戦』(“Second Cold War”)と題名が付けられていますが、パトルシェフ書記の米国に対する考え方は次のようです。


米国は今日も、ロシアを世界の中心から排斥し、破壊するような戦略的意図(計画)を実行している。これは1970年代にズビグネフ・ブレジンスキー(カーター米大統領の国家安全保障担当補佐官)により開始された戦略である。

ソ連崩壊後、それまで支配していた旧共和国で、米国はロシアからいかなる影響力をも奪い、ロシア政府をそれらの旧共和国から完全に孤立させようとしてきた。その数十年に及ぶ計画は非難すべきもので、米国は永遠の敵である。


      ◆    ◆

パトルシェフ書記はインタビューの中で、ロシアの戦略立案者たちが、「ますます天然資源(石油、ガス、食糧、水)が貴重になっていく『分割された多極化世界』のなかで、ロシアは資源の貧しい欧州を支配できるだろう」と考えていると述べています(10月9日)。

この天然ガスと石油による支配の考え方は、すでにユーラシア大陸のあちこちで明らかになりつつあるように、欧州以外でも中国、インド、北朝鮮、日本、韓国、パキスタンなどアジア圏で、ロシアの戦略の基本的ラインとなっています。

『プーチンのアジア-太平洋への「旋回」はロシアの壮大な戦略の一環であり、その大戦略は、ロシアをユーラシア大陸(アジア+欧州)での強大なパワー(支配力)にするための、経済と軍事戦略の領域から構成される』

これは中国人の研究者などとのパイプを持つ、ヴィッテンベルク大学(オハイオ州)のユー・ビン教授が、2013年1月に戦略国際問題研究所のレポートで指摘したことですが、このことは6月のメルマガでお知らせしました。

Tales of Different “Pivots” (2013-1/14 戦略国際問題研究所 )
http://csis.org/publication/comparative-connections-v14-n3-china-russia

パトルシェフ書記は、ロシアの外交世界戦略として次のような主張をします。

『欧州を米国の支配から切り離すために、大西洋を挟んだ米欧の協力関係を弱体化させながら、欧州以外の中国のような新興国の国々(“emerging powers”)と同盟を次々と結んでいかなければいけない。』

As Patrushev argues, Russia, in turn, must build alliances with non-European emerging powers like China, while working to undermine the Transatlantic link to liberate Europeans from US domination.

ここで興味深いのは、ロシアは欧州と米国の分離を狙っており、欧州を支配・統合しようとしているのですが、そのためのプロセスでの選択肢としてNATOに対する核兵器の使用も考え、かつ準備も進めている事です。


    【2】 ロシアのアキレス腱 (私見)  

米国のオバマ政権は、11月の米中間選挙の選挙対策として「イスラム国」に大掛かりな空爆を行ったようです。「イスラム国」対策では、敵対しているはずのロシアやイランと協力関係を模索しており、外交的にも軍事的にも「戦略」に全体としての統一性がなくバラバラとなっている状態です。

これでは米国の持っている軍事的抑止力の効果は減殺されてしまうばかりです。しかも「イスラム国」の封じ込めに何の成果も上がっていません。

米国の外交政策が複雑化しているなどという説明をする人がいますが、私には米国の外交政策は「8の字」に蛇行飛行するダッチロール状態にしか見えません。

9月9日に日本で講演した元国防次官補のジム・ウェッブ氏が、オバマ政権の国家戦略について「今の米国は構造的な戦略がない。その場、その場での場当たり的な対応をしている」と言ったそうです。まさにその通りだと思います。

ジェームズタウン財団のフェルゲンハウアー氏の記事、そしてその中に書かれている国家安全保障会議のパトルシェフ書記の考え方、それらを読むとロシアの国家戦略には大きなアキレス腱があることが見えてきます。

それは今まで欧州に相互依存していたものを、いまロシアは中国に大きく依存しているという事です。ロシアの戦略のアキレス腱は中国です。つまりロシアの動きを封じ込めることができるのは米中関係次第であり、それには中国とロシアを切り離すという難易度の高い戦略が必要であるということです。

それなのにオバマ政権は今述べたようなあり様です。
次の米国の大統領選挙に果たして期待ができるのかわかりませんが、まだあと2年もあり、国際情勢は悪化すると思います。


■ 関連リンク

ロシアの核兵器戦力の準備とウクライナ―NATOを背後に― (9/11-2014 拙稿 )
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39024587.html

ロシア・中ロ関係・中央アジア (拙稿集)
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/folder/1119307.html

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ロシア極東での大軍事演習―米国を想定した軍事演習「ボストーク2014」―

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【◆◆以下の記事は、有料メルマガ10月9日号の一部を修正したものです】

