経済戦略と国際情勢

救国済民。来るべきこの国の大量経済難民を、どう救うか

2015年04月

バグダディの呼びかけとサウジアラビア

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「イスラム国」の最高指導者アブバクル・バグダディ(Abu Bakr al-Baghdadi)


4月20日、サウジアラビアからのテロに関する報道です。



サウジ、エネルギー施設など襲撃計画情報で警戒態勢 (4/20-2015 ロイター)
http://jp.reuters.com/article/jp_mideast/idJPKBN0NB0OG20150420

[リヤド 20日 ロイター] - サウジアラビア内務省報道官は20日、商業施設やエネルギー関連施設が武装集団の襲撃を受ける可能性があるとして、治安部隊に警戒態勢を取らせたことを明らかにした。

同報道官は、「商業施設あるいはサウジアラムコの施設を標的にした攻撃の可能性を示す情報を得た。これを治安部隊に伝え、警戒態勢をとらせた」と述べた。詳しい情報は得ていない、としたうえで「サウジアラビアは、テロリズムの標的になっている。(紛争が起こっているような)状況では、これに乗じてテロリスト集団が攻撃を仕掛けるのが普通だ」と述べた。

サウジは3月下旬から隣国イエメンの過激組織掃討で空爆を開始した。サウジ警察は今月、首都リヤドで起こった2件の襲撃事件の容疑者として、サウジ国籍の人物を拘束したと発表している。




【◆◆以下の記事は有料メルマガ3月26日号の一部です】


ジェームズタウン財団は3月6日付けで、『国王を倒すために:イスラム国はサウジアラビアに照準を合わせる』と題した記事を掲載しました。

To Topple the Throne: Islamic State Sets Its Sights on Saudi Arabia (3/06-2015 ジェームズタウン財団)
http://www.jamestown.org/regions/middleeast/single/?tx_ttnews%5Btt_news%5D=43625&tx_ttnews%5BbackPid%5D=49&cHash=098b3acddb81989ddb35d68a79c478a0%20-%20.VQkwtI6sUxN#.VRPb9vmsWLU

その記事の中では、2014年11月13日に「イスラム国」の指導者アブ・バクル・アル・バグダディが、組織のメディアから“Even if the Disbelievers Despise Such”という題名の音声メッセージのなかで、サウジアラビアを含む戦線の拡大を激賞したというのです。

そしてこの「イスラム国」の活動の拡大の対象には、イエメン、エジプト、リビア、アルジェリアが含まれていましたが、サウジアラビアにあるイスラム教の二大聖地メッカとメディナを指す“al-Haramein”の語が含まれていたのです。そしてそのバグダディの音声メッセージでは“al-Haramein”の語が強調され、サウジアラビアの追随者たちに従うよう呼びかけていたそうです。

この記事の執筆者のクリス・ザムべリス氏は、「『イスラム国』の台頭は、アブドラ国王の死とサルマン新国王の継承を契機として、高まる国内と中東地域の両方の不安定さの真っ只中で起こる」と述べています。

2月12日の有料メルマガでお伝えしましたが、外交問題評議会のリチャード・ハース会長は、1月のフィナンシャル・タイムズで次のように警告していました。

『現代のカリフの支配をもたらそうとする「イスラム国」が、イスラム教の二大聖地のメッカとメディナのあるサウジの支配権を得ようとする可能性がある。』

Saudi Arabia: Threat from Isis will only grow (1/25-2015 フィナンシャル・
タイムズ)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/868f3396-a319-11e4-9c06-00144feab7de.html?siteedition=intl#axzz3QB8uLHjZ

さらに「イスラム国」について、ハース氏は以下のようにも述べていました。

『サウジの大きな危険は、教育の不十分な、潜在失業の若者たちへ「イスラム国」の考えをうったえることから起こる。<爆弾>以上の威力をもつインターネットはサウジ政府の破滅の元となるだろう(could)。とくに、甘やかされたサウド王家の何千人もの王子たちの鬱積した恨みは、広くて深い。』

3月20日、イエメンの首都サヌアにあるシーア派のモスク2カ所での自爆テロ事件では、少なくとも142人が死亡しました。これに対して「イスラム国」系組織が犯行声明を出したそうですが、米国政府はイスラム国系の活動かどうかの確認はできていないと発表しています。

