米中関係:アジア地域の切り分け論

2014年7月8日に北京で行われた第4回戦略安保対話。米中戦略経済対話の部会にあたる(Photo: China-US Focus から)
http://www.chinausfocus.com/special-coverage/sixth-round-of-china-us-strategic-and-economic-dialogue/
 
【◆◆以下の記事は、有料メルマガ11月13日号の一部です】
 
    【2】 米中関係:アジア地域の切り分け論
 
11月11-12日の日程で、10時間にわたる米中首脳会談が北京で行われました。
この会談をめぐってマスコミで、習近平主席がさかんに使う「新しい形の大国関係」(※ 注1)という言葉がクローズアップされています。
 
12日のテレビ朝日の『報道ステーション』では、この「新しい形の大国関係」という言葉は、中国が考える意味として「中国と米国が太平洋を真っ二つに分けて治める」ということだと説明していました。
 
テレビ朝日のこの説明は非常に不正確だと思います。
 
これは6年以上も前に、中国軍の幹部が米国のキーティング太平洋軍司令官に「太平洋を米国と中国で2分割支配をしよう」と提案したのを、そのまま説明に当てています。確かに習近平は今度の会談でも「太平洋は米国と中国を受け入れるのに充分広い」とは言いました。
 
私が反論するのは、この事を扱った箇所が、戦略国際問題研究所(CSIS)の報告書にあるからです。
 
Comparative Connections v.16 n.2 – US-China (9/15-2014 戦略国際問題研究所 PDFファイル)
http://csis.org/publication/comparative-connections-v16-n2-us-china
 
上記の報告書は、今年の夏、7月に北京で行われた第6回米中戦略経済対話(年1回)を総括した内容が書かれています。
 
その副題は「いまだに足踏みしている第6回戦略経済対話」とあります。
 
第6回米中戦略経済対話では席上で楊潔チ(よう・けつち)国務委員が米国側に繰り返し、次のように中国のポジションを説明したそうです。
 
『アジア地域と太平洋は米国と中国にとって充分広い。北京はこの地域での建設的な米国の関与を歓迎するが、米国を排除しようとするものではない』
 
 
これに対してケリー国務長官は次のように米国の立場を主張しました。
 
『米中関係の新しいモデルは、それぞれの勢力範囲があるとして、これらの(アジア太平洋)地域を米国と中国で<切り分けよう>として規定されるものではない。新しい関係のモデルは、世界的な行動・活動の規範についての相互の承認によって規定されるものであり、その行動規範は我々が長い間、国際的な行動の基準によって管理してきた価値と利益を守るものである。』(PDF3ページ)
 
The new model of relations is “not going to be defined by us carving up areas and suggesting there are spheres of influence, it’s going to be defined by our mutual embrace of standards of global behavior and activity that protect the values and interests that we have long worked by the norms of international behavior,” Kerry said.
 
ここでは中国の考える「新しい形の大国関係」が、アジア地域と太平洋を米国と中国で“carve up”((肉などを) 切り分ける)する考え方であることに注目したいと思います。
 
米中関係の新しいモデルについて、楊潔チ国務委員たちの要求する<切り分け論>に対してケリー国務長官の米国側は、国際法に則った新しい関係のモデル(“The new model of relations”)を主張し、両者の考え方には大きな隔たりがあります。
 
中国側は、アジア地域と太平洋に米中それぞれの勢力範囲を設け、地域や問題の性質・種類によって<切り分け>をした支配を国家の目標にしているのです。
 
(※ 少なくとも今の段階では。米国側が警戒しているように、アジア地域からの米国の排除が真の狙いかもしれません。)
 
中国が米国に対して要求しているアジア地域の<切り分け>とは、例えば大きな皿にのっているアジアという肉の塊を、尖閣諸島、台湾、南シナ海などは中国がいただき、残りは米国がというように切り分けて勢力・支配権を設定しようという中国の戦略構想を指すわけです。
 
今回の首脳会談でオバマ大統領は「新しい形の大国関係」(“New Type Great Power Relations”)という言葉を使わなかったそうですが、第6回の戦略経済対話をレポートしたこの米国の報告書でも、習近平が「新しい形の大国関係」という言葉を使ったとして記載されているだけです。