国際決済銀行(BIS)規制上の国債のリスク掛け目
Source: Bank for International Settlement
欧米のヘッジファンドの短期国債市場への流入始まる
―大震災の復興需要の増大に乗ずる格付け会社とヘッジファンド―
「日本の短期国債利回りの低下が止まらない。欧米市場の不安定化により円転操作が有利になり、海外マネーが流入しやすい状況が続いている。海外マネーが金利低下を主導する構図はしばらく崩れそうにない。市場では、当面はヘッジファンドやアジアの中銀マネーによる短期債市場への流入が続くとの見方が出ている。」(下記記事を抜粋)
止まらない短期債利回り低下、海外マネーは円転操作で流入継続か (8月25日 ロイター)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-22858120110825
中期国債と長期国債についても見てみたい。
「日本国債が格下げされたが、長期国債の利回りは低位で安定している。国債の暴落など起こらない」
このような今の数字をしか見ることをしない意見がメディアで多く言われているが、暴落説が叫ばれながらも日本国債の相場が堅調であったのは、リーマン・ショック後の景気の大幅な冷え込みで、国内の資金需要が極端に冷え込んでいたためだ。2010年度の銀行の国債の買い付け額は過去最高であった。2010年の統計によれば、大手銀行では1年間で13兆2000億円の資金余剰であったという(注1)。
そこへ3月の東日本大震災が起き、4週間後の4月7日の時点では大手7行が受けた融資要請の総額は8兆4000億円に達している。東北地方の本格的復興はこれからで、待ったなしの復興需要が民間銀行を待ち受けている。この先は民間銀行が国債を買っている余裕は全くない。マスコミ向けの数字とは別に、復興資金の総額の見通しは原発事故の被害も含めると100兆円とも言われている。加えて既に限界に達している公的年金や郵政グループが売ってくる国債を吸収する行き先も、民間銀行へと回ってくる(注2)。
今年1月に米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)がAA-、8月に米ムーディーズがAa3と日本国債の格下げを行ったが、この2つの下のランクはともにA格となる。
「国際決済銀行(BIS)の自己資本比率規制によれば、AA格までの国債のリスク掛け目は0%だが、A格は20%のリスク掛け目となる。自国通貨建ての国債には、その国の当局が別の扱いをすることも認められる。そこで日本国債の95%を保有する国内投資家については、リスク掛け目ゼロのままだろう。」 (8月1日 日経 / 冒頭の数表参照)
(BIS規制第54項:「自国通貨のソブリン債保有に関しては、リスクウェイトが低減される可能性がある。」)
公的年金や郵政グループから民間の金融機関へと国債購入の主な引き受け手が替わり、財務省の意向に添った国債購入や運用は今後は保証されない。次回の格下げでA格となり、国内投資家についてリスク掛け目をゼロとしても、銀行は近づくBBB格のリスク掛け目50%を意識して堅調な購入が崩れる可能性がある。
格付け会社とヘッジファンドの連携という視点から見た場合、日本国内での余剰資金が潤沢にあった東日本大震災以前よりも、2012年へ向けてこれからの大震災による復興需要が膨れ上がってくる時機に、A格群での三段階からBBB格、BB格へと順々に段階的に格下げしていく方が利益収奪の理に適っている。
「一度にギリシャを破綻させたらうまみがない」 格付け会社が少しずつ段階的に格付けを下げていくという市場操作・手法でヘッジファンドを大儲けへと誘導した良い例が、ギリシャを含むユーロ債務危機だ(注3)。
S&Pは今年1月、日本の国債の格付けをAAからAAマイナスに引き下げたが、4月27日には日本国債の格付け見通しを「弱含み(ネガティブ)」に引き下げている。おそらく遅くても年内中に1段階もしくは2段階下のA格への再度格下げを行ってくるのではないか。
「ギリシャは標的にされた!」
ギリシャのパパンドレウ首相は2010年3月、こう吐き捨てたそうだ。
次の標的は日本だ。ヘッジファンドの多くは欧米の大手金融機関の傘下でありその別働隊であるが、為替市場と絡めた債券市場での攻撃は間近に迫っていると見た方が良いだろう。
そもそもリーマン・ショックの元凶のような格付け3社は、ヘッジファンドとともにアメリカを中心にして形成されている「金融複合体」の一部である「敵」として認識しておくことが、国家の危機管理を考える上で非常に重要なことだろう。
