米国軍需産業の重大な欠陥と脆弱性-国家防衛産業戦略の背景-

第1節 史上初の米国の国家防衛産業戦略

2024年1月11日、米国防総省は史上初となる国家防衛産業戦略(National Defense Industrial Strategy)を公表した。

「ウクライナでの戦争は、現在の米国の防衛産業基盤の深刻な欠陥を露呈した。」(CSISのセス・G・ジョーンズ氏)

米国の軍需産業の縮小によって、ウクライナ戦争でのミサイル・弾薬不足が続いている。
米国の軍需産業は、冷戦終結以降その全体的規模が徐々に縮小している。このため想定される地域戦争において、「米国は大規模な戦争を長期間維持することが困難になっている」(セス・G・ジョーンズ氏)。

今回の史上初となる米国の国家防衛産業戦略は、この深刻な事態に対して、縮小している国家の防衛産業基盤を拡大し再活性化しようとするものだ。 国家防衛産業戦略の公表については日経が取り上げているが、戦略作成の背景までは触れていない。

米国、防衛産業協力へアジア同盟国と新枠組み 中国対処(日経 2024.1.12)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN110FP0R10C24A1000000/

一方で、中国は「米国に対する戦争を抑止し、戦い、勝利するための強固な防衛産業基盤を急速に発展させている」。
これは、CSIS(戦略国際問題研究所)のセス・G・ジョーンズ氏(防衛戦略、軍事作戦が専門)のレポートでの報告だ。

Built in China: Beijing’s Defense Industrial Base and Implications for the United States( 北京の防衛産業基盤と米国への影響 CSIS 2024.1.25)
https://features.csis.org/global-forecast-china-challenge

米国の防衛産業基盤の脆弱性はウクライナ戦争が始まった2022年にはすでに指摘されていたが、この問題を提起したCSISのジョーンズ氏は、2023年1月のレポートでその問題を取り上げていた。
ジョーンズ氏のそのレポートは、公開された2週間前の1月9日に公表されたCSISの台湾戦争のシミュレーション結果での、大苦戦しながらも大半のケースで米軍が中国に勝利するという予測を大きく否定したものとなっている。

The U.S. Defense Industrial Base Is Not Prepared for a Possible Conflict with China(米国の防衛産業基盤は中国との起こりうる戦争への備えができていないー CSIS 2023.1.23 ー) https://features.csis.org/preparing-the-US-industrial-base-to-deter-conflict-with-China/

Empty Bins in a Wartime Environment: The Challenge to the U.S. Defense Industrial Base(ジョーンズ氏レポート全文)
https://www.csis.org/analysis/empty-bins-wartime-environment-challenge-us-defense-industrial-base

冒頭で述べた通り、米国防総省は史上初となる国家防衛産業戦略を公表したが、ジョーンズ氏は前述の2024年の1月のレポートで、米国の防衛産業基盤に「早急の変革がない限り、米国は中国軍への抑止力を弱め、対中戦力が低下する危険性がある」と警告している。

彼は前述のもう一つの2023年1月のレポートで、「ウクライナでの戦争は、今日の長引く紛争が『工業戦争』になる可能性が高いことを警告している」と述べている。

ジョーンズ氏は、防衛産業基盤の変革と再活性化は一朝一夕には行えないと危機感を述べているが、米国の防衛産業基盤が再活性化されるには相当な時間を要する。米国の「緊急を要する変革」が今後早急に進まなければ、アジアにおける軍事力は中国に逆転され、その中国とロシアの軍事協力の拡大と発展により、世界の軍事情勢は激変する可能性がある。

第2節 台湾戦争では米軍の長距離対艦ミサイルが1週間で枯渇する

CSISのジョーンズ氏のレポートから、大規模戦争シナリオでの米軍の大量の軍需品不足を示す一例をあげよう。
台湾戦争で米軍は3週間で5000発以上の長距離ミサイルを使う。その内、中国海軍を攻撃するのに大きな役割を果たす長距離対艦ミサイルを、米軍は開戦直後の1週間で使い果たしてしまう(開戦初期は中国の防衛が激しくなると予想されるため)。

失った長距離対艦ミサイルを製造するのには2年近くかかり、不足分を補充するのにタイムラグが生じる。

そして米国のほか、イギリス、フランスでも軍需品不足の問題に直面している(※ ジョーンズ氏のレポートには、これについての詳細なレポートがリンクされている)。

NATOのストルテンベルグ事務総長は2023年10月の記者会見で、「ウクライナに対するロシアの戦争でNATOの備蓄は尽きた」、軍需品供給の「スピードと量が重要になる」と訴えている(共同通信 2023.10.26)。

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