経済戦略と国際情勢

救国済民。来るべきこの国の大量経済難民を、どう救うか

2014年12月

サウジの核武装と米シェール潰し

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サウジは2014年4月に行った軍事パレードで、核兵器搭載可能な中距離弾道ミサイルDF-3(中国製)を誇示した。



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    【1】 サウジの核武装と米シェール潰し


まず、以下は2013年11月の報道です。


 英BBC放送の報道番組「ニューズナイト」は(11月)8日までに、サウジアラビアがイランの核武装に備え、パキスタンから核兵器を入手する準備を進め、いつでも輸入できる状態にあると伝えた。

サウジ、パキスタン両政府は報道を否定しているが、現実となれば中東の軍事バランスを根底から揺るがす恐れがある。番組によると、北大西洋条約機構(NATO)幹部が情報機関の報告の存在を確認。

イスラエルの元軍情報責任者は「サウジは核爆弾の代金を支払い済みで、(必要になれば)1カ月もかからないだろう」と指摘した。(ロンドン、イスラマバード 共同)

「サウジ、パキスタンから核入手準備」(11/09-2013 共同通信)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/131109/mds13110914180005-n1.htm



これから1年後の今月11月24日、米英仏独中露の6か国とイランは、イラン核問題の包括解決を目指す交渉で最終合意を断念し、交渉を来年7月1日まで再延長することを決めました。包括解決への協議は今年2月から始まり、7月の期限が延長され、今回は再延長になります。

ワシントン中東政策研究所のサイモン・ヘンダーソン氏らによれば、この交渉の結果次第では、湾岸諸国とヨルダンで動いている核計画を加速させるだろう(may accelerate = 約50%)と警告しています。

Regional Nuclear Plans in the Aftermath of an Iran Deal (11/21-2014 ワシントン中東政策研究所)
http://www.washingtoninstitute.org/policy-analysis/view/regional-nuclear-plans-in-the-aftermath-of-an-iran-deal

ワシントン中東政策研究所は、米国の中東政策に影響を与えている(とくに保守派の中東政策に)と言われます。サイモン・ヘンダーソン氏は、以前から多くの貴重な論文があり著名な研究者です。

サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、カタール、ヨルダンなどは、原子力発電所の新設計画を進めており、特にサウジアラビアは導入に野心的だと言われています。

この中でもサウジアラビアは、明らかに原子力発電の核兵器への転用を目標にしています。

サイモン・ヘンダーソン氏らによれば、湾岸諸国の指導者たちが、イラン外交をどのように見ているのかを示す最も明確なシグナルの一つは、サウジが今年4月に行った軍事パレードで、核兵器搭載可能なミサイルを誇示したことでした。

One of the clearest signals of how Gulf leaders view Iran diplomacy was Saudi Arabia's decision to show off two of its nuclear-capable missiles at a military parade in April.

ヘンダーソン氏の今年4月29日の記事によれば、この2基の中国製のミサイルDF-3は、イランへの外交的シグナルであると同時に、おそらく米国へのシグナルでもあると言います。DF-3は核弾頭が搭載可能な中距離弾道ミサイルです。

Saudi Arabia's Missile Messaging (『サウジのミサイル・メッセージ』 4/29-2014 ワシントン中東政策研究所)
http://www.washingtoninstitute.org/policy-analysis/view/saudi-arabias-missile-messaging

これらのDF-3は1987年にサウジアラビアが中国から購入したものでしたが、リヤドの南方に保管されていました。

この軍事パレードの来賓にはパキスタンのシャリフ陸軍参謀長の姿がありました。昨年11月の報道で、サウジが契約した核兵器の入手先と見られる国の要人です。

『サウジのミサイル・メッセージ』と題したこの記事の中でヘンダーソン氏は、湾岸諸国にはイランがこのまま核兵器保有国になってしまうという懸念が支配的だと述べます。

ヘンダーソン氏はこの4月末の時点で、サウジによる核搭載可能なミサイルの誇示は、イランの増大する脅威への対抗の決意であるばかりでなく、<米国の意思に関係なく、独立して行動する準備ができている>ことを示すと指摘しています。

Amid the Persian Gulf's prevailing diplomatic atmosphere -- dominated by concern that ongoing international negotiations will leave Iran as a threshold nuclear weapon state -- the missile display signals Saudi Arabia's determination to counter Tehran's growing strength, as well as its readiness to act independently of the United States.


