アメリカの金融破綻で今後の世界は多極化ではなく、無極化するという見方があるそうだ。



エコノミストの水野和夫氏が、アメリカの一部の外交専門家の見方として、そうNHKで語っていた。多極化ではなくアナーキー(世界無秩序)になるという事だ。彼は、次期アメリカ大統領は両候補いずれがなっても、任期のほとんどを内政にとられて終わるとの見方を述べている。



今年9月に始まった世界的な金融動乱で、多極化を構成する中国とロシアの株式市場は閉鎖すれすれの状態となっており、欧州ユーロの世界基軸通貨など空論に過ぎないことが証明された。



10月17日のNHKの特番で、アメリカが穀物により世界の食糧体制を支配しているというレポートがあったが、多極化を構成する国家群が総崩れする中で、アメリカは石油と穀物という現物経済を動かし、支配する力を、下降期に入っているといえども持っている。アメリカが中国に対して食糧の輸出規制をかけたら、中国はショートする。



アメリカの経済的・軍事的覇権の衰退により、世界の軍事情勢は「群雄割拠の時代」に入っている。



ブッシュ政権に、イラク戦争を長期化させる操作があったか否かは分らないが、現在のアフガニスタン情勢を見れば、イスラム過激派との「テロ戦争」とは、イラク戦争1つをとっても、膨大なコストと時間がかかる事である事がわかる。

加えて、核兵器保有国と核兵器開発国の軍備拡大で、米ソ冷戦時代のような世界支配としての軍事的覇権は成立し難くなっている。



アメリカの軍事的覇権の衰退が世界に及ぼす影響は、深刻かつ危険なものになるだろう。

中東、アフガニスタン、パキスタン、東アジア、ロシアなどを抑制する力が衰退する影響は、計り知れない。アメリカの軍事的覇権の衰退は、米ソ冷戦終結以降での重大な転換点となる。

現時点で、次期アメリカ大統領は民主党オバマの見通しが強いが、日高義樹氏も著作で述べているように、アメリカ民主党政権下での世界情勢は、極めて危険なものになるだろう。