イエメン連続自爆テロで142人死亡 「イスラム国」犯行声明で宗派対立激化の恐れも (3/21-2015 産経)
http://www.sankei.com/world/news/150321/wor1503210047-n1.html

また、エジプトでは「イスラム国」に忠誠を誓うグループが爆弾テロを繰り返して起こしました。

仮に、このイエメンの142人が死亡したテロ事件が「イスラム国」の犯行であるとしたら、バグダディの音声メッセージで名指しされたイエメン、エジプト、リビアでは、2014年11月のバグダディの呼びかけに応じてテロ事件が発生していることになります。バグダディのメッセージのなかにあるサウジアラビアも危なくなってきていると思います。


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核兵器協力 サウジとパキスタンで間近に迫る

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【◆◆以下は有料メルマガ3月12日号の一部です】


    【3 間近に迫るサウジとパキスタンの核兵器協力

 
さて、2014年の有料メルマガ1225日号では、戦略国際問題研究所(CSIS)の11月の公開論文の中から、サウジなど湾岸アラブ諸国が米国の中東政策に対して、非常な不満、懐疑心、時に危険といった感情を持っているということを取り上げました。
 
サウジは国内秩序動乱の入り口にいる―シェール革命の影響と米国の中東政策―
 
この感情は、とくに米国のイラン政策に対して強烈に向けられています。1月下旬に王位に就いたサルマン新国王は、当初、亡きアブドラ国王の外交政策をそのまま引き継ぎ、サウジの外交政策に大きな変更はないと米国の専門家の間ですら言われていました。
 
しかし、2月に入り早くもサウジがイランの核の脅威に対して対抗措置をとるという観測が米国やイスラエルの専門家たちから出てきています。
 
外交問題評議会のリチャード•ハース会長は、サルマン国王79歳、ムクリン皇太子69歳という老齢体制では大したことはできないとフィナンシャル・タイムズで言っていましたが、サルマン国王はすでに注目すべき行動に出ています。
 
Saudi Arabia: Threat from Isis will onlygrow 1/25-2015 フィナンシャル・タイムズ)
 
まず、ワシントン中東政策研究所のサイモン・ヘンダーソン氏の記事によれば、2月3日にパキスタン軍統合参謀本部のラシッド・マフムード議長はサルマン新国王と会談しています。これはアブドラ前国王が亡くなった11日後です。
 
Nuclear Nuances of Saudi-Pakistan Meeting 2/03-2015 ワシントン中東政策研究所)
 
また、パキスタンのナワズ・シャリフ首相は3日間の日程でリヤドを訪れ、3月4日にサルマン国王と会談しています。
 
元CIAのアナリストで現在ブルッキングス研究所のブルース・リーデル氏は、この会談の2日前の記事と3月8日の記事で、イランの核交渉が「悪い取引き」か交渉が決裂した場合には、パキスタンが核兵器をも含めたサウジへの軍事的関与をとるだろうというイスラマバードの観測を取り上げています。
 
The speculation in Islamabad is the Kingwants assurances from Sharif now that, if the Iran negotiations produce eithera bad deal or no deal, Pakistan will live up to its longstanding commitment toSaudi security.
 
As Bibi addresses Congress, the Saudis playa more subtle game on Iran 3/02-2015 アル・モニター)
 
サウジの核武装にはパキスタンが関わっていることは有料メルマガ1127日号でもお伝えしました。
 
サウジの核武装と米シェール潰し 11/27-2014 拙稿
 
パキスタンの核兵器保有は世界で最も速く成し遂げられましたが、サウジは1970年代からその開発費用を援助し続けています。
また、サルマン国王は1年前に皇太子としてイスラマバードを訪れた際、サウジとパキスタンの戦略的協定を再確認するとして、シャリフ首相に15億ドルを供与しています。(下記記事より-ブルース・リーデル氏)
 
Saudi Arabia prepares for Iran nuclear deal3/08-2015 アル・モニター)
 
リーデル氏は「リヤドにとって最も決定的な同盟国はパキスタンだ」と言っています。
そして、「サウジはオバマをまだ見限ってはいない」とも言います。
 
米国のケリー国務長官は3月5日にサルマン国王と会談しています。
米国はもちろん、サウジとパキスタンの核兵器での協力の可能性に、非常に危機感を持っています。
リーデル氏は「ワシントンはこの問題が重大過ぎて、会話によって神経を刺激させることができない」と、この米サウジ会談後の記事で言っています。
 