原油価格(WTI)が6月中旬から急落を始めています。

これはサウジアラビアが米国のシェールオイルに価格競争を挑み、シェール潰しの挙に出ているからだと推測する人が多いようです。これに対しては異論もあるようですが、サウジが自身を守ってもらわなければならないイラン核問題を抱えながら、米国と石油でケンカを始めた強気は、まさに核武装を具体的に決断し、準備を始めているところから出てきているのではないでしょうか。

コラム:サウジの価格戦略は米シェール革命を阻むか (11/13-2014 ロイター)
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKCN0IX0I220141113?rpc=188&sp=true

今年3月2日、ロシア軍はクリミア半島を掌握しました。
米ハドソン研究所の首席研究員である日高義樹氏は、この侵略を次のように説明しています。

「オバマ大統領は、1994年のブダペスト条約に基づいてウクライナの安全を保障するという覚書による約束を破った」(※注-1)

「約束を破った」とは、米国が軍事介入しなかったことを指します。
ハドソン研究所の学者によると、サウジはこの「ウクライナ攻撃に強い衝撃を受けた」そうです。

11月26日の産経によれば、ニューヨーク・タイムズ紙に「米・サウジとロシア・イランの間で石油戦争が起きているのではないか」という記事が掲載されたそうです。
しかし、<米国が安全保障の約束を破るのを見たサウジが>、巨大な損失覚悟で米国と組んで、ロシア・イランとの石油価格戦争などというオメデタイことをするでしょうか。

繰り返しますが、サウジをはじめ湾岸諸国には、イランがこのまま核兵器保有国になってしまうという懸念が支配的だと言います。

共同通信によれば、「米情報機関によると、イランは現在も、その気になればわずか2カ月で核兵器1個分の高濃縮ウランを製造できる」そうです。

※注-1:『「オバマの嘘」を知らない日本人』 (日高義樹著 2014.7.4刊 PHP研究所)



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米国 イランとのテロ戦争での協力は危険

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            イランの革命防衛隊


【◆◆以下の記事は有料メルマガ11月27日号の一部で、それに加筆したものです】


   【2】 米国 イランとのテロ戦争での協力は危険

イランは米国にとって長い間、宿敵でした。ところがいま、米国は、「イスラム国が拠点とするシリアのアサド政権の後ろ盾であるイランから一定の協力を引き出す」ことを模索しています(9月23日 共同通信)。

11月24日に再延長された7カ国によるイラン核問題の交渉では、「イラン側がイスラム国対応を絡ませて、譲歩を引き出そうとする」のではという観測がありました。現に9月21日、複数のイラン政府当局者がそのような交換条件を求める発言をしたとロイター通信は伝えています。

また共同通信は次のような説明をしています。


オバマ政権は、シリア領内への空爆拡大は「アサド政権ではなく、イスラム国との戦いだ」と強調する。しかし、イランの革命防衛隊の支援を受けるシリア政府軍が空爆に乗じて、イスラム国や反体制派の支配地域を取り戻そうとすれば、内戦の激化を招き、制御不能の状態に陥りかねない。

 オバマ政権はイランと軍事面で調整を図る可能性は明確に否定しているものの、せめてシリア領内への空爆を黙認し、アサド政権がおかしな動きを見せないようにらみを利かせてもらいたいというのが本音とみられる。