    ロシア極東での大軍事演習と日本をとり巻く情勢

     ―アメリカを想定した軍事演習「ボストーク2014」―


【目次】
【序】 アベノミクスの岐路
【1】 ロシア極東での大軍事演習
    ―米国を想定―
【2】 プーチンは停戦を遵守するか
【3】 米国とロシアと中国のはざまで


    【序】 アベノミクスの岐路

今後の円安の進み具合がマスコミで心配されています。
日米の金融政策の違いを利用して円売りで大儲けをしようという動きは2013年に海外ヘッジファンドの間で何度もありました。今回は米国の利上げに現実味が非常に出てきたことから急テンポで円売り圧力が高まってきました。

このように心配される円売りの動きは充分に予想できたことで、アベノミクスに批判的な人達のなかでは、ほぼ共通した見方であったと思います。

今夏は外交・軍事系の米国誌サイト『ナショナル・インタレスト』や『ディプロマット』でも日本の財政と経済の悪化を取り上げていました。

「アベノミクスが岐路に立っている」このいま、今回の記事の<第3節>では極東アジアの中の日本の置かれた状況を、ロシア、米国、中国との関係から見てみました。


    【1】 ロシア極東での大軍事演習

ロシア軍は9月19〜25日の間、ロシア極東で今年最大規模の軍事演習「ボストーク2014」を実施しました。
「ロシアは最近、軍事演習を活発に行っている。極東では、北方領土と千島列島で8月中旬、千人以上が参加した演習を実施」(9月19日 朝日)。

このニュースはプーチン大統領の今秋の来日が取り沙汰されている最中であったので、北方領土を抱える私たちのなかにはロシアの目的について疑問を抱いた人も多かったのではないでしょうか。

「北極圏から極東ロシア沿岸地域に至る広大な地域」でのこの演習の詳細は、下記の防衛省のホームページにまとめられています。地理的な図や兵器の全容が参考になると思います。

大規模演習「ヴォストーク2014」について (防衛省)
http://www.mod.go.jp/j/approach/surround/pdf/rus_ex_boctok2014.pdf

この防衛省の資料では実施内容についての記載は詳細なのですが、この大規模演習の狙いや目的については書かれていません。強いてあげれば、「2014年に実施されてきた一連の演習・訓練の総決算的な位置づけ」とあるだけです。

この「今年最大規模の」ロシアの軍事演習については海外シンクタンクや軍事メディアが注目しています。

ジェームズタウン財団のパベル・フェルゲンハウアー氏は、「ボストーク2014」はもっぱら米国との戦争のために準備した軍事演習であったということです(「ほぼ間違いなく」と同氏は言っています)。

“Arguably, Vostok 2014 was exclusively a preparation for war with the US.”


高緯度地域にあるロシアに米国が攻撃をかける場合、ロシアの極東地域がその広い玄関口となるため、アナドゥイリ(アラスカ対岸)からカムチャッカ地方、サハリン州、ウラジオストクまでの沿岸と、東部軍管区内の地上・海上・空中の演習場20カ所以上が演習実施地域となるのです。

朝日新聞はこの軍事演習を「今年最大規模」としましたが、ロシアのショイグ国防相は、「ロシアの歴史の中で最も大きな軍事演習、冷戦時代の間のどの軍事演習よりも大規模である」と言ったそうです(ジェームズタウン財団前出記事)。

フェルゲンハウアー氏の記事によれば、「ボストーク2014」の作戦シナリオでは、千島列島をめぐる北方領土紛争のケースも想定し、日本の同盟軍であるアメリカ軍の攻撃と介入に備えています(報道によれば)。

この演習でロシア軍は、米国の空軍、海軍、そして北極からウラジオストックまでの沿岸からのアメリカ軍の上陸を想定しています。

9月17日に「ロシアの長距離爆撃機2機を含む軍用機6機がアラスカ付近の米国の防空識別圏(ADIZ)に入り、米国のF22戦闘機が発進していた」ことが明らかになり(9月20日の報道)、「18日にはロシアの長距離爆撃機2機がカナダの防空識別圏に入った」ことが北米航空宇宙防衛司令部から発表されています(軍用機は特に問題を起こすことなく同空域を出ています)。

ロシア軍機6機、米防空識別圏に入る カナダにも2機 (9/20-2014 AFP)
http://www.afpbb.com/articles/-/3026515

AFPの記事では、この事件と「ボストーク2014」(9月19〜25日)との関係は不明としていますが、先ほど述べたように、フェルゲンハウアー氏は「ボストーク2014」はもっぱら米国との戦争のために準備した軍事演習であったと指摘しています。


    【2】 プーチンは停戦を遵守するか

「ボストーク2014」軍事演習の2週間ほど前、親ロシア派は9月5日にウクライナ政府と停戦に合意しています(この停戦は一時的なものでしょう)。

そして10月に入り、戦略上の要衝であるドネツクでは政府軍と親ロシア派の間で激しい砲撃戦などが起こり、「今後、戦闘が再び激化するのではないかという懸念が出ています」。

