【2】中国経済は危機突破の方向へ進んでいるー人民銀行の金融政策ほかー


改革積極派でベテランの周小川総裁(ロイター)
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◆【この記事は4月10日にメルマガで配信された以下の記事を、分割して掲載するものです】
http://www.mag2.com/m/0001627731.html
中国経済は危機突破の方向へ進んでいる

─ 改革の断面図と最終解決策 ─

【目次】

【1】 輸出偏重からのリバランス

【2】 3つのマクロ経済目標

【3】 中央銀行の4つの政策目標

【4】 製造業からサービス業への雇用シフト

【5】 中国経済の改革の見方

【6】 最終解決策と米国債
 

【3】 中央銀行の4つの政策目標

楼財務相などのいう中国の3つのマクロ経済目標「雇用創出、物価の安定、GDP成長」は、中国人民銀行の金融政策が支えています。

 

3月27日のローチ氏の記事では、人民銀の周小川総裁も金融政策において楼財務相と同様なことを述べています。

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周総裁はこう述べた─「中国人民銀行は、ただ一つだけの目標(GDP)を達成しようとしているわけではない。人民銀は、物価安定、雇用、GDP成長、国際収支という目的から成る「多目的機能」と呼ぶものと合致した金融政策の骨組みを作っている。最後の(国際収支という)要因は、通貨政策において人民銀の権限を認めるために加えられた」。

周総裁は、「(政策の腕の)見せ所としては、多目的な政策機能のなかで4つの目標のそれぞれに、どうウエイトを割り当てていくかということだ」と強調した。

The PBOC, he argued, does not pursue a single target. Instead, it frames monetary policy in accordance with what he called a “multi-objective function” comprised of goals for price stability, employment, GDP growth, and the external balance-of-payments – the latter factor added to recognize the PBOC’s authority over currency policy.

The trick, Zhou stressed, is to assign weights to each of the four goals in the multi-objective policy function.

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人民銀が国際収支を目標の一つと明確にしていることは、日銀が経常赤字に対しての対応を明確にしておらず、半ば放置しているのと対照的で、日銀も金融政策の在り方を早急に再検討するべきでしょう。

【4】 製造業からサービス業への雇用シフト

中国の雇用状況の最新の情報として、HSBCの3月のサービス部門の景気動向レポートは注目です。各国の中央銀行からも信頼されているHSBCの速報では、3月のサービス部門の雇用状況について以下のように報告されています。

「サービス業の労働者数が2013年6月以来の最も高い伸びとなり、とりわけサービス業での雇用創出が製造業で減少している労働者数を相殺して、サービス業・製造業合わせて5か月ぶりの雇用の増加をもたらした。」

In contrast, higher volumes of new work led service providers to expand their payroll numbers at the fastest rate since June 2013. Notably, job creation at service providers offset job shedding at manufacturers, and led to the first increase of employment at the composite level for five months.

(HSBC China Services PMI – Mar 2014  -2014/04/03 HSBC-)

http://www.hsbc.com/1/2/emerging-markets/em-index/purchasing-managers-index

これは中国政府の構造改革の計画に合わせて、製造業からサービス業への雇用シフトが進んだことを示しています。また前出の4月3日のロイターによれば、「サービス部門は2013年のGDPの46.1%」を占めるまでになってきています。

【5】 中国経済の改革の見方

ローチ氏の記事の最後の結論に当たる部分は非常に重要ですが、少しわかりにくいかと思うので記事全体の内容を踏まえて以下にまとめてみました。

「楼財務相や周総裁などの政策幹部が共通して説明する「柔軟な経済成長の目標設定」(flexible growth targeting)は、ただ一つの目標(GDP成長率)に拘束されない。それは先進国の政策立案者と同じで、経済成長の計画は「雇用、物価安定、GDP成長、(国際収支)」などの複数のマクロ経済目標が、柔軟な形をとって全体として調整され目標設定されている。これからの中国経済で起きる変動とその変動への政策対応は、その文脈でよく考慮される必要がある。」

ローチ氏の記事にはほかにも、中国経済が減速しているといわれるなか、なぜ中国政府は自国の経済の見通しについて楽観視していられるのかという重要な理由も書かれています。

 
 

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