オバマ米政権、宿敵イランに秋波 対イスラム国で協調模索 (9/23-2014 共同通信)
http://www.47news.jp/47topics/e/257331.php


イランは上記のような、米国のオバマ政権の思うような、都合のよい方ばかりには動きません。

オバマ政権のこの方向での外交姿勢に対しては、米国の保守派から批判が多く出ています。
ヘリテージ財団の中東専門家であるジェームズ・フィリップス氏は、「イランは中東地域でのテロ戦争に対して「放火犯のように行動してきたので、火消しをするのを信用して任せられない」と言っています。

Why the US Can’t Trust Iran to Help Defeat ISIS (10/30-2014 ヘリテージ財団)
http://dailysignal.com/2014/10/30/us-cant-trust-iran-help-defeat-isis/

フィリップス氏によれば、2001年以降だけを見ても、イランは計画的にスンニ派とシーア派の宗派戦争を煽って、中東情勢を非常に混乱させてきたと言います。そしてそれがイスラム国の台頭に必要な状況を作ったとも言っています。

Iran is a major part of the problem in both Iraq and Syria. It has fueled sectarian hostilities between Sunnis and Shiites that created the conditions for the rise of the Islamic State.

以下は、ジェームズ・フィリップス氏の記事の、最初の部分の抄訳です。


(抄訳開始)

イスラム国は、近隣の国家の政府すべてを転覆させようとしている。イランと米国の戦略的協力を支持する者たちは、イスラム国の増大を防ぐなかで、一定の共通の国益をイランと米国は共有していると主張する。

しかし、この当然のように聞こえる両国の国益に基づいた考えは、テヘランの政権がしばしば、イランがより広い国益を退けて、偏狭なイデオロギーの利益を追求してきたという事実を無視している。

イランのイスラム革命の論理は、再三にわたりイランの国益の論理に優ってきた。

イラクに対しても、イランと米国では全く違う目標を持っている。
米国がイラクに安定した民主主義を作ろうとしているのに対して、イランはイラクを自分達の<衛星国にする>ことを目標にしている。

(抄訳終了)


イランのイラクに対する企てと同様、フィリップス氏が、イランを米国は信用してはいけないというのは、シリア政府軍をイランの革命防衛隊などが支援しているからです。

イランの国家的な目標は、アジアでの中国の野望と同じで、中東地域から米国を追い出し、地域の覇権を獲得することです。


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「玉砕ノミクス」:ゴールドマン・サックスと年金積立金

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11月5日の田中宇さんの、ゴールドマンがアベノミクスを批判しているという記事に「バンザイノミクス」という言葉が出ていました。それを日刊ゲンダイが、「ゴールドマンも『バンザイノミクス』と評している」とカン違いしていますが、ゴールドマンは『バンザイノミクス』という言葉は使っていません。

アベノミクスのことを、『ゼロヘッジ』など海外のネットが侮蔑をこめて「バンザイノミクス」(Banzainomics)と呼んでいるのを、より彼らの受け取り方に即して訳せば、『玉砕ノミクス』です。とくに『ゼロヘッジ』は黒田日銀の発足当初から、毎週アベノミクスを攻撃・批判しています。


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    【4】 ゴールドマン・サックスと年金積立金

日銀は10月31日、ついに追加金融緩和を決定しました。
その日の米国金融ニュース・サイト『ゼロヘッジ』では、この決定を受けたゴールドマン・サックスの馬場直彦氏のニュースレターの全文を公開しています。

馬場氏は、「日本銀行の金融機構局で金融システムの調査・分析を統括して」いましたが、2011年1月にゴールドマンに日本担当のチーフ・エコノミストとして移籍しました。

ゴールドマン:日銀から馬場氏をチーフ・エコノミストに起用 (2011/01/05 ブルームバーグ)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LEJ85M07SXKX01.html