ウクライナ 停戦が事実上破綻 戦闘激化懸念 (10/03-2014 NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141003/k10015082121000.html

ウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力の戦闘は、米国とロシアの代理戦争です。
プーチンはこの先、どのように動くのでしょうか。

戦略国際問題研究所のアンドリュー・クチンス氏ら(ロシアが専門)は、それが不透明であるとした上で、次のように述べています。


(抄訳開始)
ロシア政府はこの紛争で、ドネツク州とルガンスク州の特定地域に付与された「特別の地位」以上のものを目的にしている。ロシアはウクライナがNATOメンバーにならないという保証がほしい。

ロシアのより大きなプロジェクトは、「ノヴォロシア」と呼ばれる帝政時代の領土を再現することだ(※訳注-ノヴォロシア:18世紀末にロシア帝国が征服した黒海北岸部地域を差す地域名)。

「ノヴォロシア」にはドネツク州とルガンスク州ばかりでなく、ロシアが占領したクリミアやウクライナ南部や東部のほかの地域、係争中のモルドバ共和国のドニエストル地域などが含まれる。

プーチンは数多くの場で「ノヴォロシア」の復興をほのめかしてきた。「ノヴォロシア」の復興はまだ中途半端である。

プーチンは、国民に国家主義的な感情をかき立て、ウクライナへの介入の国内支持を集めるために「ノヴォロシア」のビジョン(構想)を使ってきたので、簡単には「ノヴォロシア」プロジェクトを降ろすことはできないだろう。

とくに、もしウクライナが欧州との統合をより深める方向へ進むとしたら、それはより難しくなる。
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ウクライナ大統領、2020年までのEU加盟申請に意欲 (9/26-2014 AFP)
http://www.afpbb.com/articles/-/3027086

クチンス氏が指摘するように、EU加盟もプーチンが最も嫌がることであり、これは「ノヴォロシア」のプロジェクトや扇動に火をつけることになります。


    【3】 米国とロシアと中国のはざまで

ここからは視点を極東アジアへ転じて、日本の置かれた状況をロシアを中心にして、米国と中国との関係からも見てみます。

米国の軍事サイト『スターズ&ストライプ』は、オバマ政権の外交・軍事政策にも関与するシンクタンクである新アメリカ安全保障センター(CNAS)のHPにも時々掲載されるウェブサイトです。

その『スターズ&ストライプ』に、最近のロシア軍の日本周辺での活動の活発化について考察した記事がありました。

Russia's Pacific activity: A show of force or something more? (9/09-2014 Stars and Stripes)
http://www.stripes.com/news/russia-s-pacific-activity-a-show-of-force-or-something-more-1.301797

この記事は最初に、今年4〜7月の間の、ロシア軍用機の200回以上の日本領空への異常接近と、8月中旬に千島列島で千人以上が参加したロシアの軍事演習を問題にするところから始まります。

この中で、慶応大学の神保謙准教授がこう言っています(神保氏はキヤノングローバル戦略研究所主任研究員、東京財団上席研究員などを兼職)。

『頻繁なロシア軍機へのスクランブル発進の必要性が高まると、自衛隊の戦略的シフトが非常に困難になる。
中国がロシアのこの動きを大いに歓迎することは間違いがない。なぜなら、この動きは日本の焦点を確実に北へ向かわせるからだ。』

そして、ランド研究所の東アジア情勢の専門家スコット・ハロルド氏は、この記事の中で次のように言っています。

『ロシアの頻繁な領空接近はアメリカの利益にもなる。なぜならロシアの頻繁な領空接近は日本とロシアの関係を必ず緊張させ、日本政府をアメリカの国益に合致する方向で緊密に米国の方へ動かすからである。』

The flights also benefit the U.S., Harold said, because they are sure to strain relations between Japan and Russia and move Tokyo closer in line with U.S. interests.

集団的自衛権の容認については、アーミテージ・レポートや安保法制懇の報告書を見ても<ロシアの脅威>については書かれていません。その多くが基本的に中国と北朝鮮を想定して構想が作られています。

日本に対するロシアの脅威は、中国との関わりのなかで下記の私の記事にまとめてあります。

北海道を狙うプーチンと中ロの秘密同盟 (7/28-2014 拙稿 )
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/38890251.html

「ボストーク2014」の大軍事演習では、ロシアは米国を相手に派手で大掛かりな演習で米国を威嚇しました。ロシアは中国同様、核兵器超大国です。このようなプーチンの流儀を前に、米国は果たして日本を守ってくれるでしょうか。


      (了)

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執筆予定 2019.8.20 記
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