1月後半からのグーグル問題、米国の台湾への武器売却、人民元切り上げなどの、突発的に見える米中関係の緊張と対立は、高失業率と政権支持率低下を懸念したオバマが、今後5年間での「輸出倍増計画」を立ち上げるための布石であったようだ。

米の輸出倍増構想、貿易相手国の関税・規制も注視 商務長官 (2月5日 日経)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20100205ATGM0501N05022010.html

オバマ大統領の構想を受けたロック商務長官は4日の演説で、米通商法を厳格に適用して貿易相手国の不公正な関税や規制などを取り除く一方、アジアでは多国間の貿易協定を推進すると述べ、輸出倍増への取り組みについては「政府全般の広範囲な輸出戦略を米国が展開するのは初めて」と力説した。

このための人民元切り上げについては、ゴールドマンサックス・グループのチーフエコノミスト、ジム・オニール氏が1月23日、中国当局は人民元のレートを一気に5%程度引き上げることを検討しているだろうと述べたと、中国経済網が伝えたそうだ。「輸入品の価格を引き下げる人民元レートの引き上げは、(中国国内の)インフレ圧力を軽減するためにも有効だ」。(オニール氏)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0125&f=business_0125_143.shtml

同じく、ガイトナー財務長官は2月4日、上院予算委員会で証言し、今回の人民元切り上げ問題について「中国が(人民元切り上げに)動く可能性はかなり高いと考えている。中国側はそれが自国に重要であり利益にもなると認識している」と述べ、自信ありげだ。
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-13726420100204

中国国内のインフレ圧力には、政府の融資抑制策ではほとんど効果が見込めないという見方があるが、仮にオニール氏の見方通り、中国政府が人民元レートを5%切り上げたとして、「どの程度のインフレ軽減効果」があるのだろうか。

野村資本市場研究所の関志雄氏は、2月5日のロイターで次のように分析している。

「09年2月以来マイナスとなっていたインフレ率(消費者物価指数(CPI)、前年比)は11月には0.6%とプラスに転じ、12月は1.9%に加速した。インフレ率は、経済成長率より約3四半期遅れて動くことが観測されており、最近の景気の急回復を受けて、今後さらにCPIが上昇すると予想される。」

「中国人民銀行(中央銀行)は、2010年1月18日から大手銀行に適用される預金準備率を0.5%ポイント引き上げた。今後、インフレ率がいっそう高まるにつれて、利上げを含むさらなる引き締め策が取られるであろう。これまでの経験から判断して、CPIで見たインフレ率が4%を超えることは、利上げが実施される目安となる。その時期は今年の年央になるだろう。」

http://jp.reuters.com/article/wtInvesting/idJPnTK036019520100205

しかし、経済アナリストの朝倉慶氏はリーマン・ショック直後から、中国のインフレの加速は制御不能の状態に陥ると予測し、1月25日には「FRBのバーナンキが大量に増刷したマネーが、中国やブラジルへの投資という形になって新興国にバブルを輸出している形となっている。この流れの延長上にインフレがあり、今回世界中を覆うことになるであろう激しいインフレ(悪性インフレ)の波はまず、その発展の一番手の中国から火が上がる」と述べている。
http://www.funaiyukio.com/money2/

一方、現在の世界経済の底流は、今やソブリン(国債)リスクに支配されているわけだから、ユーロ圏を皮切りとする今後数年間の債権市場からのマネーの逃げ場は、最終的に石油・穀物・金などの商品市場にしかない。
http://www.asyura2.com/10/hasan67/msg/206.html

世界の債権市場5000兆円に比べ、商品の先物市場は規模が小さく、一番大きいWTIの石油市場でさえ、300分の1すらない15兆円にすぎない。それと共にトウモロコシや大豆など3兆円規模の市場へ5000兆円規模の債権市場から大量のマネーが流れてきたら、(朝倉氏がその著書で警告するように)未曽有の世界的なインフレが起こり、人口13億人の中国全土は大混乱するだろう。(数字は、朝倉慶著『すでに世界は恐慌に突入した』 2010年12月刊)