『ゼロヘッジ』によると、最初、日銀の量的緩和の熱心な支援者であったゴールドマン・サックスが、アベノミクスとJカーブ効果に幻滅を感じるようになり、その立場を否定的へと変えたのは数か月前であったと言います。(Jカーブ効果:円高から円安進行への切り換わり時の短期間において、輸出が減少し(または伸び悩み)、その後上昇し始めること。)

そしてゴールドマンは、「アベノミクスにとって不幸な結末が、ほぼ間違いなく起こり得る」と言っているそうです。

ここまではゴールドマンの馬場氏のニュースレターからではなく、『ゼロヘッジ』サイトの調査ですが、『ゼロヘッジ』は海外ヘッジファンドや著名投資家などのレポートやニュースレターをよく読み込んでいるサイトです。

It was about several months ago when Goldman, which initially was an enthusiastic supporter of BOJ's QE, turned sour on both Abenomics and the J-Curve (perhaps after relentless mocking on these pages), changed its tune, saying an unhappy ending for Abenomics is almost certainly in the cards.

Goldman On BOJ's Banzainomics: "We Highlight The Potential For Harsh Criticism Of Further Cost-Push Inflation" (10/31-2014 ゼロヘッジ)
http://www.zerohedge.com/news/2014-10-31/goldman-bojs-banzainomics-we-highlight-potential-harsh-criticism-further-cost-push-i

アベノミクスについては、2013年4月に行われた日銀の大規模緩和の半月後、モルガン・スタンレー・リサーチが、「成長戦略がうまく実行されなければ、日本はスタグフレーションに襲われる」とレポートしていました。

この時期ゴールドマンは、日経株価は19000円を狙えるなどと煽っていましたが、市場誘導が巧みで露骨なゴールドマンに翻弄された投資家も多かったのではないでしょうか。

またゴールドマンの馬場氏は、大幅な円安が続くことによって<来年の統一地方選挙>で、非製造業者や、中小企業の人たち、一般家庭のあいだから、さらに値上げが続くコスト・プッシュ・インフレへの厳しい非難が起こる可能性を強調しています。

そして最後に、「今回10月31日の追加緩和の動きに関わりなく、我々ゴールドマンは、日銀は非常に狭い道を歩んでいると確信している」と警告しています。

これは、「黒田も安倍も、追加緩和など、この先いくらやっても無駄だ、我々外資を喜ばせるだけだ」という意味でしょう。

Irrespective of the latest easing moves, we believe the BOJ is treading a very narrow path.

現に、ソロスは10月31日の日銀の追加緩和発表から、円を売って何億ドルもの荒稼ぎをしています(ウォールストリート・ジャーナルのグレッグ・ザッカーマンのレポートによる)。

Soros Fund Profits Yet Again From Yen Short (11/04-2014 バリューウォーク)
http://www.valuewalk.com/2014/11/soros-short-yen/

以下は今年4月2日の日経の報道ですが、「アベノミクスは不幸な結末となる」と数か月前に変節したゴールドマンは、私たちの年金積立金をどのように運用し、GPIFとの取引を通じ、私たちの年金積立金を、どのように料理していくのでしょうか。


年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、高収益の日本株を組み込んだファンドへの投資を始める。ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントなど数社に運用を委託する。委託規模は1社あたり、2千億〜4千億円規模とみられる。

公的年金、高利回り投資へ ゴールドマンなどに委託 (4/02-2014 日経)
http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS01045_R00C14A4PP8000/



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米中関係:アジア地域の切り分け論

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2014年7月8日に北京で行われた第4回戦略安保対話。米中戦略経済対話の部会にあたる(Photo: China-US Focus から)
http://www.chinausfocus.com/special-coverage/sixth-round-of-china-us-strategic-and-economic-dialogue/


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    【2】 米中関係:アジア地域の切り分け論

11月11-12日の日程で、10時間にわたる米中首脳会談が北京で行われました。
この会談をめぐってマスコミで、習近平主席がさかんに使う「新しい形の大国関係」(※ 注1)という言葉がクローズアップされています。

