①ヘッジファンドは先物主導で日本の国債市場を動かしている

レイ・ダリオ:「債券の空売りは最大の投資機会だ」と公言している、世界最大級のヘッジファンドのファウンダー

目次

■ ① 債券先物主導による国債現物市場の混乱

■ ② アベノミクスで日本国債トレーダーが増加

■ 結:日銀と世界最大級のヘッジファンド

自民党安倍政権と黒田日銀は、「世界で最も不安定でリスクの高い金融市場」(モルガン・スタンレー、米CNBC)を作り出した。世界各国の金融緩和が広範囲に広がるなか、世界で最も危険な金融緩和によりマネーがバラ撒かれる日本へ、世界中からいまもヘッジファンドが集っている。

4月4日、黒田日銀の「異次元緩和策」の決定で「世界で最も不安定でリスクの高い<国債市場>が、日本の政策立案者たちによって作り出された」(米CNBC)。この黒田日銀の「異次元緩和策」の決定により、ヘッジファンドなど海外投機筋や外国金融機関が、日本の国債市場を急速にターゲットとする動きが起こっている。

■ ① 債券先物主導による国債現物市場の混乱

東京証券取引所の4月の「投資部門別 国債先物取引状況」によると、国債先物を売買する海外投資家は全体の37.9%を占める。

投資部門別 国債先物取引状況 (4月1日~4月26日)

http://www.tse.or.jp/market/data/sector/b7gje6000000jkrj-att/J_jgbf_m1304.pdf

国債先物取引・国債先物オプション取引

http://www.tse.or.jp/market/data/sector/index.html

5月10日、5月13~15日に日本の国債市場で起こった利回りの乱高下について、金融アナリストの久保田博幸氏はすでに、ヘッジファンドなどの海外投機筋が「債券先物売り、株式先物買い」を仕掛けた可能性を指摘していた。久保田氏は日本国債の市場動向に詳しい。(久保田博幸-Yahoo!ニュース (5月15日)

http://bylines.news.yahoo.co.jp/kubotahiroyuki/20130515-00024959/

また久保田氏は、1143円の株価暴落と国債金利の乱高下が同じ日に起きた5月23日も、「まとまった債先売り・株先買い」とその反対売買が入った可能性があると指摘している。この<先物取引>での「債先売り・株先買い」(債券先物売り・株式先物買い)そしてその反対売買の「債先買い・株先売り」は海外勢がよく使う方法だ。これにより国債市場の乱高下と株式市場の乱高下、そしてそれに為替の変動を組み合わせて仕掛け、国債・株式の両市場から大きな利益を得られる。

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「23日の市場の動きと今後への不安」 (久保田博幸-Yahoo!ニュース 5月25日)

http://bylines.news.yahoo.co.jp/kubotahiroyuki/20130525-00025192/

(引用開始)

5月23日の東京市場の動きは、記録にも記憶にも残るものであったと思われるので、少しまとめておきたい。

異変がまずあったのが債券市場。債券先物は寄付から前日比1円安と急落した。FRBが早ければ6月にも「出口」というか「正常化」に向けた動きをはじめる可能性が出てきたことで、22日に米国の長期金利が2%台に乗せたことがひとつの要因。22日の日銀金融政策決定会合後の黒田総裁の会見で、長期金利の上昇についてはそれほど懸念してはいないと認識され、これも嫌気されての債券売りであったと思われる。

債券先物は141円01銭に買い戻され、その後再び140円90銭まで売られて、8時53分にサーキット・ブレーカー発動し取引が10分間停止した。現物債は10年債主体に売られ、10年328回の利回りは1.000%ちょうどまで上昇した。つまり日本の長期金利が昨年4月5日以来の1%台となったのである。

FRBの出口が意識された外為市場では円安ドル高が進み103円台に。この円安もあって、23日の東京株式市場は買いが先行し、一時前日比300円を超す上昇となり、日経平均は16000円手前まで上昇した。

この一連の動きから、海外ヘッジファンドなどは103円台の円安と、それによる日経平均先物買い、同時に債券先物の売りを仕掛けていた可能性がある。22日の日米の中銀トップの発言は債券の売り材料ではあったが、先物のストップ安を誘うほどのものではなかったと思う。先物とともに現物はベンチマークの10年債主導の動きであり、メガバンクなどの動きが主導していたようにも思えず、海外投資家の仕掛け的な動きの可能性が高かったのではなかろうか。