サルマン国王は、シャリフ首相から今月の3月の終りまでに核兵器による協力の確約をほしいようですが、この3月末はイランとの核交渉の枠組み合意の期限にあたります。
 
リーデル氏は最後に、「サウジはより巧妙な方法を好む」と言っていますが、サウジの思うように米国をうまく動かして、イランを封じ込めることなどできるのでしょうか。

    
      (了)


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「イランと米国との共同統治」―米国の新しい中東包括戦略―

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 ("Rouhani writes Obama as Iran talks enter endgame", Al-Monitor, March 26, 2015)


4月2日にイラン核問題で枠組み合意がされて、イランの最高指導者ハメネイ師は9日、「米国が核協議で欺かなければ、ほかの問題でも話し合えるかもしれない」と述べました。
 
イラン最高指導者、米と対話に含み 「核協議で欺かなければ」 4/09-2015 日経)
 
今回紹介するマーティン・インダイク氏の戦略で、中東地域で米国とイランが「何を考えて」話し合いを進めているのか、今後、米国とイランはどのような方向でこの地域で行動していくのかが、大筋で見えてくると思います。
 
 
【◆◆以下の記事は、有料メルマガ3月12日号の一部で、それに加筆したものです】
 
 
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   米国の新しい中東包括戦略とサウジの核武装
 
  ―「イランと米国との共同統治」をふくむ包括戦略―
 
 
【目次】
1 インダイク氏の中東戦略とオバマ政権
2】「イランと米国との共同統治」をふくむ包括戦略

(以下目次省略)
 

    【1 インダイク氏の中東戦略とオバマ政権
 

いま「中東崩壊」という言葉も出ているこの地域は、中東専門家からは“chaos”(混沌状態)と表現されています。
今まで私には、米国のオバマ政権がほとんど場当たり的に、注目するほどの基本戦略もなく、この中東の混沌状態を扱っているように見えていましたが、そうでもないようです。
 
今回の記事でははじめに、この収拾不可能かに見える中東で、米国がどのような戦略を立てて中東を再建設しようとしているのかを見てみたいと思います。
 
中東全体を見渡した包括的な戦略論はいくつもあると思いますが、この記事ではブルッキングス研究所の副社長であるマーティン・インダイク氏のものを取り上げます。
インダイク氏は米国の元駐イスラエル大使で、クリントン政権では国務次官補、大統領特別補佐官、国家安全保障会議(NSC)の上級スタッフを務めた経歴をもつ中東の専門家です。
 
現在、民主党オバマ政権を支えるブルッキングス研究所で副社長でもあり、その意見の影響力も大きいと思い、取り上げてみました。意見の影響力が大きいというのは私の判断ですが、実際にその戦略論を読んでみてオバマ政権の動きと照らし合わせてみると、場当たり的としか見えなかったオバマ政権の動きが、インダイク氏の戦略論と重なるのです。
 
そこで私はインダイク氏の戦略論を、民主党オバマ政権の中東戦略に近いものとして捉えました。
 
A return to the Middle Eastern great game(Part One) 2/17-2015 ブルッキングス研究所)
 
A return to the Middle Eastern great game(Part Two) 2/18-2015 ブルッキングス研究所)
 
ウェブページで2ページにわたりパート1と2の、2部から書かれています。題名は「中東のグレートゲームへの復帰」とありますが、これは中央アジアのそれを指すのではなく、米国が新たに「大いなるゲーム」を中東で始めるという意味です。
 
 
  【2】「イランと米国との共同統治」をふくむ包括戦略
 

米国自身の力には制約があるので、中東に再び秩序を回復させるには、中東地域での勢力のある国家との連合が必要です。
ブルッキングス研究所の副社長のインダイク氏は、いまの中東に対するそのような連合の形には、「2つしか」選択肢がないと言います。
 
そのうちの一つである今までとは全く違った新しい選択肢は、中東における「イランと米国との共同統治」であると言います。この戦略の核心は、<イランにペルシャ湾岸地域での(“in the Gulf”)優位性を与えようとするもの>で、その見返りのためにイランは次のようなことに同意しなければなりません。
 
それは、まず核開発の抑制。次に、レバノンでのヒズボラ、ガザでのハマスとパレスチナ・イスラム聖戦、イエメンでのフーシ派、シリアのアサド、これらへの支援をイランが減らすこと。そして<新しい米国とイランによる地域的秩序>の構築にイランが貢献することです。
 
1. Joint Condominium with Iran: The essenceof this approach is for the United States to concede Iran's dominance in theGulf in return for its agreement to curb its nuclear program, reduce itssupport for Hezbollah in Lebanon, Hamas and Palestine Islamic Jihad in Gaza,the Houthis in Yemen, and Basher al-Assad in Syria and contribute instead to theconstruction of a new regional American-Iranian order.
 
