戦略国際問題研究所(CSIS)が年3回発行する、ユー・ビン氏の中露関係のレポートの1月分を部分的に読んでみました。
Comparative Connections v.17 n.3 – China-Russia (戦略国際問題研究所 JAN 15, 2016)
http://csis.org/publication/comparative-connections-v17-n3-china-russia
この中にロシアが中国への売却契約を結んだスホイ35戦闘機(Su-35)についての報告があります。中国はこのSu-35の導入によって、軍事的にいくつかの戦略目標を達成するための強力な手段にしようと考えています。それは尖閣問題や南シナ海などでの軍事的優位性の獲得です。
Su-35は第5世代戦闘機である米国のF-22やF-35と能力的に非常に接近しており、Suシリーズのどの機種、中国の同タイプのどの機種よりも非常に抜きん出ている。これはSu-35が中国に南シナ海での優位性をもたらすであろう事を意味している。
(中略)中国空軍の航空装備の専門家であるFu Qianshao氏は、「Su-35はその最高度の機動性能により、米国のF-35ライトニングⅡを上回るほど十分強力である」と述べている。(上記レポートより)
Su-35の売却契約は全部で24機で、製造元のコムソモルスク・オン・アムールによれば、ロシアは最初の4機を2016年中に引き渡し、残りを2018年の終りまでに中国へ納める見通しです。
The Russians will deliver the first four Su-35s to the PLA in 2016 and the remainder are expected by the end of 2018, according to the aircraft’s Russian producer, the Komsomolsk-on-Amur Aircraft Production Association.
同様の内容がタス通信を通じて2月に報道されています。
中国に最新鋭戦闘機4機供与へ=日本の安全保障に影響も-ロシア (時事通信 2016/02/19)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201602/2016021900875
そして3月11日のNHKの報道では、
南シナ海で中国が造成する人工島について、アメリカの情報機関を統括する国家情報長官は、早ければ年内にも戦闘機などを配備できるインフラや施設が完成しこの海域で攻撃的な軍事力を素早く展開できるようになるとして、強い警戒感を示しました。
中国の人工島 年内にも軍事施設完成 米が警戒感 (2016/03/11 NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160311/k10010439321000.html
この報道記事に、南シナ海の人工島に「年内にも戦闘機などを配備できる施設が完成し」とありますが、上で述べたように人工島の施設の完成に時期を合わせて2016年からSu-35を配備することが可能です。
それにより、ユー・ビン氏が予測しているように南シナ海での中国軍の優位性は高まり、軍事関係者が指摘するように、いずれ南シナ海上空に防空識別圏が設定される可能性は高いと思います。
■関連記事:
北東アジアでの中国・ロシアの戦略的協力―日米同盟 VS 中露の戦略的協力―( 拙稿 2015/6/26)
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39461397.html