■ 新疆ウイグル政策とアフガニスタン戦争の激化
アフガニスタンの戦争が、中央アジアへ飛び火しつつあるようだ。
アフガニスタンと北で国境を接するタジキスタンやウズベキスタンで、この数ヶ月、治安警察とイスラム過激派の銃撃戦、テロ事件があり、とくにこの数週間にかけてそれらが続発しているようだ。
Tajikistan military kill gunmen near Afghan border (7月17日 ロイター)
http://www.reuters.com/article/featuredCrisis/idUSLH416154
7月22日付けの『タイム』誌は、-8月20日のアフガニスタン大統領選挙を控え米軍が増派され増強されているが、それによりイスラム過激派が北の中央アジアへ逃げ込んでいる-との見方をとりあげている。この動きについてはすでに米欧、ロシア、そして中国が警戒している。これらのイスラム過激派は、アフガニスタン戦争に参戦した中央アジアやロシアのチェチェンからの過激派が主なようだ。
How Afghanistan’s War Is Spilling into Central Asia (7月22日 タイム)
http://www.time.com/time/world/article/0,8599,1912069,00.html?xid=rss-topstories
7月20日には、アフガニスタン戦争で戦っていたイスラム武装組織 IMU (ウズベキスタン・イスラム運動)の3人が、タジキスタン国内に入り複数のテロを計画しているところを拘束された。
これらの事態に対し、タジキスタン政府は国内東部での武装勢力掃討作戦を行っており、アフガニスタン大統領選挙を前に、国境周辺および国内での警備強化を行っている。
Tajikistan to tighten security ahead of Afghan vote (7月22日 ロイター)
http://in.reuters.com/article/southAsiaNews/idINIndia-41233620090722?pageNumber=2&virtualBrandChanne
現在パキスタンでは、軍によるイスラム過激派・タリバン掃討作戦が功を奏している。またアフガニスタンでは戦闘が激化し、治安が急速に悪化している北部クンドゥス周辺ではドイツ軍が本格的攻撃を始めた。現時点でアフガニスタンのイスラム過激派が戦闘地域を移動させるとしたら、パキスタンではなくタジキスタンに逃げ込むのも有力な戦術だろう。
高地国家タジキスタンは、パキスタンとともに中国新疆ウイグル自治区に隣接している。
7月19日の英フィナンシャル・タイムズ紙は、今後中国政府が武装警察13万人を全国からウイグル自治区に派遣する計画だと報じた。またマレーシアの華字紙・光華日報は、「自治区全体がまるで反テロ訓練基地のようだ」と指摘しているそうだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090722-00000010-rcdc-cn
ウルムチ暴動(7月5日)以降のウイグル自治区での中国政府の統制強化は、タジキスタン、パキスタン、アフガニスタン国境からのイスラム過激派の流入を防ぐ、中国の国土防衛政策に組み込まれている。なぜなら、アフガニスタンのアメリカ軍が今以上に増強され戦闘がさらに激化すれば、パキスタンへ逃げ込むアルカイダを追ってアメリカ軍はパキスタンでも戦争を始め、パキスタン全土が混乱状態になることが既に予想されているからだ。
6月15日付けで宮崎正弘氏が、「突拍子もない考えかもしれないが、パキスタンが無政府状態に陥った場合、米中の軍事共同作戦が展開され、核兵器保護隔離作戦を展開するというシナリオも考えられるのではないのか」と述べているが、現実性の高い話だ。
http://www.melma.com/backnumber_45206_4512545/
次に、数ヶ月前からタジキスタンやウズベキスタンで治安警察とイスラム過激派の銃撃戦、テロ事件があり、とくにこの数週間にかけてそれらが続発していたという背景のなかで、7月5日におきたウルムチ暴動についてさらに考えてみたい。
■ 中国共産党のウイグル政策とナチスの類似性
7月20日付けで共同通信からウルムチ暴動についての分析記事が出ている。
2008年3月にチベットで起きたラサ暴動後、『中国、多民族国家の苦悩』を出版した中国漢族の陳恵運氏(埼玉県在住)は、
>>「漢族は数千年来、異民族による侵略を受けて国が何度も滅んだ苦難の歴史があり、おごりだけでなく、異民族に対する恨みもある」と述べ、「大漢族主義」と表裏一体の「被害者意識」を指摘する。また「祖国(中国)統一問題はナショナリズムを扇動しやすく、漢族を味方につければ共産党の求心力も高まる」とも話し、共産党指導部が「反独立」を政治体制維持にも利用しているとの見方を示した。
>>また、中国現代史が専門の水谷尚子中央大講師は「敵をつくって攻撃を集中するのは伝統的な階級闘争のやり方。毛沢東時代から残る政治の悪い癖」と指摘。当局による「問題のすり替え」を問題視する。
7月15日の産経新聞では暴動発生時の情報について、
>>解放南路で会ったウイグル族の男性は、日本人記者の身分証明書を確かめた上で、「平和的なデモだったのに突然、武装部隊が現れてウイグル族めがけて銃撃し始めたため、怒りが爆発した」との“目撃談”を語った。デモ隊は人民広場から解放南路を南下するうちに、周辺のウイグル族住民らを次々と巻き込んで雪だるま式に規模が膨らみ、やがて暴徒化したようだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090715-00000086-san-int
私は、ウイグル族はハメられたという見方をしている。
中国当局の情報統制のもと、昨年9月のリーマン・ショック以来、中国の失業者数は急増し、今年1月時点での2009年の中国の失業者は2400万人に達すると予想されている。
http://www.business-i.jp/news/special-page/oxford/200901170002o.nwc
中国政府は、各地で暴動が頻発している中、不満を抱く大量の失業者がさらに暴動に加わる可能性を最重視している。つまり失業者の増大が、国家政権の社会体制の動揺と崩壊をまねくことを恐れている。その大量の失業者や国民の経済的・社会的不満の矛先を、中国共産党は民族差別と異民族弾圧を利用してすり替えた。
「百年に一度」のL字型世界不況の中で、少数異民族との民族差別を利用し総人口の大多数92%を占める漢民族を味方につけ、祖国統一問題でナショナリズムを扇動し、政権の求心力を高めるという方法を、もし意図的に中国共産党が使っているとするなら、その極端な類型は、世界恐慌後600万人の失業者を抱えたドイツに現れたナチス政権に見い出すことができる。
以上で見てきたように、7月5日におきた新疆ウイグル自治区での大規模な暴動事件は、中国の国内外での2つの要因から中国共産党が取った手段と考えられる。
DOMOTO
http://www.d5.dion.ne.jp/~y9260/hunsou.index.html
新疆ウイグル政策とアフガニスタン戦争の激化 [ 付記 ウイグル政策とナチスの類似性 ]
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DOMOTO
世界情勢は非常に不安定化していますが、地球温暖化の不可逆的な暴走現象が始まるのは、現時点で2030年と言われています。