イスラエルとサウジの軍事協力の可能性 / 終わらない米国の5つの戦争

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【◆◆以下の記事は有料メルマガ1月8日号の一部です】
 
【目次】(※ 一部)
【序】 日本とペルシャ湾での中東冷戦
【1】 イスラエルとサウジの軍事協力の可能性
【付】 終わらない米国の5つの戦争
 
    【序】 日本とペルシャ湾での中東冷戦
 
昨年10月まではロシアのプーチンの戦略について書くことが多かったのですが、原油下落にともなうプーチンの勢いが鎮まるにつれ、中東地域で「イスラム国」以外で、サウジとイランの「新中東冷戦」の緊迫化が目立ってきています。
とくにサウジ政権を取り囲む国内外の中東情勢は、世界の原油価格や私たちの暮らしに大きく関わってきます。
 
キッシンジャー氏などは、中東の現状においては「イスラム国」よりもイランの方がより重大で困難な問題であると言っています。また戦略国際問題研究所(CSIS)のアンソニー・コーデスマン氏は先月12月の長編レポートのなかで、中東での紛争国とそれに関わるテロ組織のすべてのなかで、イランの問題が一番重要だと言っています。
 
私は日頃、戦略国際問題研究所(CSIS)の中東地域の新着記事の題名にはなるべく目を通すようにしていましたが、11月からイランとサウジが対峙するペルシャ湾をはさんだ軍事的リスクに関するレポートがいくつか出てくるようになりました。
 
(「新中東冷戦」という語はブルッキングス研究所のグレゴリー・ゴーズ氏が、2013年7月ぐらいの記事から使っています。)
 
中東地域、とくにペルシャ湾をはさんだ戦争リスクでは、我が国では安倍政権が集団的自衛権の容認を推し進めようとしているので、米国から協力しろとかなりの圧力をかけられるようになると思います。
 
    【1】 イスラエルとサウジの軍事協力の可能性
 
サウジをはじめとする湾岸諸国が、米国のオバマ政権に非常な懐疑心や不満をもっていることは、昨年12月25日号のメルマガでお伝えしました。
 
とくにサウジは、中東での米国の軍事力とそのプレゼンスが弱まることからくる、イランや「イスラム国」に対しての非常な脅威を持っています。
 
イランに対してはイスラエルも核兵器開発への脅威を持っていますが、イスラエルは、サウジとイランが起こすペルシャ湾岸地帯の軍事的リスクの高まりを非常に注視しています。
 
昨年12月2日に行われたワシントン中東政策研究所のディスカッションで、イスラエルのイタマ-ル・ラビノビチ元駐米大使が、次のように言っています。
 
『イスラエルにとっての前向きな、先を見越した選択肢の一つは、湾岸諸国をふくむスンニ派の国々と戦略的なパートナーシップを築くことかもしれない』
 
ラビノビチ元駐米大使は、「サウジとカタールは、とくにイスラエルとの協力に前向きである」という意見を述べています。
 
Rabinovich, … One proactive option for Israel moving forward may be to form strategic partnerships with Sunni Muslim states, including those in the Gulf. Rabinovich expressed his belief that the Saudis and Qataris, in particular, would be willing to cooperate with Israel.
 
Israel’s Geostrategic Position at a Time of Regional Instability (12/2-2014 ワシントン中東政策研究所)
http://www.washingtoninstitute.org/policy-analysis/view/2014-scholar-statesman-award-dinner
 
ラビノビチ元駐米大使が提示したイスラエルのこの戦略的オプションは、サウジなどスンニ派諸国がもつ、米国に対する信頼感の低下から生まれるニーズを戦略に活用しようとするものです。
この記事の中では、その報告者がこう述べています。
 
『ISIS、イラン、そしてムスリム同胞団という共通の脅威を考えると、イスラエルと湾岸諸国は、これまでにかなりの目立たない協力をしてきた。しかし、これを率直で継続していくパートナーシップに変えることができるかどうかは現時点では不明である』
 
このイスラエルとサウジを軸とした協力体制の構想は2013年にはもうあったそうで、ブルッキングス研究所のブルース・リーデル氏が、2013年11月の記事で取り上げています。リーデル氏は、CIAや国家安全保障会議(NSC)のスタッフを長年務めた中東と南アジアの専門家です。
 
 
リーデル氏によると、イスラエルとサウジには、お互いの敵に対して暗黙に内密な協力をしてきた長い歴史があるそうです。しかし、2013年11月時点ではサウジは、それ以上のどんな関心も持っていないと彼は見ていました。
 
リーデル氏の結論はこうでした。
 




・・・しかし、両国(イスラエルとサウジ)がもつイランへの嫌悪と米国への苛立たしさは、ユダヤ人の国とサウド王国のあいだの、より接近した関係の前兆にはおそらくならない。イスラエルはより接近した関係を歓迎する。しかしサウジアラビア人はイスラエルを信用していない。サウジアラビア人はパレスチナ人の権利を支持し、イスラエルの核プログラムが取り除かれるのを見るのを望んでいる。

 




しかしながら、リーデル氏のこの見解は2013年11月のもので、それから1年余りたった現在、イランにしてもISISにしても、サウジにとって脅威の状況は少しも改善されていません。とくに昨年11月以降の戦略国際問題研究所(CSIS)は、イランによるスンニ派湾岸諸国への脅威が、よりいっそう増大していることをいくつかの報告書で伝えています。

 
    ■ 終わらない米国の5つの戦争
 
現在アメリカは、アフガニスタン、ISIS、イラク、シリア、イエメンと「アラビア半島のアルカイダ」というように『5つの進化している戦争』に参加しています。
 
戦略国際問題研究所の幹部であり、広範な軍事問題の研究と地域的には中東と中国の専門家として知られるアンソニー・コーデスマン氏は、これら5つの戦争について次のように述べています。
 
『米国が撤退し負けることを選ばない限り、これら5つの戦争のどれもが、次の米国の大統領が就任する時までに、終わっている見込みはほとんどない』
 
The Obama Administration: From Ending Two Wars to Engagement in Five – with the Risk of a Sixth (12/03-2014 戦略国際問題研究所)
http://csis.org/publication/obama-administration-ending-two-wars-engagement-five-risk-sixth