【前編】 中国のSDR戦略はドル・システムを衰退させるかーゴールドを含むポスト・ドル支配体制ー

中国国内の金の産出量と香港からの純輸入量の推移
(●グラフ画像右下端にポインターを当てると拡大表示できます)
 
【◆この記事は有料メルマガ8月28日号の一部です】
 
【目次】
【1】 中国の金保有量の推定
【2】 中国のSDR戦略
【3】 BRICS主導下のSDR構想
 
8月14日の前号では、中国のゴールドの購入について、経済学者のジェームズ・リカーズ氏が、「中国は新しい金本位制を作るためにゴールドを買っているのではない」と主張していたところまでをお伝えしました。
 
■前号:
中国はなぜゴールドの保有量を増やしているのか
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/38950338.html
 
ベストセラー『通貨戦争』の著者でもあるリカーズ氏は、過去に「国防総省やアメリカの謀報コミュニティ、大手ヘッジファンドなどにグローバル金融について助言しており、国防総省が実施した初の金融戦争ゲームの推進役を務めた」ことがあります(邦訳著書『通貨戦争』著者略歴から)。
 
前号の2013年8月のフォーブスの記事と、ゴールドとSDRについて書かれた『ゴールド・ブローカー・コム』の記事を読むと次のようなことが言えます。
 
『中国が大量のゴールドを買っているのは、中国は将来的にSDRが基軸通貨となった時に(現在はまだ特別引き出し権という権利)、そのSDRを構成する準備通貨としての人民元の価値を高め、世界的に魅力的にすることを目標としているからである。』
 
Rumors Of A Chinese Gold Standard Are Overblown: CPM’s Christian And Author Jim Rickards (2013-8/12 Forbs)
http://www.forbes.com/sites/kitconews/2013/08/12/rumors-of-a-chinese-gold-standard-are-overblown-cpms-christian-and-author-jim-rickards/
 
Gold and the Special Drawing Rights (SDR) (4/02-2014 GoldBroker.com)
https://www.goldbroker.com/en/news/gold-special-drawing-rights-sdr-458
 
『ゴールド・ブローカー・コム』のゴールドに関する動向の記事は、米国の金融投資サイト『ValueWalk』でも時々転載されています。
 
    【1】中国の金保有量の推定
 
この知見について、まず、中国の公的な金準備は2009年の1054トン以来数字が変わっていないではないかという疑問が出てくると思いますが、これについては前号でも触れました。中国政府は金保有量についてIMFへの届け出を未発表にしているようです。この指摘は、中国の公的金保有量を論じる専門家の英文記事に散見されます。
 
リカーズ氏は中国の公的金保有量の発表の更新は6年ごとに行われていると言い(2009年の前が2003年)、現在の推定量を4000トンから5000トンとしています。
 
先に紹介した“Gold and the Special Drawing Rights (SDR)”の記事の執筆者であるダン・ポペスク氏も推計で約4000トンと見込んでいます。ダン・ポペスク氏はゴールド市場と国際通貨システムの専門家で、約4000トンの算定根拠として中国国内の金の産出量と香港からの純輸入量の推移などから推計しています(冒頭グラフ参照)。
 
この保有量は2009年のおおよそ4倍に当たるもので、中国政府が、いま行われている経済構造改革の裏で、ゴールドの積み増しを急加速させてきたことを示唆しています。
 
ダン・ポペスク氏:China’s Role in the Gold Market (6/10-2014 GoldBroker.com)
https://www.goldbroker.com/en/news/china-role-gold-market-514
 
参考値としてワールド・ゴールド・カウンシルの7月の統計で見ると、中国は世界第7位で1054トンですが、推定量の4000トンから5000トンで見ると第2位になります。ワールド・ゴールド・カウンシルの統計がどこまで信頼できるかわかりませんが、これは米国の8133トンに次ぐ量になります。
 
世界各国の公的金保有量の比較については、ワールド・ゴールド・カウンシルが毎月データを更新しています。本稿ではとくに中国以外では、米国、ロシア、ユーロ圏などの保有量に注目しています。
http://www.gold.org/research/latest-world-official-gold-reserves