③ペルシャ湾での海上テロ戦争で、世界中の金利と日本国債の金利が急騰する

                              Simon Henderson

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「②ペルシャ湾での海上テロ戦争で、世界中の金利と日本国債の金利が急騰する」からの続き<<

http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/36285732.html

■ 結語:システム・ダウンと国債暴落後の日本

第1節で見てきたように、ホルムズ海峡周辺でイラン海軍による非対称戦が展開してタンカー・商船などの航行が阻害された場合、原油輸送の代替ルートは非常に阻害されたものになる。本稿のはじめに挙げたサイモン・ヘンダーソン氏の記事によれば、サウジアラビアの原油の一部はアラビア半島を横断して紅海へ、アラブ首長国連邦の原油のほとんどがオマーンを通る陸上パイプラインで運ばれる予定だ(ほぼ完成しており、5,6月までに稼動)。しかし、クウェート、イラクの南部地域、カタール、そしておそらくイラン自身、これらのすべての原油の輸出が止まると述べている。

サウジアラビアは中国にとって最大の原油調達先だ。中国は輸入で第3位のイランからの原油が途絶えた場合に備え、サウジなど他の産油国から調達を増やす方向で動いている。しかし、ワシントン中近東政策研究所が指摘するように、イラン革命防衛隊による非対称戦でペルシャ湾全体からの原油輸出が大きく阻害される可能性がある。これは日本についてもまったく同様だ。そしてその時こそ石油価格は暴騰し、それが長期化する可能性がある。

本稿のはじめで、ワシントン中近東政策研究所のサイモン・ヘンダーソン氏が、「米国・イスラエルとイランの衝突は、バーレーン国内のシーア派による国内的緊張を悪化させるだろう」と予測していることを述べた。エジプトのムバラク政権が崩壊した昨年2月の「アラブの春」では、バーレーンのシーア派による政変がサウジアラビアの石油地域である東部州でのデモと連動する恐れをマスコミが報じた。

現在の、シーア派国家イランへのアメリカを中心とした制裁が、バーレーンとサウジの政変へ波及する可能性、イラン政府のバーレーンに対する過去の政権転覆工作については、下記の拙稿をご参考にしてほしい。

ペルシャ湾の火薬庫 ―バーレーンをめぐるサウジとイランの衝突― (2011年3月8日)

http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/34602314.html

最悪の事態を想定した場合、バーレーンとサウジアラビアの情勢が動揺すれば、ペルシャ湾情勢と石油価格はさらに混乱する。

今後の中東情勢を考えるにあたり、まず冒頭で挙げた1月15日の拙稿によって、イスラエルと米国、そしてイランの今後の動向について概観的なスケジュールの予測をまとめてみた。

ホルムズ海峡とペルシャ湾において、まだイラン軍の本当の戦術はその姿を現していない。第1節で紹介したワシントン中近東政策研究所のレポートは、ペルシャ湾でのイラン海軍のテロ活動やゲリラ戦術について過去の歴史的事例を挙げてペルシャ湾の危機を警告している。

1月5日のAFP通信はアメリカの政治情勢について、「共和党議員らの強硬論と対照的に、国防総省や米軍高官からはイランを空爆してもせいぜい核開発を数年遅らせる程度の効果しかなく、リスクが大きすぎるとの警告が繰り返し出されている」と伝えている。

イスラエルのバラク国防相はCNNのインタビューで、今年の夏頃までにイスラエルはイランを攻撃することを示唆した発言をした(冒頭拙稿参照)。オバマ大統領の再選がかかったアメリカの大統領選挙は11月に行われる。オバマ大統領が選挙の直前にイラン開戦を利用するにせよ、しないにせよ、イスラエルが暴発したらアメリカは再び中東でのテロ戦争に巻き込まれる。イランとイスラエルが中東情勢と世界経済を混乱させれば、アメリカはそれを収拾する役割を果たさざるを得ない。

ホルムズ海峡とペルシャ湾の混乱による世界的な金利の急騰と高インフレ、そして日本国債の金利急騰については第2節で扱った。ヘッジファンドのジョージ・ソロスは世界の資本主義システムの現状について、「人々はシステムが現実に崩壊したことを理解していない」と述べているそうだ。

システムが崩壊した後の国際情勢の中で、「国債暴落後の日本」をどのように創っていくべきか、それを、気づいた人達から考えていくことが重要であると思う。

■ 参考リンク

イラン・イラク戦争(1980-1988)

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%AF%E6%88%A6%E4%BA%89

タンカー戦争

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%82%AB%E3%83%BC%E6%88%A6%E4%BA%89

イランの報復戦争とイスラモファシズムの現代 (拙稿 2008年7月21日)

http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/13319656.html

イスラエルはイラン攻撃で国家崩壊する ―アロー・ミサイル防衛システムでは国は守れない―(拙稿2010年1月2日)

http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/30855702.html

ペルシャ湾の火薬庫 ―バーレーンをめぐるサウジとイランの衝突―(拙稿 2011年3月8日)

http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/34602314.html

DOMOTO

http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735

http://www.d5.dion.ne.jp/~y9260/hunsou.index.html