①ペルシャ湾の火薬庫 ―バーレーンをめぐるサウジとイランの衝突―

目次

■ ① バーレーンとイラン

■ ② オマーンのリスク

■ ③ イランの中東支配

湾岸産油国では王政デモがバーレーンとオマーンへ及んでいる。サウジアラビアでのデモはまだ小規模なもので多くて300人程度だ。3月4日、バーレーンの首都マナマ南郊で、シーア派とスンニ派が一時衝突する事態が起きた。2月のデモ発生後、バーレーンで両派の衝突が伝えられるのは初めてだ(3月5日 産経)。

■ ① バーレーンとイラン

リビアに反政府デモが飛び火し、すでにバーレーンではシーア派によるデモが起こっていた2月18日、米保守系シンクタンク、「アメリカン・エンタープライズ」のマイケル・ルービン氏がバーレーン問題の重大さを提起している。

What To Do about Bahrain

http://www.aei.org/article/103193

バーレーンはアメリカ海軍第5艦隊が司令部を置くアメリカの中東戦略上の要衝であり、そこではアフガニスタン、イラク、イラン、ペルシャ湾岸、ソマリア沖湾岸などの軍事作戦がサポートされる。

ルービン氏の指摘の一つは、シーア派が6~7割を占めるバーレーンを対岸のイランが併合する可能性があるというもので、ほぼ同様な指摘を陰謀論系の田中宇氏が数日後にしている。

「バーレーンの混乱、サウジアラビアの危機」 (2月21日)

http://tanakanews.com/110221bahrain.htm

イランは1970年までは歴史的に「議論の余地のない主権」として、バーレーンを正式に自国の領土として主張してきたが、1971年のバーレーン独立時にイランのパーレビ国王がその権利主張を明確に放棄した。ところが、1979年のイスラム革命後、イランは再びバーレーンに対する深い関わりあいを主張し始めた。

バーレーンにおける初めてのシーア派暴動は1979年に起きている。1980年にもシーア派住民の暴動が起きたが、1981年に政権打倒を目指して起きたシーア派のクーデター計画の発覚で、バーレーン政府はイラン国内で訓練された破壊活動グループを逮捕したと発表。政府は同グループがテヘランに本部を置く「バーレーン開放のためのイスラム戦線」に属することを明らかにした(『イスラム急進派』 岡倉徹志著 1987年刊 岩波書店)。

田中宇氏によるとその後、1980年代以降90年代を通じ、イランはバーレーン政府の政権転覆を試み画策してきたようだ。

ルービン氏によれば、イランの権力者達はサダム・フセインがクウェートについて語ったように、バーレーンについての領有をこれまでも繰り返し語ってきている。イランの高官たちはペルシャ湾についての構想を話す時いまも、バーレーンのスンニ派支配階級を潰し、アメリカの支配から自由にするためにバーレーンへのイランの支配を取り戻すことを話すそうだ。

When Iranian officials talk about their desire to transform the Persian Gulf into a Persian lake, they envision sending Bahrain’s Sunni ruling elite packing and returning Iranian dominance to Bahrain in order to rid the region of American influence.

バーレーンの政変が国際情勢において重大なのは、米第5艦隊の司令部が位置するという事のほかに、一日の世界の原油生産量の10%を占め、シーア派人口が多くを占めるサウジアラビア東部州でのデモと連動する恐れがあるからなのはマスコミの伝える通りだ。

この問題について、ワシントンに籍をおくイスラエル系シンクタンク、「ワシントン中近東政策研究所」(The Washington Institute for Near East Policy )のサイモン・ヘンダーソン氏は、下記の記事で分析を行っている。

Gulf States Mull Massive Aid to Oman and Bahrain (3月4日)

http://www.washingtoninstitute.org/templateC05.php?CID=3321

ここでの重要な点の一つは、シーア派の要求に対してバーレーン政府が譲歩することのないように、サウジアラビアが強く圧力をかけているという事だ。バーレーンのシーア派が要求する事柄と同様な事がサウジ国内へ波及することを恐れるのがその理由だ。

バーレーンはドバイ、カタールに続く中東第3位の金融センターで、サウジの政治的影響力が強く、経済的にも密接な相互関係にある。中東情勢に通じている佐々木良昭氏の3月6日のブログで述べられているように、バーレーンはコーズウェイ(陸橋)でつながったサウジアラビア国内の一部、両国は一体といった感覚であるそうだ。

http://www.tkfd.or.jp/blog/sasaki/2011/03/no_991.html

それゆえ、サウジ政府は陸橋で続いたバーレーンのデモを国内のデモの前線と捉えており(ルービン氏)、英国のテレグラフ紙の伝えるところでは、サウジのアブドラ国王は、バーレーン政府に対して「若しバーレーン政府が自力でデモ隊を解散させることができないのならば、サウジアラビアの警備隊を派遣する」とのべたそうだ。3月11日と20日にはフェイスブックを使ってデモの呼びかけが行われているが、現在のところ多くて300人程度の小規模デモにサウジが厳しい警戒態勢を強めているのはそのためだ。

http://markethack.net/archives/51701742.html

これまでもバーレーンでのデモではサウジの機動隊が出動することが行われていたが、2月21日の毎日新聞では、クリントン米長官はサウジアラビアの軍事介入を恐れているとワシントン支局の記事が掲載されている。

http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20110222k0000m030065000c.html?inb=yt

サウジの機動隊の出動について、前述のアメリカン・エンタープライズのルービン氏の記事では、今回のデモではイランが機動隊を介入させる可能性を指摘している。この見方については、イランは国内でデモを抱えているので、たとえスンニ派政権の転覆であっても中東で4番目の政権転覆ドミノを支援することはないだろうという見方もできる。

しかし、3月3日の時事通信によればクリントン米長官は、「上院歳出委員会の公聴会で、イランが中東各国の政変に影響力を行使するため、エジプトやバーレーン、イエメンの野党や反政府勢力と直接・間接的に接触していることを明らかにした」。

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クリントン米国務長官は2日、上院歳出委員会の公聴会で、イランが中東各国の政変に影響力を行使するため、エジプトやバーレーン、イエメンの野党や反政府勢力と直接・間接的に接触していることを明らかにした。(中略)同長官は、イランが「情勢に影響を与えようと全力を尽くしている」と強調。レバノンのシーア派イスラム教組織ヒズボラやパレスチナのイスラム原理主義組織ハマスなどを通じ、エジプトの野党勢力と連絡を取っていると指摘した。(3月3日 時事通信)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110303-00000061-jij-int

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アメリカの対外情報能力については、CIAをはじめとする諜報機関が「9.11テロ」以降、DHS(国土安全保障省)の下に置かれ、巨大な権限と力、そして情報収集能力が大幅に低下している事が知られている。しかしこの公聴会でのクリントン長官の報告で、バーレーンへのイランの介入が現実味を帯びてきた。

サウジの機動隊に対して、イランがバーレーンへ革命防衛隊(IRG)を送り込んだ時のオペレーションを、すでにアメリカは検討しているはずだ。そのような事態になれば世界の原油価格は一気に高騰し20年ぶりの湾岸危機になる。

折りしも、2月26日、政権転覆を図ったとして当局に手配されているバーレーンのイスラム教シーア派系野党指導者、ハサン・ムシャイマ氏が、ロンドンから帰国している(2月27日 日経)。

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②ペルシャ湾の火薬庫 ―バーレーンをめぐるサウジとイランの衝突―

http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/34602334.html

DOMOTO

http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735

http://www.d5.dion.ne.jp/~y9260/hunsou.index.html