12日のテレビ朝日の『報道ステーション』では、この「新しい形の大国関係」という言葉は、中国が考える意味として「中国と米国が太平洋を真っ二つに分けて治める」ということだと説明していました。

テレビ朝日のこの説明は非常に不正確だと思います。

これは6年以上も前に、中国軍の幹部が米国のキーティング太平洋軍司令官に「太平洋を米国と中国で2分割支配をしよう」と提案したのを、そのまま説明に当てています。確かに習近平は今度の会談でも「太平洋は米国と中国を受け入れるのに充分広い」とは言いました。

私が反論するのは、この事を扱った箇所が、戦略国際問題研究所(CSIS)の報告書にあるからです。

Comparative Connections v.16 n.2 - US-China (9/15-2014 戦略国際問題研究所 PDFファイル)
http://csis.org/publication/comparative-connections-v16-n2-us-china

上記の報告書は、今年の夏、7月に北京で行われた第6回米中戦略経済対話(年1回)を総括した内容が書かれています。

その副題は「いまだに足踏みしている第6回戦略経済対話」とあります。

第6回米中戦略経済対話では席上で楊潔チ(よう・けつち)国務委員が米国側に繰り返し、次のように中国のポジションを説明したそうです。

『アジア地域と太平洋は米国と中国にとって充分広い。北京はこの地域での建設的な米国の関与を歓迎するが、米国を排除しようとするものではない』

楊潔チ(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A5%8A%E6%BD%94%E3%83%81

これに対してケリー国務長官は次のように米国の立場を主張しました。

『米中関係の新しいモデルは、それぞれの勢力範囲があるとして、これらの(アジア太平洋)地域を米国と中国で<切り分けよう>として規定されるものではない。新しい関係のモデルは、世界的な行動・活動の規範についての相互の承認によって規定されるものであり、その行動規範は我々が長い間、国際的な行動の基準によって管理してきた価値と利益を守るものである。』(PDF3ページ)

The new model of relations is “not going to be defined by us carving up areas and suggesting there are spheres of influence, it’s going to be defined by our mutual embrace of standards of global behavior and activity that protect the values and interests that we have long worked by the norms of international behavior,” Kerry said.

ここでは中国の考える「新しい形の大国関係」が、アジア地域と太平洋を米国と中国で“carve up”((肉などを) 切り分ける)する考え方であることに注目したいと思います。

米中関係の新しいモデルについて、楊潔チ国務委員たちの要求する<切り分け論>に対してケリー国務長官の米国側は、国際法に則った新しい関係のモデル(“The new model of relations”)を主張し、両者の考え方には大きな隔たりがあります。

中国側は、アジア地域と太平洋に米中それぞれの勢力範囲を設け、地域や問題の性質・種類によって<切り分け>をした支配を国家の目標にしているのです。

(※ 少なくとも今の段階では。米国側が警戒しているように、アジア地域からの米国の排除が真の狙いかもしれません。)

中国が米国に対して要求しているアジア地域の<切り分け>とは、例えば大きな皿にのっているアジアという肉の塊を、尖閣諸島、台湾、南シナ海などは中国がいただき、残りは米国がというように切り分けて勢力・支配権を設定しようという中国の戦略構想を指すわけです。

今回の首脳会談でオバマ大統領は「新しい形の大国関係」(“New Type Great Power Relations”)という言葉を使わなかったそうですが、第6回の戦略経済対話をレポートしたこの米国の報告書でも、習近平が「新しい形の大国関係」という言葉を使ったとして記載されているだけです。 


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ポスト冷戦秩序の解体が始まっている

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       Richard N. Haass(外交問題評議会会長)


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   【1】 ポスト冷戦秩序の解体が始まっている

アメリカの対外政策決定に対して著しい影響力を持つと言われている外交問題評議会の会長で、コーリン・パウエル元国務長官のアドバイザーでもあったリチャード・ハース氏が、「解体」(“The Unraveling”)という記事を『フォーリン・アフェアーズ』誌の11-12月号に寄稿しています。

