トルコのエルドアン大統領とプーチン(2012年12月 BBC )
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【2】ロシアとトルコ:中東と地中海への布石
─プーチンの欧州への策略―
米国のシンクタンクからもリンクされる中東専門ウェブサイト『アル–モニター』は、昨年12月10日の記事のタイトルで「ロシアは中東政策を強化する」と見出しを打ちました。
経済と財政の面からは八方塞がりな状況が伝えられるプーチン大統領ですが、その動きをいろいろと追って見ていくと、確かに中東での動きが目立つように思えます。
また、ロシアの南下政策は17世紀から始まりますが、黒海のさらに南の海域である地中海、このあたりにもプーチンのターゲットがあります。もともとロシアの南下政策には地中海が含まれます。
この地中海の沿岸国であり中東の北に位置し、中東と欧州圏を結ぶ位置にあるトルコへ、先月12月にプーチンが行動を起こし、欧州を驚かせています。このことは、日本のニュースではほとんど話題になりませんでした。
2014年12月初旬、ロシアのウラジミール・プーチン大統領がトルコを訪問した。その際、当地で会見し、黒海経由のパイプライン「サウス・ストリーム(SS)」プロジェクトについて突如、計画中止を表明。それに代わり、トルコ向けパイプライン計画の構想をぶち上げた。
ロシア=サウス・ストリーム撤回で混沌とするパイプライン網再編 (1/07-2015 リム情報開発)
2つのパイプラインを示した下記URLの地図を参考にしてもらえれば、プーチンが行った策略の優れた点が理解してもらえると思います(2012年12月の『ロシア・ツゥデイ』から)。
地図とパイプライン:「サウス・ストリーム」と「ブルー・ストリーム」http://rt.com/files/business/news/russia-south-stream-launch-506/i2890c46e006a0865b663c2914fa60c2a_south_stream.jpg
元記事:Gazpromand partners kick off construction of South Stream pipeline
地図とパイプラインを示した上記URLの図を見てください。プーチンはトルコを経由せずに黒海を経由して天然ガスを送るパイプライン「サウス・ストリーム」を中止しました。そして意図的にトルコを経由する「ブルー・ストリーム」へ計画を変更したのです。
このトルコでのパイプラインの中止と変更は、欧州の指導者を驚かせ、シンクタンクの専門家たちが注目しています。その中から米国のブルッキングス研究所のフィオーナ・ヒル氏の書いた記事が、プーチンの狙いと効果を分かりやすく解説していると思うので挙げておきます。
Putin’sTurkish and Indian Gambits (12/12-2014 ブルッキングス研究所)
この記事の中でヒル氏は、プーチンは「サウス・ストリーム」を生贄にしてトルコに大きな「利」を与えたと言っています。それによりNATOには加盟しているが、EUへの加盟はなかなか申請の受け入れがしてもらえないトルコを、ロシアが取り込もうというのです(「サウス・ストリーム」は経営上の問題も抱えていました)。
「トルコは、欧州と中東を結ぶ重要なエネルギーの貿易中継地(ハブ)になりたいという強い願望を持っている」
InTurkey, Russia already has a gas export pipeline in place that can be expanded;and Turkey, itself, has aspirations to become a major energy trading hubbetween Europe and the Middle East.
現在、EUはウクライナ危機を受け、エネルギーのロシア依存からの脱却に向けた模索をしています。2014年5月に発表した脱ロシア依存に向けたエネルギー安全保障戦略では、中長期的にカスピ海沿岸と欧州を結ぶパイプラインの建設を急ぐことにしていました(下記記事参照)。
欧州委がエネルギー安全保障戦略を発表、ロシア依存脱却を加速 (6/02-2014 FBC)
しかし、トルコがロシアに取り込まれれば、黒海はロシアの黒海艦隊が押さえているので、カスピ海沿岸と欧州を結ぶパイプラインを阻止することができます。このことは地図で確認してもらえればと思います。
元記事:TURKEYPUSHES CROSSROADS POLITICS (2013-11/25)