債券は売り一巡後は買い戻され、日経平均は16000円手前で買いは止まり、上値が重くなった。動きがあったのが10時10分で、日銀はシグナルオペと言える1年物共通担保資金供給(全店、固定金利方式)を午後ではなく午前中にオファー、さらに国債入札日(流動性供給入札)にも関わらず国債買い入れ(残存期間1年以下と1年超5年以下)をオファーした。このシグナルオペに債券先物は反応し、債券先物は買い戻しが加速、反対に日経平均先物は戻り売りに押され、中国の5月製造業PMIの低下などもきっかけに下げ幅を拡大させた。

午前中のタイミングで、朝方の債先売り・株先買いのポジションをひっくり返してきた可能性がある。株式市場では次第に売りが売りを呼ぶような動きとなり、反対に債券は先物や10年債主導で、一気に上昇し142円台に。ただし、超長期債は14時以降はほとんど出合いなく、まさにディーリング相場となっていた。

日経平均先物は震災後の2011年3月15日以来のサーキッド・ブレーカーが発動し、結局、前日比1143円安と2000年4月以来の大きな下げ幅となった。

債券先物は142円74銭まで買い戻されて、大引けは61銭高の142円51銭。現物債は10年債が一時の1.000%から0.825%まで戻った。5年債は0.455%から0.355%と0.1%も当日中に利回りが低下した。以上が23日の債券と株の動きであった。

(引用終了)

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■ ② アベノミクスで日本国債トレーダーが増加

日本の国債市場では今後、海外ヘッジファンドが、海外投資家比率の高い債券先物市場で取引ウェイトをさらに大きくし、先物主導で不安定化する現物国債市場をさらに大きく混乱させていくことが予想される。現にこの5月の国債市場では、現物国債市場が債券先物市場につられる形で大きく乱高下し、影響を受けている局面が頻繁に起きている。

またヘッジファンド以外でも、先物現物を問わず、日本の国債市場を進出の対象へと乗り出してきている外国金融機関が、日銀の「異次元緩和策」決定以後、先月4月から増加しているようだ。

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世界的な巨大投資銀行を主な顧客とする、人材コンサルティング会社モーガンマッキンリーの熊沢義喜氏によると、外銀は日本国債のトレーディングや商品開発の専門家を募集し始めているという。

アベノミクスで日本国債トレーダー採用増加 (4月30日 フィナンシャル・タイムズ)

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGV30001_Q3A430C1000000/

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英フィナンシャル・タイムズ誌では、ヘッジファンド業界に詳しいサム・ジョウンズ氏が4月の記事で、アベノミクスは多くのヘッジファンドを生き返えらせたと言っていた。彼の5月2日の記事では、日本に焦点を当てて多くの利益を上げているヘッジファンドの現在の状況を伝えている。下記はその記事の結びの部分だ(括弧内は私が記事文脈から補足)。

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Managers are even starting to look to Japanese government bond markets – which have so far proved resilient – as the next source of potential returns.

“A lot of people had moved out of shorting the yen and into the Nikkei this last month, so that paid off for them,” said Mr Lawler. “There are people who have now started to put on positions shorting JGBs. It’s very possible that could end up being the third big leg of this trade.”

ヘッジファンドのマネージャーたちは潜在的な次の収益源として、これまで弾力性を示してきた日本の国債市場にさえ目を向け始めている。

(GAMインターナショナルのポートフォリオ・マネージャーである)アンソニー・ローラー氏は次のように述べた。

「多くのヘッジファンド・マネージャーたちは、先月(4月)に、利益を上げるために円売りから離れて日経株の方へと移った。そして、いま、日本国債に売りポジションを置き始めている人たちがいる。日本国債は結局、日本での売買取引での(円、株につづく)第三の大きな足(第3の大きな収益源・市場)となることは非常に起り得ることだ。」

Japan-focused funds reap bumper profits on Nikkei and yen bets (5月2日 フィナンシャル・タイムズ)

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/e51e57b0-b348-11e2-95b3-00144feabdc0.html#axzz2SEynwCwD

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5月10日、5月13~15日に日本の国債市場で起こった利回りの乱高下について、慶応義塾大学准教授の小幡績氏はヘッジファンドの一部が仕掛けた可能性を指摘していた。

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http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/37842410.html