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中国のSDR通貨バスケットについての長期戦略は、マスコミ報道とはだいぶ違うようです。

IMF(国際通貨基金)理事会は2015年11月に、人民元をSDRを構成する通貨のひとつにすることに決定しました。新しい通貨バスケットSDRは2016年10月1日から実施されます。その構成比は米ドルを41.7%、ユーロを30.9%、人民元を10.9%、日本円を8.3%、英ポンドを8.1%と定めます。これによりIMFは人民元を、日本円を抜く世界第3の通貨と認めたことになります。

中国の通貨世界戦略について、私はこれまで記事を書くことが何度かありましたが、次の記事ではSDRへの人民元の追加をめぐる、一般の受け取り方とは違う中国の戦略が露わになります。

中国人民銀行の副総裁である易綱氏はIMFに対して、SDR通貨に主要な新興経済国(BRICS=ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の通貨を含めることを、2015年のSDR見直しで検討するべきであると主張していました。同時に易綱副総裁はIMFに対して、BRICSなどの通貨を含めた「影のSDR」(“a shadow SDR”)の研究をより深めて行うよう要請していました。

The deputy governor of the PBC (and also the head of SAFE), Yi Gang, urged the IMF to conduct more research into a shadow SDR and argued that “the IMF should consider including currencies of the BRICS [Brazil, Russia, India, China and South Africa—the world’s largest fast-growing emerging economies] countries and other emerging economies when it next reviews its SDR system by 2015.” But Yi was also quoted as saying that “China is in no hurry as the SDR has so far been only a symbolic currency basket.”80

CHINA’S EFFORTS TO EXPAND THE INTERNATIONAL USE OF THE RENMINBI (米中経済安保調査委員会 February 4, 2016 PDFファイル)
http://origin.www.uscc.gov/Research/china%E2%80%99s-efforts-expand-international-use-renminbi

この報告書『人民元の国際的な使用を拡大しようとする中国の取り組み』を書いたのは、ブルッキングス研究所の著名な中国経済の専門家エズワー・プラサド氏です。
プラサド氏は以前に、IMFの調査部門の金融研究部の責任者であり、その前はIMFの中国部門のトップでした。

上記の箇所には注釈が付けられており(80番)、この箇所と関連が深いロイターの記事が記載されていたので下記にそのリンクを記します。

China FX head proposes adding BRICS currencies to SDR –report (ロイター May 5, 2011)
http://af.reuters.com/article/currenciesNews/idAFL3E7G500820110505?pageNumber=2&virtualBrandChannel=0&sp=true

プラサド氏は、この報告書の中で人民元をSDRに含める決定がされた経緯を説明する際に、人民銀行の周小川総裁が2009年3月の論文で、SDRに「主要な新興経済国」の通貨を組み込むことを提言したことを書いています。

In March 2009, PBC Governor Zhou Xiaochuan issued a paper, “Reform the International Monetary System,” on the PBC’s website.75 The paper laid out the case for SDRs to play a more prominent role in global finance and suggested that the composition of the SDR needed to keep up with changing times by incorporating the currencies of the major emerging market economies.

易綱副総裁がIMFに対して、BRICSなどの通貨を含めた「影のSDR」(“a shadow SDR”)の研究を始めるよう要求したと、上記のロイター記事が伝えたのは2011年5月ですから、これは周総裁の論文発表の2年後になります。

世界経済をみるとBRICSは全体的に景気沈滞がひどいですが、ブラサド氏はこのロイター記事での易綱副総裁の次の言葉(2011年5月)を引用しています。

「SDRは今までのところ、象徴的な通貨バスケットでしかないので、中国は(『影のSDR構想』について)急がないで辛抱強く(ゆっくり構えて)行動していく。」

Yi, whose comments appear to elaborate on Zhou's initial proposal, said that China is patient.
"China is in no hurry as the SDR has so far been only a symbolic currency basket," Yi was quoted as saying.


SDR(特別引出権)は、IMFの加盟国の準備資産を補完する手段として、IMFが創設した国際準備資産です。仮想の準備通貨とも言えます。

私は、2014年8月に中国のゴールドの大量保有とSDR計画を結びつけて、「BRICS主導下のSDR構想」として考察しましたが(下記リンク記事)、中国は米国主導のIMF体制に単純に取り込まれているわけでは決してないことが、プラサド氏の報告書やロイターの記事からわかります。そして、中国が米国主導の通貨体制に対抗する通貨体制を長期的に構想している事が窺い知れます。

【後編】 中国のSDR戦略はドル・システムを衰退させるか−ゴールドを含むポスト・ドル支配体制− ( 拙稿 2014/08/28)
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/38999017.html


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