The Unraveling (解体)フォーリン・アフェアーズ11-12月号
http://www.foreignaffairs.com/articles/142202/richard-n-haass/the-unraveling

同誌の日本語版は、ごく短い要約のみ無料掲載しているので参考にしてみてください。

解体する秩序―リーダーなき世界の漂流
http://www.foreignaffairsj.co.jp/essay/201411/Haass.htm

この記事のタイトルは“The Unraveling”と進行形で表現されているように、現在の世界秩序は崩れ始めている、解体が始まっているとリチャード・ハース会長は主張しています。この世界秩序とは「ポスト冷戦秩序」のことです。

ハース会長は繰り返してこう言います。

「要するに、ポスト冷戦秩序は解体しつつある。そして秩序が理想的でない間は、秩序は失われるだろう(秩序が失われた世界になるだろう)。」

In short, the post–Cold War order is unraveling, and while not perfect, it will be missed.

ハース会長は現在の世界情勢のリスク要因として、「イスラム国」が影響を及ぼす中東情勢とウクライナ・ロシア情勢のほかに、北朝鮮とパキスタンを挙げています。

金正恩第1書記の脆弱な体制が国家崩壊するリスクの高まりと、「世界で最も危険なテロリストたちが荒れ狂う」パキスタン。この2つは日本のテレビなどではほとんど取り上げられません。北朝鮮とパキスタンの問題は、両方とも核兵器の危機を伴った問題であり、世界的な危機の原因にもなりえるとハース会長は言っています。

米国のシンクタンクではパキスタンとアフガニスタンの情勢がよく扱われ、北朝鮮の金正恩体制の崩壊のリスクや朝鮮半島の今後を考える記事なども、よく研究者たちによって公開されています。


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中央アジアでの中国とロシアの覇権競争

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中国の陸上の「新シルクロード構想」と海上シルクロード
http://thediplomat.com/2014/05/chinas-new-silk-road-vision-revealed/


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   【3】 中央アジアでの中国とロシアの覇権競争

中国の主張する、「大国同士が勢力範囲を設け、地域や問題の性質・種類によって切り分けを行う」という考え方は、米国よりも、今やむしろ盟友と目されているロシアとの間で活用できる考え方です。

最近ではブログなどでもだいぶ、中ロの接近を取り上げる記事が出てきましたが、中ロの協力体制は言わば、「片目をあけて寝床を共にする政略結婚」(バジニア・マランティドウ氏, CSIS)です。

戦略国際問題研究所(CSIS)が9月30日に公開した記事では、急接近を見せている中国とロシアの間に、中央アジアでの石油や経済覇権などをめぐって競争関係が進行していることを報告しています。

The great game in Central Asia (9/29-2014 戦略国際問題研究所)
http://csis.org/publication/pacnet-73-great-game-central-asia

ウクライナがロシアの前庭なら中央アジアはロシアの裏庭です(同氏)。

共著者の一人、バジニア・マランティドウ氏は「表面の真下で進行する競争は協力関係の基盤を侵食するだろう」とまで言っています。

マランティドウ氏らによれば、「東アジアでの米国との大きな競争に直面しているので、中国は中央アジアへまだ活用されていないものを求めて、<西方へ>向かって関心を移している」と言います。

Facing greater competition from the US in East Asia, Beijing is shifting attention westward to take advantage of what it perceives as a vacuum in Central Asia.

そして、「習近平によって明言されている『新シルクロード経済ベルト』での西方への戦略は、中国の経済とその発展にとって中央アジアの重要性を強調するものである」と指摘しています(※ 冒頭地図参照)。

中国の「シルクロード構想」、周辺地域への影響力を強める狙い (11/11-2014 ロイター)
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPKCN0IV03Z20141111


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執筆予定 2019.8.20 記
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