これに対してもう一つの「連合」の選択肢は、この地域での従来の同盟国であるサウジ、エジプト、イスラエル、トルコなどの連合をもとにして、イランを封じ込めるものです。インダイク氏はこの選択肢の事を「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(Back to the Future)と形容していますが、この選択肢は“chaos”(混沌・混乱)となった中東の未来をつくるために、旧来の「古い秩序」(“old order”)と枠組みにバックすることだ、「古い秩序」を修復することだという意味です。
 
この2つの選択肢(戦略)は共に非常に難点を抱えたもので、とくに前者のイランと米国との共同統治は考えが甘いと言われるかもしれないとインダイク氏自身が言っています。ところが、論文の後半パート2ではこの2つの選択肢の両方を合わせたものを米国の最終的な選択肢(戦略)として主張しているのです。
 
その最終的な選択肢の戦略は、まずイランが核開発の抑制にある程度のレベルで合意することが大前提になります。
 
そしてこの戦略では、中東での地域的安全保障の枠組みにイランとイスラエルも入れてつくるもので、その地域的安全保障の枠組みの基礎的な部分は、米国といまの同盟国との関係、イスラエル・エジプト・ヨルダンの間の良好な安全保障関係、イスラエルと湾岸アラブ諸国との隠れた安全保障関係などを活用してつくります。
 
この地域的安全保障の枠組みでは、各国間の「摩擦を減らしマネージしながら」やっていくのですが、そこでは各国間の「競争と抑制・束縛が組み合わされる必要があるだろう」とも言っています。
 
この構想は、イランをこの地域的安全保障の枠組みに入れ、イランとの協力関係をつくることで中東での多くの紛争問題が改善に向かうという考え方がもとになっています。これにはサウジやイスラエルなどの敵対国が「激怒するだろう」、その構想は実現可能性が欠如しているといった批判が出てくるだろうと、インダイク氏自身が言っています。
 
しかし、いまの中東の混乱と混沌を収拾する選択肢は非常に限られており、前述の2つの選択肢のうち「イランと米国との共同統治」(“a Joint Condominium with Iran”)の考えを盛り込んだ合併案を除外するというのなら、「それ以外の代替案にどれほどの実行可能性があるのか」とインダイク氏は主張しています。
 
そして、中東情勢は、「観客席から批評しているような、贅沢な余裕のある状況ではない」とも述べています。
 
2014年9月以降、米国とイランが接近しているという観測が出ており、核協議ではこの3月末の枠組み合意の期限を前に、イランのウラン濃縮を容認する米国をイスラエルのネタニヤフ首相が激しく非難しています。
 
その一方で、米国は欧州やスンニ派諸国主体の空爆作戦を展開するなど、中東での多国間主義政策を行っていますが、第1節で述べたように、場当たり的としか見えなかった米国の動きを、インダイク氏の将来へわたっての戦略論とビジョンに重ねると、米国の中東政策の方向性として納得がいき、理解がしやすいのです。
 
民主党オバマ政権を支えるブルッキングス研究所の副社長である、このインダイク氏の戦略は、「イランと米国との共同統治」を取り入れたこの戦略で「イスラム国」やアルカイダのほか、多くのイスラム武装組織やシリアのアサド政権などの問題を解決し、中東の混乱と混沌に新しい秩序をつくろうという戦略なのです。

要するに、中東に山積し収拾困難なこれらの問題の解決のために、イランの力を多く借りようという訳です。
 
そして、そこで大いに疑問になってくる「実現可能性」については、ほかに「実現可能性」をもった選択肢がないとインダイク氏が言うほど、中東は混乱と混沌を極めているということなのです。
 

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執筆予定 2019.8.20 記
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