また格付け会社の格付けをもとにしたBIS規制により、国債への資金シフトを世界規模で作り出している国際決済銀行も、「金融複合体」の共犯でなくて何なのか。
ヘッジファンドは、コンピューターによる超高速取引(HFT)で円買いを行い日本経済を潰しながら、短期国債市場のシェアを伸ばしている。現在おこなわれているヘッジファンドの円買いと日本の短期国債買いは、ワンセットになった今後の大規模な円売りシナリオの一部だろう。
「破壊する前には繁栄がある。まずは上げてから落とす、これが、相場の常套手段。下げたかったら、上げろ、上げたかったら下げさせろ、まず逆に持っていくこと、人々の心理を変えること―これが世の中をいかに動かすか、相場をいかに持っていくかの当然のセオリーだ。」 (朝倉慶氏)
※注1、2、3: 『2012年、日本経済は大崩壊する』 (朝倉慶著 2011年7月刊)を部分要約。
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「止まらない短期債利回り低下、海外マネーは円転操作で流入継続か」
2011年 08月 25日 09:54 JST ロイター
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-22858120110825
[東京 25日 ロイター]日本の短期国債利回りの低下が止まらない。政府は24日に1000億ドル規模の基金創設を柱とする緊急円高対策を発表したが、外貨資金を円に転換して円貨で運用する円転操作が有利な状況は変わらず、かえって金利低下に拍車がかかった。
日銀が2008年に導入した補完当座預金制度により、流通利回りが0.1%を下回って推移することに対する抵抗感は根強いが、海外マネーが金利低下を主導する構図はしばらく崩れそうにない。
財務省が24日実施した3カ月物国庫短期証券(218回、11月28日償還)の入札結果は、募入最高利回りが0.0962%、平均利回りは0.0954%にそれぞれ低下した。17日入札の前回債(217回、11月21日償還)は最高利回りが0.1002%、平均は0.0982%だった。
市場では「海外勢の需要を見越した業者が積極的な応札に踏み切ったため、事前に予想されたより堅調だった」(国内金融機関)との声が多い。
大手金融グループの間では、国債利回りが0.1%を下回って推移することへの抵抗感が強い。補完当座預金制度で超過準備への付利金利が定められ、日銀当預に資金を寝かせておけば0.1%の運用利回りが期待できる。価格変動リスクを抱えながら同水準の国債に投資すれば、運用益どころか損失を被りかねないからだ。
それでも金利反転の兆しがいっこうに見えない背景には海外勢の存在がある。
財務省が毎週発表している「対外及び対内証券売買契約等の状況」によると、海外投資家の対内短期債投資は8月14日から20日の週の取得額が5兆4505億円と8月7日から13日の週に続いて5兆円の大台に乗せた。処分額を差し引いたネットベースでも2兆3100億円の「取得超過」と、前週の2兆9752億円に次いで過去最高規模を記録。「欧米市場の不安定化により円転操作が有利になり、海外マネーが流入しやすい状況が続いている」(市場筋)との指摘がある。
政府は24日発表した円高対策で1000億ドルの基金を創設。「急激な円高の進行に対応するため、民間円資金の外貨への転換(円投)の促進により、為替相場を安定化させる」としたが、即効性が疑問視され、「短期マーケットで潮目を迎えるきっかけになるとは思えない」(東短リサーチの寺田寿明研究員)という。
市場では「当面はヘッジファンドやアジアの中銀マネーが短期債市場に流入しそう」(セントラル短資の金武審祐総合企画部長)との見方が出ている。
(ロイターニュース 山口貴也、編集;伊賀大記)
DOMOTO
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735
http://www.d5.dion.ne.jp/~y9260/hunsou.index.html
欧米ヘッジファンドの日本短期国債市場への流入始まる ― 格付け会社とヘッジファンドの連携 ―
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国際情勢は非常に不安定化していますが、このままでは地球温暖化の不可逆的な暴走現象が始まると警告されています。